この記事の結論
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軽微な懲戒処分は出向先の職場秩序維持権限の範囲内で可能

出向先は、就業管理や職場秩序維持に関する権限を有するのが一般的であり(763の記事参照)、この範囲で、戒告や譴責といった軽微な懲戒処分を行うことは可能と考えられます。

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懲戒解雇は雇用契約の当事者でない出向先にはできない

懲戒解雇は雇用契約の終了を伴うため、雇用契約の当事者である出向元でなければ行うことができません。出向先は、重大事案については、出向契約を解除して出向元に処分を委ねる対応をとります。

 出向社員が出向先で問題行動を起こした場合、出向先の企業秩序を守る観点から、何らかの処分を検討したいと考える会社は少なくありません。もっとも、出向社員に対する処分権限には、法的な限界があります。

 会社側専門の弁護士の立場から、出向先が出向社員に対して行える懲戒処分の範囲を解説します。

01出向とは何か(労働契約関係の基本構造)

 出向は、労働者が出向元に在籍したまま、出向先の指揮命令のもとで労務を提供する仕組みであり、二重の労働契約関係が生じます(763の記事参照)。労働者と雇用契約を締結しているのは出向元であり、出向先はあくまで、その労務提供を受け入れる立場にあります。

02出向先の就業規則と服務規律の適用関係

 出向社員は、日常の業務遂行にあたっては、出向先の指揮命令に従います。そのため、出向先の就業規則における服務規律や職場秩序に関する定めは、出向社員にも及ぶと解されています。出向契約や出向規程において、出向先の就業規則の適用範囲があらかじめ明確にされているのが一般的です。

03出向先による懲戒処分は可能か

 通常の出向では、労働時間等の就業管理および職場秩序維持に関する権限は出向先が有するのが一般的です(763の記事参照)。この権限の範囲内で、出向先が、出向社員に対して戒告や譴責、あるいは軽度の減給といった、比較的軽微な懲戒処分を行うことは可能と考えられます。出向社員が出向先の職場規律に違反した場合、出向先の企業秩序を守るために、一定の是正措置をとる必要があるためです。

04出向先ができない処分(懲戒解雇の限界)

 もっとも、懲戒解雇は、雇用契約そのものを終了させる処分です。出向先は労働者と雇用契約を締結していないため、出向先が直接、出向社員を懲戒解雇することは法律上できません(769の記事参照)。この点は、懲戒処分の中でも特に重い処分であるだけに、権限の所在を誤らないよう注意が必要です。

05解雇相当事案が発生した場合の実務対応

 出向社員が、出向元の就業規則上の懲戒解雇事由に該当するような重大な問題行動をとった場合、出向先としては、出向契約を解除して当該社員を出向元へ復帰させ、出向元において処分を検討させるという対応が、実務上の基本的な流れになります。出向先が独自の判断で懲戒解雇に相当する処分を行うことはできないため、この手順を踏むことが必要です。

06会社側が押さえておくべき視点

 出向社員の懲戒処分をめぐるトラブルを防ぐには、問題が起きてから対応を検討するのではなく、事前の備えが重要です。出向契約書の中で、出向先が行い得る懲戒処分の範囲(戒告・譴責等の軽微な処分に限る旨)、重大な問題行動が発覚した場合の出向元への報告義務、出向契約解除の手続を、あらかじめ明確に定めておくことが不可欠です。

 これらの取り決めが曖昧なまま出向社員を受け入れると、いざ問題が発生した際に、出向先・出向元のどちらが対応すべきかで混乱が生じ、対応の遅れが被害の拡大を招くおそれがあります。出向契約の締結時点で、懲戒に関する権限分配を具体的に整理しておくことをお勧めします。

07よくある質問(FAQ)

Q. 出向先は、出向社員に戒告処分を行えますか。

行えると考えられます。出向先は、通常、労働時間等の就業管理や職場秩序維持に関する権限を有しており、その範囲で戒告等の軽微な懲戒処分を行うことは可能です。

Q. 出向先は、出向社員を懲戒解雇できますか。

できません。懲戒解雇は雇用契約の終了を伴う処分であり、雇用契約の当事者は出向元であるため、出向先には権限がありません。

Q. 懲戒解雇に相当する重大な問題が起きた場合、出向先はどう対応すべきですか。

出向契約を解除して当該社員を出向元に復帰させ、出向元において処分を検討させる対応が基本です。事前に出向契約で報告義務や解除手続を明確にしておくことが重要です。

経営上のポイント 出向先は、労働時間等の就業管理や職場秩序維持に関する権限を有するのが一般的であり、この範囲で、戒告や譴責といった軽微な懲戒処分を行うことは可能と考えられます。もっとも、懲戒解雇は雇用契約の終了を伴う処分であり、雇用契約の当事者は出向元であるため、出向先が直接行うことはできません。出向社員が懲戒解雇事由に該当するような重大な問題行動をとった場合、出向先は出向契約を解除して当該社員を出向元に復帰させ、出向元に処分を委ねるという対応が実務の基本です。こうした対応を円滑に行うため、出向契約の中で、出向先が行い得る懲戒処分の範囲、重大な問題発覚時の報告義務、出向契約解除の手続をあらかじめ明確に定めておくことが重要です。出向契約の整備は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。出向社員の懲戒処分でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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