この記事の要点

精神疾患の発症が強く疑われる社員が出社してきたものの債務の本旨に従った労務提供ができない場合は、就労を拒絶して帰宅させ、欠勤扱い(無給)にするのが原則です。漫然と就労させることは安全配慮義務違反のリスクを招きます。

1. 就労拒絶・帰宅命令が原則

 精神疾患の発症が強く疑われる社員が出社してきたものの、集中力の著しい低下・意思疎通の困難・危険な業務での判断力喪失など、債務の本旨に従った労務提供ができない状態にある場合は、就労を拒絶して帰宅させ、欠勤扱い(無給)にするのが原則です。

 この対応が必要な理由は2つあります。第一に、就労不能状態のまま無理に働かせることで症状が悪化するリスクがあり、安全配慮義務(労契法5条)違反となりかねません。第二に、就労不能状態での就労を認めることは、後の休職・解雇手続において「会社が就労を認めていた」と評価されることにつながり、会社側の法的立場を不利にする可能性があります。

2. 帰宅指示の実務上の注意点

① 口頭だけでなく書面で記録を残す

 「〇年〇月〇日、〇〇さんに対し、本日の就労が困難と判断したため帰宅を指示した。理由:〇〇〇〇。本人の応答:〇〇〇〇」と、日時・理由・本人の反応を記録します。後に「突然帰宅させられた」「不当な扱いを受けた」と争われた際の証拠になります。

② 欠勤扱い・無給の根拠を明確にする

 就労拒絶による帰宅は、会社都合による休業ではなく社員側の就労不能に基づく欠勤ですから、ノーワーク・ノーペイの原則(民法624条・536条2項)により賃金の支払義務はありません。「今日は欠勤扱いとなります」と明確に伝え、賃金控除の根拠を明示しておくことが重要です。

③ 医療機関受診を強く勧める

 帰宅を指示する際は、「体調のことが心配です。今日は一度ゆっくり休んで、できれば医療機関(心療内科・精神科)を受診してみてください」と声をかけます。受診勧奨の事実も記録に残します。

⚠ 帰宅させるにも慎重な対応が必要

本人が「働ける」と強く主張する中で帰宅させる場合、「不当な就労排除だ」として争われるリスクがあります。帰宅指示の理由(就労不能状態の具体的内容)を明確に説明し、記録することが重要です。就業規則に「就業能力を喪失した場合は帰宅を命じることができる」旨の規定があれば法的根拠がより明確になります。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/10


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