ワード:「運送業」
労基法上の労働者性が否定された裁判例①を教えてください。
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1. 事件の概要
横浜南労基署長(旭紙業)事件(最高裁第一小法廷平成8年11月28日判決)は、自らの持ち込んだトラックを運転する形態の運転手として運送業務に従事していたA氏が、作業中に傷害を負う事故を起こしたため、労基署に療養補償給付を求めたところ、当局が、A氏は労災保険法上の労働者には該当しないとして不支給処分にしたため、A氏がその処分の取消しを求め争った事案です。
2. 裁……
運送業における皆勤手当や無事故手当は、除外賃金である「臨時に支払われた賃金」に当たりますか?
運送業における皆勤手当は、実際の出勤・欠勤状況等によって、また、運転手に対する無事故手当については実際の事故の存否・頻度等の状況によって、個別的に査定を経て支給されている場合は、除外賃金である「臨時に支払われた賃金」に該当します。
皆勤手当や無事故手当の名目で支給されていても、定額で一律の支給がなされている場合は、臨時性を欠くことから、「臨時に支払われた賃金」に該当しません。 ……
皆勤手当や無事故手当の名目で支給されていても、定額で一律の支給がなされている場合は、臨時性を欠くことから、「臨時に支払われた賃金」に該当しません。 ……
手待時間について教えて下さい。
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1. 手待時間の定義
手待時間とは、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならない状態にある時間をいい、労働時間であるとされています。例えば、休憩中の電話当番、トラックドライバー等の運転手の駐停車時間などが考えられます。通達上、出勤を命じられて一定の場所に拘束されている場合は労働時間であるとされています(通達昭和33年10月11日基発6286号)。これに対して、休憩時間と……
勤務時間外における企業外での犯罪行為を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。
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勤務時間外の企業外行動における懲戒処分の考え方
勤務時間外における企業外での行動は、本来は労働者の私生活上の行為であり、使用者が懲戒をもって臨むことはできないはずです。しかし、労働者は信義則上、使用者の業務利益や信用・名誉を毀損しない義務を負っていますので、原則として企業外での行動を規制することはできないものの、それが「企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるときなど企業秩序に関……
労災保険法上の労働者性が否定された裁判例を教えてください。
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労災保険法上の労働者性が否定された裁判例
労災保険法上の労働者性が否定された裁判例として,横浜南労基所長(旭紙業)事件最高裁第一小法廷平成8年11月28日判決があります。この裁判例は,自ら持ち込んだトラックを運転する形態の運転手として運送業務に従事していたAが,労災保険法上の労働者に該当するか否かが争われた事案です。なお,労災保険法上の労働者と労基法上の労働者は同一概念と考えられ……
懲戒解雇する場合には,退職金を支給しなくても良いですか。
有効に懲戒解雇できるからといって,当然に退職金を不支給にできるわけではありません。
退職金を不支給とするためには,就業規則に退職金を不支給とする規定を定めることが必要ですし,規定があったとしても退職金を不支給とするためには,労働者のそれまでの勤続の功績を抹消する程の著しく信義に反する行為があったと認められる必要があります。
裁判例には,鉄道会社の職員が電車内で3度……
退職金を不支給とするためには,就業規則に退職金を不支給とする規定を定めることが必要ですし,規定があったとしても退職金を不支給とするためには,労働者のそれまでの勤続の功績を抹消する程の著しく信義に反する行為があったと認められる必要があります。
裁判例には,鉄道会社の職員が電車内で3度……
運送業を営む会社を経営していますが、給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。
運送業を営む会社においては、給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手は珍しくありません。従来、こういった運転手にお金を貸し付けて給料から天引きして返してもらうことが多かったようですが、会社経営者のために労働問題を扱っている弁護士の目から見てあまりお勧めできません。
一般論として、「友達にはお金を貸してはいけない。」「友達にお金を貸したら、友達ではなくなっ……
一般論として、「友達にはお金を貸してはいけない。」「友達にお金を貸したら、友達ではなくなっ……
運送業を営む会社を経営していますが、休日なしで長時間働いてお金を稼ぎたいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。
運送業を営む会社を経営していると、休まずにもっと働いてお金を稼ぎたい、働かせてくれなければ辞めて他の会社に転職する、などと言ってくる運転手がいることに気づくことと思います。
たくさん働きたいという意欲は素晴らしいのかもしれませんが、使用者には運転手の健康に配慮する義務(労契法5条)がありますので、本人が望んでいるからといって、恒常的な長時間労働を容認するわけにはいきません。ある程……
たくさん働きたいという意欲は素晴らしいのかもしれませんが、使用者には運転手の健康に配慮する義務(労契法5条)がありますので、本人が望んでいるからといって、恒常的な長時間労働を容認するわけにはいきません。ある程……
運送業を営む会社における労働時間管理のポイントを教えて下さい。
運送業を営む会社の特徴は、トラック運転手が事業場を離れて運転業務に従事する時間が長いため、出社時刻と退社時刻の確認を除けば、現認による勤務状況の確認が事実上不可能な点にあります。したがって、出社時刻と退社時刻の確認をして運転日報等に記録させるのは当然ですが、経営者の目の届かない客先や路上での勤務状況、労働時間の把握が重要となってきます。
特に問題となりやすいのは休憩時間の把握です……
特に問題となりやすいのは休憩時間の把握です……
