労働問題98 解雇した社員が合同労組に加入した場合の団体交渉義務とは?会社経営者が知るべき労組法7条の対応実務

この記事の結論
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解雇の有効性・退職条件が争点なら、元社員も「雇用する労働者」に含まれ団体交渉義務が生じ得る

解雇が無効であれば法律上は労働契約が継続していたことになるため、解雇の効力が未確定な段階では、元社員も労組法7条2号の「雇用する労働者」に含まれると広く解釈されます。

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「解雇済みだから無関係」「外部団体だから応じない」は不当労働行為のリスク

正当な理由なく団体交渉を拒否すると、労働委員会への不当労働行為救済申立て・応諾命令・文書交付命令(ポストノーティス)・企業名公表というリスクが生じます。弁護士と連携した戦略的な対応が必要です。

01解雇後に合同労組から団体交渉を申し入れられるケース

 近年、会社が解雇を行った直後に、その社員が合同労組(いわゆるユニオン)に加入し、合同労組名義で団体交渉の申入れがなされる事例が増えています。特に、解雇の有効性に争いがあるケースや、退職条件(解決金・未払賃金・有給休暇の精算など)をめぐって対立があるケースで、典型的に見られます。

 会社経営者としては、「もう雇用関係は終わっている」「社外の労働組合であり、うちとは無関係だ」と感じられるかもしれません。その気持ちはよく分かりますが、法的にはこの直感的な判断は危険です。労働組合法上、解雇の効力や退職条件が争点となっている限り、その社員はなお団体交渉の対象となる「雇用する労働者」に含まれると解される可能性があるからです。

02解雇した社員は「雇用する労働者」に含まれるか

 団体交渉義務の有無を判断するうえで最も重要な論点が、解雇した社員が労働組合法7条2号にいう「雇用する労働者」に該当するかどうかです。判例および労働委員会の実務では、この文言は、在籍しているかどうかという形式だけで判断されるものではないと解されています。

 特に、解雇の有効性そのものや、解決金、未払賃金、退職条件などが争点となっている場合には、その元社員も「雇用する労働者」に含まれると広く解釈されます。なぜなら、解雇が無効であれば、法律上は労働契約が継続していたことになるからです。解雇の効力が未確定な段階では、労働契約関係がなお法的に争われている状態にある、と評価されます。

 ですから、解雇問題を議題とする団体交渉の申入れがあった場合、「すでに雇用関係は終了している」という理由だけで拒否することは、団交拒否の不当労働行為と判断されるリスクを伴います。「もう終わった話だ」という会社側の感覚と、法律上の評価との間には、ズレがあるのです。

団体交渉を拒否した場合のリスク(労組法7条2号)

労働組合法7条2号は、使用者が「雇用する労働者の代表者」との団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁止しています。これを拒否すると、労働組合は労働委員会に対して不当労働行為救済申立てを行うことができます。団交拒否と認定されれば、①団体交渉の応諾命令、②文書交付命令(いわゆるポストノーティス)、③企業名公表による信用低下、といった影響が現実のものになります。解雇の有効性を争う訴訟とは別に、不当労働行為という新たな法的リスクが積み重なる点が、経営上の重大な問題です。

03合同労組(ユニオン)と、拒否できる「正当な理由」

合同労組(ユニオン)とは

 合同労組とは、特定の企業内に組織される労働組合とは異なり、企業の枠を超えて個人で加入できる、地域型・業種横断型の労働組合をいいます。自社内に労働組合が存在しない場合であっても、社員は外部の合同労組に加入することができます。

 労働組合法上は、外部の合同労組であっても、その社員が加入している以上、適法な労働組合として団体交渉権を行使できるとされています。特に解雇案件では、個人では交渉力に限界があるため、合同労組を通じて会社に働きかけるという手法が一般的になっています。会社経営者としては、合同労組を「特殊な存在」と捉えるのではなく、法的に正当な交渉主体であることを前提に、冷静かつ戦略的に対応する姿勢が重要です。

拒否できる「正当な理由」とは

 労働組合法上、会社は団体交渉を正当な理由なく拒否することはできません。ここでいう「正当な理由」は、極めて限定的に解釈されています。「すでに解雇している」「話し合うつもりはない」「弁護士に任せている」といった事情は、原則として正当な理由にはなりません。

 交渉事項が明らかに会社と無関係である場合や、団体交渉の名を借りて違法・不当な要求がなされている場合など、団体交渉制度の趣旨を逸脱していると評価できる特段の事情がある場合に限り、拒否が許容される余地があります。しかし、解雇の有効性や退職条件といった典型的な労働条件が議題である限り、拒否が適法と判断される可能性はほとんどありません。

よくある会社経営者の危険な対応

 「解雇した社員だから、ユニオンから申入れがあっても無視すればいい」→ 最も危険な対応です。無視・拒否は不当労働行為(労組法7条2号違反)となるリスクがあります。労働委員会への申立て・応諾命令・企業名公表という事態につながりかねません。

 「外部のユニオンとは無関係だから、応じる必要はない」→ 誤りです。外部の合同労組であっても、労働組合法上は適法な団体交渉権を有します。「外部団体だから」という理由は、正当な拒否理由になりません。

04会社経営者が取るべき戦略的対応

 合同労組から団体交渉の申入れを受けたら、まず早急に会社側専門の弁護士に相談することが最善策です。感情的・対抗的な対応(無視、拒否、社員本人への個別接触等)は、状況を悪化させるだけで得るものがありません。

 弁護士と連携することで、①団体交渉義務の有無の確認、②交渉事項の確認と対応可否の判断、③団体交渉の場での会社側の主張整理、④解雇の有効性と団体交渉の関係の整理、⑤労働委員会対応・訴訟リスクへの備え、といった対応が可能になります。

 解雇紛争が合同労組を通じた団体交渉に発展した場合、解雇の有効性・退職条件・不当労働行為という複数の戦線での対応が同時に必要になります。早期に弁護士に相談し、一貫した方針のもとで対応することが、経営リスクを最小限に抑えることにつながります。

経営上のポイント 解雇した社員が合同労組に加入して団体交渉を申し入れてきた場合、解雇の有効性・退職条件が争点となっている限り、原則として団体交渉に応じる義務があります(労組法7条2号)。「解雇済みだから無関係」「外部団体だから応じない」という形式的な対応は不当労働行為と評価され、労働委員会への申立て・応諾命令・企業名公表というリスクを招きます。拒否できる「正当な理由」は極めて限定的です。合同労組からの申入れを受けたら、無視や感情的な対応は避け、団体交渉対応の実務に沿って、早急に会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月1日

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