労働問題8 解雇予告除外認定とは何か?会社経営者が知るべき即時解雇の要件と罰則リスク

1. 解雇予告除外認定の法的根拠

 解雇予告除外認定とは、一定の場合に解雇予告や解雇予告手当の支払を不要とする制度です。その法的根拠は、労働基準法第20条第1項ただし書にあります。

 同条は、原則として30日前の予告または30日分以上の平均賃金の支払を義務付けています。しかし例外として、「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合」または「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」には、この予告義務が適用されないと定めています。

 もっとも、条文上は「労働基準監督署長の認定を受けたとき」に限るとされており、会社が一方的に「これは例外に当たる」と判断するだけでは足りません。行政庁による客観的な確認を経ることが予定されています。

 この制度は、即時解雇を広く認めるためのものではなく、あくまで例外的・限定的な場面を想定したものです。通常の経営上の理由や単なる業績不振では足りず、法律の要件に厳密に該当する必要があります。

 会社経営者として重要なのは、解雇予告除外認定は「懲戒解雇の延長線上の制度」ではないという点です。法定要件に厳格に該当する場合にのみ適用される例外制度であり、安易な利用は重大な法的リスクを招きます。

 まずは、この制度が原則を修正する“特例”であるという位置付けを正確に理解することが、実務判断の出発点となります。

2. どのような場合に除外が認められるのか

 解雇予告除外認定が問題となるのは、条文上、①「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合」と、②「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」の二類型です。

 まず前者は、単なる経営不振や資金繰り悪化といった通常の経営リスクでは足りません。地震や火災などの天災、あるいはそれに準ずる不可抗力的事情によって、客観的に事業継続が不可能となった場合が想定されています。「困難」ではなく、継続が不可能であることが求められる点が重要です。

 次に後者の「労働者の責に帰すべき事由」とは、労働者の重大な非違行為など、労働契約の継続を直ちに断つことが相当といえる程度の事情を指します。単なる勤務態度不良や能力不足といった事情では、通常は足りません。社会通念上、即時に契約関係を終了させることがやむを得ないと評価できるかが判断基準となります。

 会社経営者にとって注意すべきなのは、「懲戒解雇に該当する=自動的に除外認定が認められる」わけではないという点です。除外認定は、予告制度の例外を認める制度であり、通常の懲戒処分よりも厳格に判断される傾向があります。

 したがって、問題社員への対応として即時排除が妥当と思われる場合でも、それが直ちに解雇予告除外認定の対象になるとは限りません。法律が予定する例外的場面に該当するかどうかを、冷静に切り分けて検討する必要があります。

3. 解雇予告除外認定の手続の流れ

 解雇予告除外認定を受けるには、会社が所轄の労働基準監督署長に対して申請を行う必要があります。法的根拠は労働基準法第20条第1項ただし書です。

 手続としては、まず解雇理由となる事実関係を整理し、客観的資料を添えて申請書を提出します。とりわけ「労働者の責に帰すべき事由」に基づく場合には、就業規則、懲戒規定、問題行為の証拠資料などを具体的に示すことが求められます。

 監督署は、提出資料や事情聴取を通じて、条文の要件に該当するかを判断します。そのうえで、除外認定をするか否かの決定がなされます。認定が下りれば、解雇予告や解雇予告手当の支払なしに即時解雇を行うことが可能になります。

 もっとも、実務上は「まず解雇してから申請する」という運用が問題になることがあります。この点については後述しますが、手続と解雇のタイミングを誤ると、罰則適用や効力発生日の争いを招く可能性があります。

 会社経営者としては、除外認定は単なる形式手続ではなく、例外適用を裏付ける行政判断を取得するプロセスであると理解すべきです。証拠の不備や事実整理の甘さは、そのまま認定拒否や後日の紛争リスクにつながります。

 即時解雇という強い措置を正当化するための手続である以上、感覚的判断ではなく、事実と証拠に基づく準備が不可欠です。

4. 認定は解雇の効力発生要件なのか

 ここで会社経営者が誤解しやすいのが、解雇予告除外認定は解雇の効力発生要件なのかという点です。

 結論から申し上げますと、除外認定それ自体は、民事上の解雇の効力発生要件ではありません。すなわち、認定申請や認定決定の有無にかかわらず、実体的に労働基準法第20条第1項ただし書の要件、すなわち「天災事変その他やむを得ない事由」または「労働者の責に帰すべき事由」に該当する場合には、解雇予告手当を支払わない即時解雇も有効となり得ます。

