労働問題250 「自由参加」の社内研修や勉強会の時間は、労基法上の労働時間に該当しないですよね。
|
✓
|
純然たる自由参加で不利益もなく業務への具体的支障もない場合、研修時間は労働時間に該当しない 参加しなくても何の不利益も課されず、業務に具体的な支障が生じないのであれば、労基法上の労働時間には該当しません |
|
✓
|
「自由参加」と言いながら不参加で不利益がある場合は、参加を余儀なくされたと評価され労働時間に該当する 賃金・人事考課等での不利益がある場合や、参加しないと業務遂行に具体的な支障が生じる場合が該当します |
|
✓
|
「自由参加」という言葉が使われているかどうかではなく、実態として参加を強制されているかどうかが判断基準 名目と実態が乖離している場合は、実態に即した法的評価が行われます |
|
✓
|
研修ごとに「不参加への対応」「業務との関連性」を整理し、労働時間性を事前に確認することが重要 曖昧なまま放置すると後の残業代請求トラブルの温床になります |
目次
01「自由参加」と労働時間性の基本的な考え方
「自由参加」と案内されている社内研修や勉強会の時間が、労基法上の労働時間に該当するかどうかは、その言葉の名目ではなく実態によって判断されます。研修等が労働時間に該当するかどうかの判断基準は、「実質的にみて出席の強制があるか否か」にあります(厚生労働省労働基準局編集『平成22年版 労働基準法 上』)。
この判断においては、①就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無(248番参照)、②教育・研修の内容と業務との関連性が強く、不参加により本人の業務に具体的な支障が生じるか否か(249番参照)——の2つの観点が重要な判断要素となります。「自由参加」という言葉が使われているかどうかはこの判断において決定的ではありません。
02労働時間に該当しない場合——純然たる自由参加のケース
純然たる自由参加で、社員が参加しなくても何の不利益も課されず、業務に具体的な支障が生じないような場合は、研修等に要した時間は労働時間には該当しません。このような場合は、研修への参加を選ぶかどうかが社員の真の自由意思に委ねられているといえます。
業務とは直接関係のない自己啓発セミナー(参加も不参加も評価に影響しない)、社内の任意参加の読書会や勉強会(欠席しても何の不利益も生じない)、業務上必須でない語学講座(不参加で業務遂行に格段の支障が生じない)——これらが純然たる自由参加として扱われる典型例です。
03労働時間に該当する場合——「自由参加」でも実質的強制があるケース
「自由参加」と言いながら、参加しないと賃金や人事考課等で不利益を受けたり、社員研修等に参加しないと業務に必要不可欠な知識を習得できない等業務に具体的な支障が生じたりするような場合は、参加を余儀なくされたと評価されるため、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができ、原則として労基法上の労働時間に該当することになります。
「自由参加」でも労働時間に該当する典型的なケース
不参加で人事考課が下がるケース
「自由参加」と案内しながら、実際には参加した社員と不参加の社員で人事評価が異なる運用をしている場合は、実質的に参加を強制していると評価されます。
業務上必要な知識を研修でしか習得できないケース
参加しなければ業務遂行に必要不可欠な知識を習得できない場合は、業務遂行のために参加するほかない状態であり、実質的に参加が義務付けられています。
就業規則上の制裁がある場合
「自由参加」と案内しながら就業規則上「研修等への参加は義務」と規定されていたり、不参加に対する懲戒規定がある場合は、名目上の自由参加は意味をなしません。
04判断フローと実務上の注意点
研修等の労働時間性を判断する際の考え方を以下に整理します。
会社経営者としては、社内で実施している研修・勉強会のそれぞれについて、上記の流れで事前に確認しておくことが重要です。特に「自由参加」と案内している研修については、不参加への実際の対応(評価・処遇への影響)と案内の内容が一致しているかどうかを確認してください。名目と実態が乖離している場合は、後になって残業代請求トラブルに発展するリスがあります。
05まとめ
「自由参加」の社内研修や勉強会の時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかは、その名目ではなく実態による判断です。純然たる自由参加で、不参加に対して何の不利益も課されず、業務に具体的な支障も生じない場合は労働時間に該当しません。しかし、「自由参加」と言いながら不参加で賃金・人事考課等の不利益を受けたり、参加しないと業務遂行に必要不可欠な知識を習得できないような場合は、参加を余儀なくされたものと評価され、使用者の指揮命令下に置かれているものとして原則として労基法上の労働時間に該当します。
研修の設計・就業規則の整備・賃金支払いの設計については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。研修・勉強会の労働時間該当性・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 「自由参加」と案内すれば研修時間は労働時間に該当しませんか。
A. 「自由参加」という言葉の名目だけで労働時間性が否定されるわけではありません。純然たる自由参加で、不参加に対して何の不利益も課されず、業務に具体的な支障も生じない場合は労働時間に該当しません。しかし実態として参加を強制されている場合は、「自由参加」という案内にかかわらず労働時間と評価されます。
Q2. 参加しないと評価が下がる研修は労働時間に該当しますか。
A. 該当するものと評価されます。不参加で人事考課等の不利益を受ける場合は、社員は不利益を回避するために参加するほかなく、実質的に参加を余儀なくされた状態です。これは使用者の指揮命令下に置かれているものと評価でき、労基法上の労働時間に該当します。
Q3. 業務知識の習得に必要な研修は自由参加でも労働時間に該当しますか。
A. 参加しなければ業務遂行に必要不可欠な知識を習得できないような場合は、業務遂行のために参加するほかない状態であり、実質的に参加が義務付けられています。この場合は「自由参加」という名目にかかわらず、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価され、労働時間に該当します。
Q4. 社内研修の労働時間性をめぐるトラブルを防ぐにはどうすればよいですか。
A. 各研修について①就業規則・労働契約の定め②不参加への対応(不利益取扱い)③業務との関連性(不参加で業務に具体的支障が生じるか)の3点を事前に整理することが重要です。「自由参加」と案内する場合は、実態として任意性が確保されているかどうかを確認してください。判断が難しいケースは使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
関連ページ
最終更新日:2026年5月10日