労働問題96 管理職としての能力が低い社員を解雇する場合の注意点を教えて下さい。

この記事の要点

管理職能力不足は、まず降格・管理職外しで対応するのが原則です。地位特定採用者は退職勧奨・解雇も検討可能ですが、採用時の労働契約書への明示と当時の客観的証拠が不可欠です。

管理職不適格を理由とした解雇には「裁判官が証拠で判断できる具体的事実」が必要です。抽象的な評価や関係者の証言だけでは立証が困難です。日常的な記録整備が解雇の有効性を支えます。

原則:いきなり解雇せず降格・管理職外しで対応

管理職能力が低い場合でも、まず能力に見合ったレベルへの降格または管理職外しで対応することが原則です。


例外:地位特定採用者は退職勧奨・解雇も検討可能

地位を特定して高給採用された社員が当該地位に求められる能力を欠く場合は、退職勧奨・解雇を検討できます。ただし労働契約書への明示が前提です。


共通:管理職不適格を示す具体的事実の客観的証拠が不可欠

いつ・どのような管理職不適格の事実があったかを当時の書面等で証明できることが、解雇の有効性を支えます。

1. 管理職能力不足への対応——原則は降格・管理職外し

いきなり退職勧奨・解雇はしない

 管理職としての能力が低いことが原因で部下を管理できない場合であっても直ちに退職勧奨したり解雇したりせず、当該社員の能力でも対応できるレベルの管理職に降格させるか、管理職から外して対応するのが原則です。

 能力不足を理由とする解雇の有効性は一般的に厳格に判断される傾向にあり、降格・職種変更等の代替手段を検討したことが解雇の相当性を支える要素となります。降格や管理職外しの対応を経た上でもなお業務に支障が生じている場合に、退職勧奨・解雇を検討することになります。

2. 例外:地位特定採用者は退職勧奨・解雇を検討できる

地位を特定して高給採用された場合は別扱い

 地位を特定して高給で採用された社員に労働契約で予定された能力がなかった場合には、降格ではなく退職勧奨や解雇を検討することになります。これは、地位を特定して採用したということは、その地位に求められる能力を前提に雇用契約を締結したことになるため、その能力が欠如している場合は労働契約で求められる能力が欠如していると評価されやすくなるからです。

採用時の労働契約書への明示が前提

 地位特定者を解雇するにあたっては、地位を特定して採用された事実を主張立証する必要がありますので、労働契約書等の書面に明示しておくべきです。書面に明示されていないと、当該地位を特定して採用された事実の主張立証が困難となることがあります。採用時に「○○部長として採用」「○○マネージャーとして採用」等と労働契約書に明記しておくことが重要です。

✕ よくある経営者の誤解

「管理職なのに能力が低いのだから、すぐに解雇できる」→ 原則として誤りです。
管理職能力不足でも、まず降格・管理職外しの対応が必要です。いきなり解雇すると、代替手段を尽くしていないとして相当性が否定されるリスクがあります。

「彼が管理職として不適格なことは周りの社員も取引先もみんな知っている——証拠は十分だ」→ 不十分です。
関係者の証言だけでは証拠価値が低く、解雇の有効性を立証することに困難を伴います。当時の書面・記録等の客観的証拠が必要です。

3. 管理職不適格解雇の証拠整備

具体的事実を当時の証拠で示す

 管理職として不適格であることを理由とした解雇が有効と判断されるようにするためには、何月何日に管理職として不適格であることを示す事実があったのかを、当該事実があった当時の証拠により説明できるようにしておく必要があります。

 抽象的に「管理職として不適格である」と言ってみてもあまり意味はありませんし、「彼が管理職として不適格であることは、周りの社員も、取引先もみんな知っている」というだけでは足りません。会社関係者の陳述書や法廷での証言は証拠価値があまり高くないため、紛争が表面化する前の書面等の客観的証拠がないと、主張立証に困難を伴うことが多くなります。

 具体的には、①部下への指示内容とその結果を記録した書面、②部下から上がってきた問題報告と管理職の対応の記録、③業績評価書・MBO(目標管理)の記録、④管理職としての問題点を指摘した面談記録・注意指導書等を日常的に整備しておくことが重要です。

 管理職能力不足社員への対応方針・降格の進め方・解雇の有効性評価について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

4. まとめ

 管理職としての能力が低い社員への対応は、まず能力に見合った管理職への降格または管理職外しで対応するのが原則です。地位を特定して高給で採用された社員が当該地位に求められる能力を欠く場合は、退職勧奨・解雇を検討できますが、採用時の労働契約書への地位・職種の明示が前提となります。解雇の有効性を支えるためには、何月何日に管理職不適格を示すどのような事実があったかを当時の客観的証拠(面談記録・業績評価書・注意指導書等)で説明できるよう、日常的な記録整備が不可欠です。管理職能力不足への対応については早めに弁護士に相談することをお勧めします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/05

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