この記事の結論
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裁量労働制でも深夜割増賃金・休日割増賃金の支払義務は免除されない

みなし制は「時間数」をみなす制度であり「時間帯」はみなしません。行政通達(昭和63年基発150号)でも、裁量労働制に関するみなし規定が適用される場合でも、深夜・休日に関する規定の適用は排除されないと明示されています。

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深夜・休日の事前許可制の導入が最も有効な管理手段

深夜・休日業務の事前許可制を設けることで、労働時間の把握と割増賃金の発生抑制の両面で有効な管理が可能になります。許可制を設ける場合は就業規則への明記が必要です。

01専門業務型裁量労働制とは

 専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)とは、業務遂行の手段・方法や時間配分の決定を労働者の裁量に委ね、使用者が具体的な指揮命令を行わないことを前提として、労使協定で定めた一定の時間数を実際の労働時間として「みなす」制度です。

 この制度の核心は「労働時間の量(時間数)をみなすこと」にあります。実際に何時間働いたかにかかわらず、協定で定めたみなし時間を労働したものとして取り扱います。ただし、みなしの対象はあくまで「時間数」であり、「時間帯」や「就労の有無」はみなしの対象ではありません。これが深夜・休日管理の問題の出発点となります。

02深夜・休日に関する法的規制の適用関係

 行政通達(昭和63年3月14日基発150号、平成12年1月1日基発1号)では、専門業務型裁量労働制に関するみなし規定が適用される場合であっても、休憩・深夜業・休日に関する規定の適用は排除されないと明示されています。したがって、使用者は以下の義務を負います。

深夜割増賃金(労基法37条4項):22時〜翌5時の時間帯に労働させた場合、25%以上の深夜割増賃金の支払い義務がある
休日労働に関する規制(労基法35条):法定休日に労働させる場合は35%以上の割増賃金が必要
休憩時間の付与(労基法34条):実際の労働時間に応じた休憩時間を確保する義務は残る

03深夜労働の時間管理の方法

 裁量労働制においても深夜割増賃金の支払いが必要となる以上、使用者は深夜時間帯における実際の労働時間を把握する必要があります。実務上の対応方法として、以下の手段が考えられます。

深夜労働の事前許可制:深夜時間帯に業務を行う場合は事前に届出・許可を得ることを義務付け、許可がある場合のみ深夜労働として認める
労働者からの申告制:深夜労働を行った場合は労働者が翌日以降に報告する仕組みを設ける
PC・システムのログ記録:業務用PCの起動・シャットダウン時刻、社内システムへのアクセスログなどを深夜時間帯の証拠として活用する

 深夜労働の事前許可制が最も管理しやすい手段です。深夜業務が不要であれば許可しない運用を徹底することで、深夜割増賃金の発生自体を抑制できます。許可制を設ける場合は就業規則への明記が必要です。

04休日労働の時間管理の方法

 裁量労働制の対象者が法定休日(週1日)または所定休日に労働した場合の実務的な対応方法としては、以下が考えられます。

労使協定での取り決め:休日労働時のみなし時間数を所定労働日と同様の時間数とするか別途設定するかを協定で定める
休日労働許可制の導入:休日の業務は事前の許可を要件とし、記録として残す
代休・振替休日の整備:休日労働が生じた場合の代休・振替休日制度を就業規則に整備し、割増賃金との関係を明確にしておく

 法定休日労働については、割増率35%以上の賃金支払いが必要となる点(労基法37条1項)は裁量労働制の対象者にも適用されます。

05会社側の実務的対応と整備事項

① 就業規則への深夜・休日許可制の明文化(手続きと賃金処理を明確に規定する)
② 労使協定の整備(休日労働時のみなし時間数や深夜割増の計算基準を定める)
③ 客観的記録の整備(PC・スマートフォン・入退館記録等による実態把握体制)
④ 対象労働者への周知(深夜・休日業務には事前許可が必要・無断業務は割増の対象外となる可能性を周知)
⑤ 専門家への確認(みなし制度と割増賃金の交錯する問題は複雑なため弁護士・社労士への相談を推奨)
経営上のポイント 専門業務型裁量労働制を導入していても、深夜(22時〜翌5時)に労働させた場合は25%以上の深夜割増賃金、法定休日に労働させた場合は35%以上の割増賃金が必要です(行政通達・昭63基発150号)。深夜・休日の事前許可制を就業規則に明記することが最も有効な管理手段です。制度の設計・運用についての詳細は弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。就業規則・裁量労働制の導入・整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 裁量労働制の対象者が深夜に自宅で仕事をした場合、深夜割増賃金は必要ですか。

A. 深夜に実際に労働した事実があれば、深夜割増賃金の支払いが必要となります。自宅での作業であっても同様です。深夜の許可制を設け、無許可の深夜業務を禁止するルールを明確化しておくことが実務上有効です。

Q2. みなし時間が所定労働時間と同じ場合、深夜割増の計算はどうなりますか。

A. みなし時間数にかかわらず、実際に深夜時間帯(22時〜翌5時)に労働した時間に対して25%以上の割増賃金が必要です。みなし時間数と深夜割増は独立した概念ですので、別途計算・支払いが必要となります。

Q3. 休日にテレワークで業務をした場合はどう扱いますか。

A. 使用者の指示・許可がある場合は休日労働として取り扱い、割増賃金の支払いが必要です。裁量労働制下でのテレワーク時の休日業務は特に記録が残りにくいため、事前許可制と業務日報の提出を組み合わせた管理体制の整備が推奨されます。

Q4. 深夜・休日の労働を禁止することはできますか。

A. 使用者は業務上の必要性がない場合、裁量労働制の対象者であっても深夜・休日の業務を禁止または許可制とすることができます。無断で深夜・休日に業務を行った場合の対応(業務命令違反等)を就業規則に明記しておくことが重要です。

最終更新日:2026年3月1日


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