労働者からの退職の意思表示は口頭で良いですか。
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退職の意思表示は口頭でも有効。書面は法律上の要件ではない 退職の意思表示は、遺言のような要式行為ではなく、本来は口頭でも有効です。会社側が「書面がないから退職は成立していない」と一律に扱うことはできません。 |
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口論の中での発言は、明確な退職意思とは限らない 上司との口論の中で「辞めてやる」などと口にした場合、それが真摯な退職の意思表示だったといえるとは限りません。口頭の申出があった際には、退職届の提出を求め、意思を書面で確認しておくべきです。 |
従業員から「辞めます」と口頭で告げられた場合、会社側としては、その場でどう対応すべきか迷うことがあります。退職の意思表示自体は口頭でも有効ですが、実務上は、それだけで済ませてよいとは限りません。
会社側専門の弁護士の立場から、退職の意思表示の方式と、実務上取るべき対応を解説します。
01退職の意思表示に書面は不要(原則)
本来、退職の意思表示は、口頭でも有効です。遺言のように、法律上、書面の作成など特定の方式を踏まなければ効力が生じない「要式行為」とはされていません。労働者が明確に「退職します」と伝えれば、その時点で退職の意思表示として法的な効力を持ち得ます。
02口論の中での発言が問題になる理由
もっとも、たとえば、労働者が上司と口論になった際に、感情的になって「辞めてやる」などと発言した場合、これがそのまま有効な退職の意思表示になるとは限りません。真摯な退職意思に基づいて意思表示をしたと評価できるかどうかは、発言に至った状況、その後の労働者の言動、発言の具体性などを踏まえて個別に判断されるべきものだからです。
カッとなった勢いで出た発言をそのまま「退職の申出があった」として扱い、後日出社を拒否するなどの対応をとると、後になって「退職の意思表示はなかった」と労働者から主張され、トラブルに発展するおそれがあります。
03退職届を取得しておくべき理由
労働者が口頭で退職を申し出てきた場合には、口頭のやり取りだけで済ませるのではなく、退職届を提出してもらい、退職意思が明確であることを書面に残しておくべきです。退職届の取得は、法律上の要件ではありませんが、次のような実務上の意義があります。
第一に、後日「そんなことは言っていない」「退職するつもりはなかった」といった争いを未然に防ぐことができます。第二に、退職の意思が確定的なものであることを、労働者自身にも自覚してもらう機会になります。第三に、退職日や引継ぎのスケジュールなど、その後の手続を円滑に進めるための出発点にもなります。
04会社側が押さえておくべき視点
会社側としては、口頭での退職の申出を受けた際、その場ですぐに退職手続を進めるのではなく、まず落ち着いた場で、本人の意思をあらためて確認することが望ましい対応です。特に、感情的なやり取りの中で出た発言であれば、なおさら慎重な確認が必要です。
確認の結果、退職の意思が確定的であれば、速やかに退職届を提出してもらい、退職日や有給休暇の取扱い、引継ぎ方法などを書面や記録に残しながら手続を進めます。逆に、確認の結果、退職の意思が撤回された場合には、それまでのやり取りを踏まえて、通常の労務管理に戻すことになります。いずれにしても、口頭でのやり取りをそのまま最終的な結論として扱うのではなく、書面での確認を経る運用を徹底することが、無用なトラブルの予防につながります。
05よくある質問(FAQ)
Q. 従業員が口頭で「辞めます」と言えば、それだけで退職は成立しますか。
退職の意思表示自体は口頭でも有効です。もっとも、その発言が明確な退職意思に基づくものかどうかは、状況によって評価が分かれます。実務上は、口頭の申出があった際にも退職届を取得し、意思を書面で確認しておくことが望ましいといえます。
Q. 口論の中で従業員が「辞めてやる」と言った場合、それを退職として扱ってよいですか。
慎重な対応が必要です。感情的なやり取りの中での発言は、明確な退職意思に基づく意思表示とは言えない場合があります。すぐに退職として処理せず、落ち着いた場で本人の意思をあらためて確認すべきです。
Q. 退職届を取得することに、どのような意味がありますか。
退職の意思が明確であったことを書面で残し、後日の争いを防ぐ意味があります。また、退職の意思が確定的であることを本人に自覚してもらう機会にもなり、退職日や引継ぎ手続を円滑に進める出発点にもなります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。従業員の退職対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日