 つまり、法的には「実体要件該当性」が本質であり、認定はそれを行政的に確認する手続と位置付けられます。

 もっとも、ここで重要なのは、認定を受けていないまま即時解雇を行った場合の行政上のリスクです。たとえ実体的に要件に該当していたとしても、除外認定の申請をせずに予告も手当支払も行わなかった場合、同法違反として罰則の対象となり得ます(同法119条1号)。

 したがって、民事上は有効となる可能性がある一方で、行政上の責任を免れないという構造になります。この二重構造を理解していないと、「要件に該当しているから問題ない」と安易に判断してしまう危険があります。

 会社経営者としては、効力の問題と罰則の問題は別であるという視点を持つことが不可欠です。除外認定は単なる形式ではなく、行政リスクを回避するための重要な手続であると認識すべきです。

5. 認定を受けずに即時解雇した場合のリスク

 実体的に「労働者の責に帰すべき事由」があると判断し、解雇予告も解雇予告手当の支払もせずに即時解雇を行ったものの、解雇予告除外認定の申請をしていなかった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。

 前述のとおり、民事上は、実体的に労働基準法第20条第1項ただし書の要件に該当すれば、即時解雇が有効と判断される可能性はあります。しかし、行政法上は別問題です。

 同法119条1号は、第20条違反に対して罰則を定めています。したがって、除外認定を受けることなく予告も手当支払も行わなかった場合、労働基準法違反として刑事罰の対象となり得ます。

 ここで会社経営者が注意すべきなのは、「実体的に正しい」ことと「手続的に適法である」ことは別であるという点です。仮に裁判で解雇が有効と判断されたとしても、除外認定を経ていなければ、労働基準監督署からの是正指導や送検リスクを否定できません。

 さらに、監督署対応が生じれば、企業の信用問題にも直結します。行政調査への対応、是正報告書の提出、場合によっては公表リスクなど、経営への影響は小さくありません。

 即時解雇という強い措置を選択する場合こそ、手続を省略してはなりません。会社経営者としては、実体要件の検討と同時に、除外認定の申請を行うことが原則であると理解すべきです。行政リスクまで見据えた判断が、最終的な経営防衛につながります。

6. 認定を受けたのに無効と判断されるケース

 解雇予告除外認定を受けていれば、即時解雇は絶対に有効なのでしょうか。結論から申し上げれば、必ずしもそうではありません

 除外認定は、あくまで行政庁である労働基準監督署長による判断です。しかし、最終的に解雇の有効性を判断するのは裁判所です。訴訟において、「天災事変その他やむを得ない事由」や「労働者の責に帰すべき事由」に該当しないと判断されれば、即時解雇の効力は否定される可能性があります。

 この場合、重要なのは法的効果の整理です。認定を受けていた以上、労働基準法違反としての罰則適用は問題とならないのが通常です。しかし、民事上は、解雇予告手当の支払を欠く即時解雇として、その効力が否定される余地があります。

 つまり、「行政上は適法でも、民事上は無効」という構造が生じ得ます。会社経営者としては、この二層構造を理解しておく必要があります。

 特に、「労働者の責に帰すべき事由」の判断は、裁判所において厳格に審査されます。監督署の認定を得たからといって、直ちに裁判所の判断が拘束されるわけではありません。

 除外認定は強力な材料ではありますが、最終的なリスクを完全に遮断する“免罪符”ではないという点を認識すべきです。会社経営者としては、認定取得だけに安心せず、解雇理由の実体的妥当性を十分に検証する姿勢が不可欠です。

7. 「労働者の責に帰すべき事由」の判断基準

 解雇予告除外認定の実務で最も問題となるのが、「労働者の責に帰すべき事由」に該当するかどうかの判断です。この要件は、単なる規律違反や能力不足では足りません。

 法的には、労働契約を即時に終了させてもやむを得ない程度の重大な帰責性が求められます。横領や重大な背信行為、企業秩序を著しく破壊する行為などが典型例とされますが、個別具体的事情により厳格に判断されます。

 ここで注意すべきは、「懲戒解雇相当」と評価できる場合であっても、当然に解雇予告除外認定の対象になるとは限らないという点です。除外認定は、解雇予告制度という法定保護を排除する特例である以上、通常の懲戒処分よりも一段高いハードルが課されると理解すべきです。

