残業代(割増賃金)の支払の対象となる労働時間とはどのような時間ですか?
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残業代の対象は、法定時間外労働・法定休日労働・深夜労働の3区分 使用者は、労働者を法定時間外労働、法定休日労働、深夜労働に従事させた場合には、残業代(割増賃金)を支払わなければなりません(労基法37条)。従業員から残業代を請求された際は、この3区分に沿って対象時間を精査する必要があります。 |
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法定内残業や法定外休日労働は、時間外労働の対象時間と混同しやすい 所定労働時間が8時間未満の会社での法定内残業や、週休2日制での法定外休日の労働は、それ自体では割増の対象になりません。この違いを正確に理解しておくことが、残業代トラブルの予防と適切な対応の出発点です。 |
目次
従業員から残業代を請求された場合、会社側がまず確認すべきは、請求されている時間が、そもそも法律上、割増賃金の支払対象となる時間に当たるかどうかです。労働時間には複数の区分があり、区分によって割増の要否や割増率が異なります。
会社側専門の弁護士の立場から、残業代の対象となる労働時間の考え方を解説します。
01残業代の支払対象(労基法37条)
使用者は、労働者を法定時間外労働時間、法定休日労働時間、深夜労働時間に従事させた場合には、残業代(割増賃金)を支払わなければなりません(労基法37条)。この3つの区分は、それぞれ独立した考え方に基づいており、重複することもあれば、いずれにも該当しないケースもあります。以下、順に解説します。
02法定時間外労働時間
1日8時間または1週40時間(映画制作事業を除く映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で常時10人未満の労働者を使用する場合は1週44時間)を超える時間外労働は、残業代の支払対象となります。
法定時間外労働が適法となるのは、災害等による臨時の必要性がある場合と、時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)を締結し、行政官庁に届け出た場合に限られます。もっとも、これによらずに違法に法定時間外労働をさせた場合であっても、残業代の支払義務そのものは生じます。適法性の有無と、割増賃金の支払義務の有無は別問題である点に注意が必要です。
03法定時間内労働時間(法定内残業)
所定労働時間が1日8時間未満の会社において、その所定労働時間を超えて1日8時間までの時間における労働は、法定時間外労働ではないため、1週40時間を超えない限り、割増賃金の支払対象とはなりません(いわゆる法定内残業)。
所定労働時間とは、所定の始業時刻から終業時刻までの所定就業時間から休憩時間を差し引いた時間をいい、法定労働時間の範囲内で定めなければなりません。法定内残業に従事させた場合、就業規則または個別の労働契約により支払額が定められていればその額を、定めがなければ、通常の労働時間の1時間当たりの賃金を支払う必要があります。割増率を上乗せする義務までは生じない点が、法定時間外労働との違いです。
04法定休日労働時間
1週1日または4週4日の法定休日における労働は、残業代の支払対象となります。
法定休日を事前に別の日へ振り替えた場合、振替前は法定休日であった日の労働は、法定休日労働ではなくなるため、割増賃金の支払義務は生じません。これに対し、事後に振り替える「代休」の場合は、法定休日に労働させたこと自体は変わらないため、割増賃金の支払義務が生じます。振替休日と代休は混同されやすいため、区別して理解しておく必要があります。
なお、週休2日制などで週に2日以上の休日がある場合、そのうち1日が法定休日、それ以外は法定外休日となります。法定外休日の労働は、法定休日労働とは異なり割増賃金の支払義務は生じませんが、1日8時間または1週40時間を超える法定時間外労働に該当する場合には、その部分について割増賃金を支払う必要があります。
05深夜労働時間
午後10時から午前5時までの深夜の労働時間は、残業代の支払対象となります。深夜労働は、法定時間外労働や法定休日労働とは独立した区分であり、それらと重複して発生することがあります。たとえば、深夜に及ぶ法定時間外労働については、時間外労働の割増と深夜労働の割増をあわせて支払う必要があります。
06会社側が押さえておくべき視点
残業代を請求された会社側にとって重要なのは、請求されている時間が、法定時間外労働・法定休日労働・深夜労働のいずれに当たるのか、あるいはいずれにも当たらない法定内残業や法定外休日労働にとどまるのかを、正確に切り分けることです。この切り分けを誤ると、本来支払う必要のない部分まで支払ってしまったり、逆に支払うべき部分を見落としたりするリスクがあります。
特に、振替休日と代休の違い、所定労働時間と法定労働時間の違いは、実務上見落とされやすいポイントです。就業規則の規定内容と、実際の勤怠記録を突き合わせながら、請求内容を精査することが重要です。
07よくある質問(FAQ)
Q. 所定労働時間が7時間の会社で、8時間目まで働かせた場合、割増賃金は必要ですか。
法定内残業に当たるため、割増賃金の支払義務はありません。ただし、通常の労働時間の1時間当たりの賃金(就業規則等に定めがあればその額)の支払いは必要です。
Q. 法定外休日に働かせた場合、割増賃金は必要ですか。
法定外休日労働自体には割増賃金の支払義務はありません。ただし、その労働により1日8時間または1週40時間を超えた部分は、法定時間外労働として割増賃金の対象になります。
Q. 36協定を締結していない場合、時間外労働をさせても残業代を払わなくてよいですか。
払う必要があります。36協定の締結・届出は時間外労働を適法に行うための要件ですが、これによらずに違法に時間外労働をさせた場合でも、割増賃金の支払義務自体は生じます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。従業員から残業代を請求されてお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日