運送業を営む会社において見逃しがちな残業代(割増賃金)の趣旨を有する賃金を教えて下さい。
運送業を営む会社においては、基本給は1日当たりいくらといった日当の形で支払われるのが通常です。
休日労働の対価として「日当」が支払われた場合には、「日当」は通常の労働日の賃金ではありませんので、これを控除して未払残業代(割増賃金)額を算定する必要があります。
「月給25万円」といった通常の月給制を念頭に置いていると見逃しがちな点ですので、ご注意下さい。 &nbs……
休日労働の対価として「日当」が支払われた場合には、「日当」は通常の労働日の賃金ではありませんので、これを控除して未払残業代(割増賃金)額を算定する必要があります。
「月給25万円」といった通常の月給制を念頭に置いていると見逃しがちな点ですので、ご注意下さい。 &nbs……
運送業を営む会社において、配送手当、長距離手当、業務手当、特別手当等の手当の支払は、残業代(割増賃金)の支払として認められますか。
運送業を営む会社においては、日当のほか、配送手当、長距離手当、業務手当、特別手当等の手当が支払われていることがあります。これらの手当の支払は、残業代(割増賃金)の支払として認められるのでしょうか。
まず、配送手当、長距離手当、業務手当、特別手当といった名称の手当は、その日本語の意味を考えた場合、直ちに残業代の支払と評価することはできません。これらの手当が残業代の支払と評価されるた……
まず、配送手当、長距離手当、業務手当、特別手当といった名称の手当は、その日本語の意味を考えた場合、直ちに残業代の支払と評価することはできません。これらの手当が残業代の支払と評価されるた……
運送業を営む会社において、残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当をトラック運転手に支給する際の注意点を教えて下さい。
運送業を営む会社において、残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当をトラック運転手に支給する際の注意点は、大きく分けて
① 残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当であることを明確にすること
② 残業代(割増賃金)とそれ以外の賃金とを明確に判別できるようにすること
の2つです。
まず、①についてですが、当該手当が残業代(割増賃金)の趣旨を有す……
① 残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当であることを明確にすること
② 残業代(割増賃金)とそれ以外の賃金とを明確に判別できるようにすること
の2つです。
まず、①についてですが、当該手当が残業代(割増賃金)の趣旨を有す……
運送業を営む会社が残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高いのはどうしてだと思いますか。
運送業のトラック運転手は従来、自営業者意識が濃厚な傾向があり、トラック運転手のそういった傾向に対応して、運送業の会社経営者は残業代(割増賃金)を支払わなければならないという意識が希薄な傾向にありました。運送業では、トラック運転手の給料が「1日現場に行って来たら1万○○○○円」といった形で定められている会社が多く、労働者というよりは個人事業主に近い形で労務管理がなされている傾向にあります。昔からそ……
交代で休憩時間を取らせることはできますか。
休憩時間は事業場ごとに、一斉に与えなければならないとされており(労基法34条2項本文)、原則として、労働者に対し、交代で休憩時間を与えることは認められません。
ただし、運送事業、販売・理容の事業、金融・保険・広告の事業、映画・演劇・興業の事業、郵便・電信・電話の事業、保健衛生の事業、旅館・飲食店・娯楽場の事業、官公署等においては適用が除外されており、一斉に休憩を与える必要はありま……
ただし、運送事業、販売・理容の事業、金融・保険・広告の事業、映画・演劇・興業の事業、郵便・電信・電話の事業、保健衛生の事業、旅館・飲食店・娯楽場の事業、官公署等においては適用が除外されており、一斉に休憩を与える必要はありま……
労基法上の労働時間に該当するかどうかが問題となりやすい時間には、どのようなものがありますか。
① 出社後始業時刻までの時間(朝礼や仕込み等の時間)
② 出社後作業現場までの移動時間や作業現場から会社に戻るまでの移動時間(会社から自動車で作業現場に向かう場合等。)
③ 休憩時間、待機時間(手待時間)
④ 終業時刻後退社までの在社時間
⑤ スキルアップのための研修・訓練の時間
等の労働時間性について、労使の認識に齟……
② 出社後作業現場までの移動時間や作業現場から会社に戻るまでの移動時間(会社から自動車で作業現場に向かう場合等。)
③ 休憩時間、待機時間(手待時間)
④ 終業時刻後退社までの在社時間
⑤ スキルアップのための研修・訓練の時間
等の労働時間性について、労使の認識に齟……
残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高い業種を教えて下さい。
残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高い業種としては、運送業、飲食業などが挙げられます。もっとも、その他の業種においても満遍なく残業代請求がなされていますので、どの業種においても、残業代を支払っていない場合は、常に残業代請求のリスクにさらされていると考えるべきでしょう。
……
懲戒解雇を通知した場合に、懲戒解雇の意思表示は、同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められますか。
この問題は、結局のところ、当該解雇の意思表示の解釈(事実認定)の問題であり、事案ごとに検討するほかありません。
懲戒解雇のみを行ったことが明らかな場合は、普通解雇であれば有効な事案であっても、懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められません。
裁判例の中には「使用者が、懲戒解雇の要件は満たさないとしても、当該労働者との雇用関係を解消し……
懲戒解雇のみを行ったことが明らかな場合は、普通解雇であれば有効な事案であっても、懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められません。
裁判例の中には「使用者が、懲戒解雇の要件は満たさないとしても、当該労働者との雇用関係を解消し……