 また、会社側の調査が不十分であったり、事実認定が曖昧であったりすると、後の訴訟で「帰責性が重大とはいえない」と判断される可能性があります。その場合、即時解雇の効力が否定されるリスクが生じます。

 この要件の根拠は、労働基準法第20条第1項ただし書です。条文は抽象的ですが、裁判実務では極めて慎重に適用されています。

 会社経営者としては、感覚的な「許せない」という評価と、法的に即時解雇が許容される水準とを明確に区別しなければなりません。帰責性の重大性を客観的証拠で裏付けられるかどうかが、最終的なリスクを左右します。

8. 経営上の危機と「やむを得ない事由」の違い

 「業績が悪化している」「資金繰りが厳しい」「取引先が撤退した」――このような事情が生じた場合、会社経営者としては即時に人員整理を行いたいと考える場面もあるでしょう。しかし、これらは直ちに解雇予告除外認定の対象となる「やむを得ない事由」には該当しません。

 労働基準法第20条第1項ただし書が想定しているのは、「天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合」です。ここで求められているのは、「困難」ではなく客観的に継続が不可能な状態です。

 通常の経営判断の失敗や市場環境の変動は、企業活動に内在するリスクであり、法律が予定する不可抗力とは評価されません。たとえ大幅な赤字であっても、事業再建や縮小継続の余地がある限り、「不可能」とは認められにくいのが実務の傾向です。

 この点を誤解し、「経営が厳しいから除外認定で即時解雇できる」と判断することは極めて危険です。認定が下りない可能性が高いだけでなく、仮に解雇を強行すれば、予告義務違反や解雇無効の争いへと発展します。

 会社経営者としては、経営上の危機対応と、解雇予告制度の例外適用とを明確に区別すべきです。経営上の必要性は、原則として予告制度の枠内で処理すべき問題であり、除外認定は真に例外的な事態に限定されるという認識が不可欠です。

9. 会社経営者がとるべき実務対応

 解雇予告除外認定は、即時解雇を可能にする強力な制度ですが、同時に高いリスクを伴います。会社経営者としては、「使える制度かどうか」ではなく、本当に要件に該当するかどうかから出発すべきです。

 まず、事実関係の徹底的な整理が不可欠です。とりわけ「労働者の責に帰すべき事由」に基づく場合には、就業規則の規定内容、過去の処分歴、問題行為の具体的証拠などを客観的資料として整備しておく必要があります。感覚的評価や口頭報告だけでは足りません。

 次に、即時解雇以外の選択肢を検討する視点も重要です。予告期間を置く、解雇予告手当を支払うなど、通常の手続で処理できるのであれば、その方が紛争リスクは小さくなります。除外認定は例外制度である以上、安易な選択は避けるべきです。

 さらに、行政リスクと民事リスクを分けて考える必要があります。労働基準法第20条ただし書の実体要件を満たすかどうかは、最終的には裁判所が判断します。監督署の認定があっても、解雇無効と判断される可能性は残ります。

 会社経営者に求められるのは、即断即決ではなく、証拠・法的要件・紛争発展可能性を総合的に評価したうえでの戦略的判断です。除外認定は強力な手段ですが、その分、誤った判断をすれば反動も大きい制度であることを忘れてはなりません。

10. まとめ:除外認定をめぐる最終判断の視点

 解雇予告除外認定は、労働基準法第20条第1項ただし書に基づく例外制度です。実体的に「やむを得ない事由」や「労働者の責に帰すべき事由」に該当すれば、予告や解雇予告手当なしの即時解雇が有効となり得ます。

 もっとも、認定は民事上の効力発生要件ではない一方、申請を怠れば罰則の対象となる可能性があります。また、認定を受けていても、訴訟で実体要件に該当しないと判断されれば、即時解雇の効力は否定されます。

 会社経営者にとって重要なのは、「例外制度である」という原点を忘れないことです。経営上の都合や感情的判断で安易に利用する制度ではありません。

 重大な問題社員への対応や、事業継続が困難な事態に直面した際には、実体要件・手続要件・紛争リスクを総合的に検討する必要があります。解雇という経営判断を安全かつ戦略的に実行するためにも、事前の法的検証を経たうえで対応されることを強くお勧めいたします。

 当事務所では、会社経営者の立場から、除外認定の可否判断、申請書作成支援、証拠整理、紛争予防策の構築まで一貫してサポートしております。問題が深刻化する前の段階でのご相談が、最大のリスク回避につながります。

 

参考動画

 

更新日2026/2/23

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