労働問題259 休憩時間の一斉付与とは?適用除外業種・労使協定による例外

この記事の要点

原則として休憩時間は事業場ごとに全労働者に一斉に与えなければならない(労基法34条2項)

原則では、交代で休憩時間を与えることは認められません

運送・販売・飲食店・保健衛生・官公署など特定の業種は一斉付与の適用が除外されている

これらの業種では、労使協定がなくても交代で休憩を与えることができます

適用除外業種以外の事業でも、労使協定を締結すれば交代付与が可能になる

この労使協定は労働基準監督署への届出は不要です(労基法34条2項ただし書き)

自社が適用除外業種かどうか・労使協定の内容の設計については事前に弁護士に確認することを推奨

業種区分の判断や労使協定の有効な締結方法については専門家への相談が安心です

01休憩時間の一斉付与の原則——労基法34条2項

 休憩時間は事業場ごとに、一斉に与えなければならないとされており(労基法34条2項本文)、原則として、労働者に対し、交代で休憩時間を与えることは認められません。

 この「一斉付与の原則」は、全労働者が同じ時間帯に休憩を取ることを義務付けるものです。例えば、シフト勤務を組んでAさんは12時〜13時、Bさんは13時〜14時に休憩を取らせるような運用は、原則として認められないことになります。

 この規定が設けられている趣旨は、一部の労働者が休憩中に業務対応を強いられるような事態を防ぎ、全員がまとまって休憩を取れる環境を確保することにあります。しかし、業種の特性上、全員が同時に休憩できない職場も多く存在します。そのため、法律は例外規定を設けています。

02一斉付与の適用が除外される業種

 以下の業種においては一斉付与の規定の適用が除外されており、労使協定がなくても交代で休憩を与えることができます。

適用除外となる業種 主な例
運送事業 バス・タクシー・トラック・鉄道・航空など
販売・理容の事業 小売業・理容室・美容院など
金融・保険・広告の事業 銀行・保険会社・広告代理店など
映画・演劇・興業の事業 映画館・劇場・コンサートホールなど
郵便・電信・電話の事業 郵便局・通信会社など
保健衛生の事業 病院・診療所・介護施設・保育園など
旅館・飲食店・娯楽場の事業 ホテル・旅館・レストラン・ゲームセンターなど
官公署等 国・地方公共団体の機関など

 これらの業種は、業務の性質上、全員が同時に休憩を取ることが困難であるため、労使協定がなくても交代での休憩付与が認められています。自社の業種がこれらに該当するかどうかについては、業種区分の判断が複雑な場合もありますので、使用者側弁護士・会社側弁護士に確認することをお勧めします。

03労使協定による一斉付与義務の免除

 適用除外業種以外の事業でも、労使協定を締結すれば(届出は不要)、休憩時間を一斉に与える必要はなくなり、交代で休憩時間を与えることもできるようになります(労基法34条2項ただし書き)。

 この労使協定は、36協定(時間外労働・休日労働協定)とは異なり、労働基準監督署への届出は不要です。使用者と労働者の過半数を代表する者(労働組合がある場合は労働組合)との書面による合意で足ります。

労使協定のポイント
①締結相手:労働者の過半数を代表する者(労働組合がある場合は過半数組合)②形式:書面による合意③届出:労働基準監督署への届出は不要④内容:一斉付与の例外を定める旨と、各労働者(グループ)の休憩時間の取り方を規定することが望ましいです。

04実務上の注意点

業種区分の確認

 適用除外業種に該当するかどうかの判断は、事業の実態に基づいて行われます。業種名が似ていても、業務の実態によって判断が異なる場合があります。自社の業種区分について不明な点がある場合は、使用者側弁護士・会社側弁護士または労働基準監督署に確認することをお勧めします。

労使協定の締結と就業規則の整合性

 労使協定を締結して交代付与を実施する場合は、就業規則にも交代での休憩付与について明記しておくことが重要です。労使協定と就業規則の内容が整合していない場合、後にトラブルの原因になりますので、労使協定の締結と同時に就業規則の見直しも行うことをお勧めします。

休憩の実質を確保すること

 交代での休憩付与が認められている場合でも、各休憩時間中は労働から完全に解放されていることが必要です(253番・258番参照)。交代付与が可能であることと、休憩の性質が緩和されることは別問題です。

05まとめ

 休憩時間は原則として事業場ごとに一斉に与えなければなりません(労基法34条2項本文)。しかし、運送事業・販売・飲食店・保健衛生・官公署等の特定業種は適用除外となっており、労使協定なしで交代付与が可能です。また、適用除外業種以外の事業でも、労使協定を締結(届出不要)すれば、交代で休憩を与えることができます(労基法34条2項ただし書き)。

 自社の業種が適用除外に該当するかどうかの確認、労使協定の内容の設計・締結方法、就業規則との整合性については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。休憩時間の設計・労使協定の締結・就業規則の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 休憩時間は必ず全員同時に与えなければなりませんか。

A. 原則として一斉に与える必要があります(労基法34条2項本文)。ただし、適用除外業種(運送・販売・飲食店・保健衛生等)や、労使協定を締結した場合には、交代での付与が認められます(労基法34条2項ただし書き)。

Q2. 一斉付与の原則から除外されている業種はどれですか。

A. 運送事業、販売・理容の事業、金融・保険・広告の事業、映画・演劇・興業の事業、郵便・電信・電話の事業、保健衛生の事業、旅館・飲食店・娯楽場の事業、官公署等が適用除外となっています。これらの業種は労使協定なしで交代付与が可能です。

Q3. 適用除外業種以外で交代休憩を実施したい場合はどうすればよいですか。

A. 労働者の過半数を代表する者(過半数組合がある場合は組合)との間で労使協定を締結すれば、交代での休憩付与が可能になります。この労使協定は労働基準監督署への届出は不要です。ただし、就業規則との整合性も確認してください。

Q4. 一斉付与の労使協定を締結する際に労働基準監督署への届出は必要ですか。

A. 不要です。36協定とは異なり、この労使協定は労働基準監督署への届出が不要な種類の協定です(労基法34条2項ただし書き)。ただし、書面による合意が必要であり、内容を適切に定めることが重要です。

最終更新日:2026年5月10日


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