労働問題587 労災保険法上の労働者性が否定された裁判例を教えてください。

 労災保険法上の労働者性が否定された裁判例として,横浜南労基所長(旭紙業)事件最高裁第一小法廷平成8年11月28日判決があります。この裁判例は,自ら持ち込んだトラックを運転する形態の運転手として運送業務に従事していたAが,労災保険法上の労働者に該当するか否かが争われた事案です。なお,労災保険法上の労働者と労基法上の労働者は同一概念と考えられます。

 裁判所は,
① Aが業務用機材であるトラックを所有していること
② 自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものであること
③ 会社は,運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品,運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には,Aの業務の遂行に関し,特段の指揮監督を行っていないこと
④ 時間的,場所的な拘束の程度が一般の従業員と比較してはるかに緩やかであること
といった労働者性を否定する事実を認定した上で,
⑤ Aが専属的に会社の製品の運送業務に携わっており,同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと
⑥ 毎日の始業時刻及び終業時刻は,運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること
⑦ 運賃表に定められた運賃は,トラック協会が定める運賃表による運送料よりも一割五分低い額とされていたこと
といった労働者性を肯定する方向の事実を考慮したとしても,Aは労災保険法上,労基法上の労働者に該当しないと判断しました。

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