企画業務型裁量労働制の健康・福祉確保措置と苦情処理措置の決議内容【会社側弁護士が解説】
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健康・福祉確保措置は①勤務状況の把握方法②具体的な措置内容の両方を決議で明確にする必要あり ①②いずれか片方だけでは要件を満たしません。特に②の「具体的内容」が抽象的すぎる場合は指針違反として制度の効果が生じないリスクがあります。また、労基署への定期報告義務があります。 |
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定期報告義務(決議後6か月以内・以後1年以内ごと)と苦情処理措置の具体的な整備が必要 報告は様式第13号の4で所轄労基署長に提出します。苦情処理措置は窓口・担当者・対象範囲・処理手順等を具体的に定める必要があり「人事部とする」程度の記載では不十分とされる可能性があります。 |
目次
01健康・福祉確保措置の決議内容(①②両方必須)
企画業務型裁量労働制を導入するにあたり、労使委員会では健康・福祉確保措置について決議する必要があります。指針(平成11年労告149号)では、健康・福祉確保措置は次の①②の両方に該当する内容のものであることが必要とされています。
② ①により把握した勤務状況に基づいて、対象労働者の勤務状況に応じ、使用者がいかなる健康・福祉確保措置をどのように講ずるかを明確にするものであること
①②はいずれも必須であり、片方だけでは要件を満たしません。特に②の「具体的内容」が抽象的すぎる場合は、指針の「具体的に明らかにする事項」に反するとして制度の効果が生じないリスクがあります(686番参照)。
02勤務状況の把握方法について
勤務状況の把握方法は、いかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったか等を明らかにし得るものであることが必要とされています。指針では、具体的な方法として出退勤時刻または入退室時刻の記録等によるものであることが示されています。
・入退室時刻の記録(ICカード・指紋認証等)
・タイムカードによる出退勤管理
・パソコンのログイン・ログアウト記録
・業務日報による在社時間の把握
裁量労働制であっても労働時間の実態を把握する義務は免除されません。むしろ、適正な制度運用のためにも、勤務状況の把握は会社側の重要な義務といえます。
03健康・福祉確保措置の具体的内容
把握した勤務状況に基づいて講ずる健康・福祉確保措置の内容は、事業場の実態に応じて適切に定める必要があります。
・長時間労働者に対する産業医等による面接指導
・所定労働時間を超えた在社時間が一定時間を超えた場合の上長への通知・面談
・年次有給休暇の取得促進
・代替休暇の付与
・定期健康診断の実施・フォローアップ
「具体的にいかなる状況のときに、どのような措置を講ずるか」を決議で明確化することが重要です。抽象的な記載は指針違反と判断されるリスクがあります。
04労基署への定期報告義務
健康・福祉確保措置については、法定の報告義務があります(労基法38条の4第4項、労基法施行規則24条の2の5)。
| 報告のタイミング | 提出先・様式 |
|---|---|
| 決議がなされた日から起算して6か月以内に1回 | 所轄労働基準監督署長宛/様式第13号の4 |
| その後1年以内ごとに1回 | 所轄労働基準監督署長宛/様式第13号の4 |
報告内容:対象労働者の労働時間の状況ならびに健康・福祉を確保するための措置の実施状況
この報告義務を失念しているケースが実務上多く見られます。社内でのスケジュール管理体制を整備しておくことが重要です。
05苦情処理措置の決議内容
指針では、苦情処理措置として以下の事項を具体的に明らかにすることが求められています。
・取り扱う苦情の範囲
・処理の手順・方法等その具体的内容
「窓口は人事部とする」という程度の記載では不十分とされる可能性があります。具体的な担当者名(または役職)・連絡先・受付方法・処理の流れ・回答期限等を明確に定めることが望ましいです。
06経営者として押さえるべき実務上の注意点
② 健康・福祉確保措置が形骸化していないか上長に確認する体制を作る
③ 苦情処理の窓口が実際に機能しているか確認し、申出があった場合は迅速に対応する
④ 労基署への定期報告をスケジュール管理して漏れなく実施する
これらが適切に運用されていない場合、労働者から「裁量労働制が適法に機能していない」と主張される根拠になり得ます。法的リスクの観点からも、制度の実態的な運用管理が不可欠です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。就業規則・裁量労働制の導入・整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 健康・福祉確保措置の報告を失念していた場合、どう対応すればよいですか。
A. 報告義務の懈怠は法令違反となるため、遅くなっても速やかに所轄労基署に報告するとともに、今後の体制を整備することが重要です。場合によっては所轄労基署に事情を説明して指導を受けることも選択肢の一つです。
Q2. 勤務状況の把握は労働時間管理と同じですか。
A. 裁量労働制では「みなし労働時間」で計算するため、実際の労働時間の管理義務は通常と異なりますが、勤務状況(在社時間等)の把握義務は別に課されています。健康管理の観点から在社時間等を把握することが法的に求められています。
Q3. 苦情処理の窓口は社内でなければなりませんか。
A. 法令上は社内に限るとは定められていません。ただし、対象労働者が利用しやすい実効性のある窓口を設けることが求められます。社内窓口と社外相談窓口を併設する形も考えられます。
Q4. 健康・福祉確保措置が不十分と判断された場合、どのようなリスクがありますか。
A. 指針の「具体的に明らかにする事項」に反した決議と判断された場合、企画業務型裁量労働制の効果が生じないとされ、実際の労働時間に基づく残業代支払い義務が生じる可能性があります。また、過重労働による健康障害が発生した場合の安全配慮義務違反も問われるリスクがあります。
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最終更新日:2026年3月1日