所定労働時間内の通常業務は遂行できる程度の症状であれば、即座に休職・解雇を検討するのではなく、まず「時間外労働の免除」「出張等の負担の重い業務の一時免除」「業務量の軽減」によって症状の悪化を防ぎながら就労を継続させることが基本的な対応です。
目次
1. 症状の程度に応じた段階的な対応が原則
精神疾患を発症した社員への対応は、症状の程度に応じて段階的に行うことが重要です。所定労働時間内の通常業務であれば問題なく行える程度の症状であれば、この段階では就労を継続させながら負担を軽減する方向で対応します。
この段階で重要なのは、症状をこれ以上悪化させないことです。精神疾患は適切な治療と休養があれば改善する疾患ですが、過重な業務負荷が続けば悪化します。会社としては、医療機関での治療を妨げない環境を整えながら、できる範囲での就労を支えることが安全配慮義務(労契法5条)の観点からも求められます。
2. 具体的な配慮措置——3つの軽減対応
① 時間外労働の免除
精神疾患を発症した社員には、まず時間外労働(残業)を免除します。過重な残業は精神疾患の悪化要因の最たるものであり、時間外労働の免除は安全配慮義務の観点からも不可欠な措置です。医師や産業医から時間外労働の制限を求める意見書・診断書が出されている場合は、特段の事情がない限りこれに従う必要があります。
なお、時間外労働を免除した結果、残業代が減少することについては社員に事前に説明しておくことが紛争予防の観点から重要です。
② 出張・深夜勤務等の負担の重い業務の免除
出張・深夜勤務・宿泊を伴う業務・顧客対応が多い業務など、精神的・身体的負荷の高い業務を一時的に免除します。これらの業務は精神疾患の発症・悪化のトリガーになりやすく、安全配慮義務の観点から配慮が求められます。
業務内容の変更が必要な場合は、就業規則の配置転換条項や職務変更条項に基づいて対応します。就業規則に「業務上の必要性があると認めるときは、配置転換・職務変更を命じることがある」旨の規定があれば、これを根拠として対応できます。
③ 業務量・業務の難易度の軽減
担当業務の量を減らし、締切のプレッシャーが強い業務・判断を要する難易度の高い業務を一時的に他の社員に移管します。「なぜ自分だけ仕事を減らされるのか」という社員の抵抗感が生じることがありますが、「体調が回復するまでの一時的な措置であること」を丁寧に説明することが大切です。
3. 対応を記録に残す——後のトラブル予防
どのような配慮措置を取ったかを文書で記録しておくことが重要です。後に「会社は何の対応もしなかった」として安全配慮義務違反を問われた際、「このような措置を取っていた」という証拠になります。具体的には、①面談記録(日時・出席者・話し合った内容・決定事項)、②業務軽減措置の通知書面、③医師・産業医の意見書(あれば)の保存が重要です。
4. この段階で症状が悪化した場合
業務軽減等の措置を取っても症状が悪化し、所定労働時間の勤務さえ困難になった場合は、次のステップとして休職の検討に進みます。就業規則に私傷病休職制度がある場合は休職命令を、ない場合は普通解雇を検討することになりますが、いずれも弁護士への相談が不可欠です。
精神疾患社員への業務軽減対応・就業規則の整備・休職制度の設計について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら
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弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日 2026/04/10