労働問題365 運送業を営む会社を経営していますが、給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。

 運送業を営む会社においては、給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手は珍しくありません。従来、こういった運転手にお金を貸し付けて給料から天引きして返してもらうことが多かったようですが、会社経営者のために労働問題を扱っている弁護士の目から見てあまりお勧めできません。
 一般論として、「友達にはお金を貸してはいけない。」「友達にお金を貸したら、友達ではなくなってしまう。」と言われるのには、それなりの根拠があるのです。お金を貸したら利害が対立してしまっていい関係でいるのは難しくなり、残業代(割増賃金)請求等の紛争を誘発します。
 そもそも、お金を貸して欲しいと言って来る運転手は、お金にだらしなく、金銭面での信用がないのが通常です。通常であれば、家族にお金の工面を相談したり、銀行からキャッシングしたりすることができるはずですし、信販会社や消費者金融からキャッシングすることもできるはずです。消費者金融ですらお金を貸さない運転手に素人の会社がお金を貸したらどのような結末になるのかは、容易に予測することができます。
 退職するに当たり、貸したお金を返して欲しいと伝えたところ、借金を踏み倒す目的で残業代請求を受けたというケースは珍しくありません。これでは、残業代請求を誘発するためにわざわざお金を貸していたようなものです。
 法律的な話をすると、貸金の給料からの天引きは、賃金控除の労使協定を締結した上で、給料からの天引きによる返済を合意しておかなければなりません。私の知る限り、賃金控除の労使協定を締結している運送業を営む会社はごく一部に過ぎません。
 賃金控除の労使協定を締結せずに給料から天引きすることは労基法違反で無効ですし、天引きした金額を支払えと請求された場合には、貸金と相殺することもできず、いったんは支払わなければなりませんが、賃金を支払った後に貸金を返して欲しいと請求したとしても、無資力になっていれば回収することができません。多額の未払残業代を支払わされたような場合には、会社からの支払を原資として貸金を返済してもらえることもありますが、このような結末を会社が望んでいたはずはありません。
 やはり、運転手に対してお金を貸すのは、できるだけ控えるべきだと思います。お金を貸してくれないなら会社を辞めて、他の会社に転職すると言われるかもしれませんが、転職されてしまったとしても、お金にだらしない運転手がいなくなってかえってすっきりしたと割り切るくらいの心構えが必要だと思います。
 どうしてもお金がなくて困っているというようだから何とか助けてあげたいというのであれば、給料日前に給料の一部を前倒しで支給することも考えられます。お金を貸すのではなく、給料を前払いするわけです。もちろん、上限金額は、1か月分の給料までです。1か月分の給料が上限では足りないというような話であれば、給料の前払いも、お金を貸すことも断るくらいがちょうどいいと思います。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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