精神疾患を発症した社員が出社と欠勤を繰り返しても、真面目に働いている社員が不公平感を抱いたり、会社の負担が過度に重くなったりしないようにして会社の活力を維持するためには、どうすればいいですか。
精神疾患社員が出社と欠勤を繰り返す場合に会社の活力を維持するためには、①欠勤日を無給とし傷病手当金で対応させる、②欠勤通算規定を設けて休職命令を発令できる状態にする、③休職中の給与を無給とする就業規則を整備する、の3点が核心的な対策です。
1. 欠勤日の無給化——最も重要な対策
精神疾患社員の出社・欠勤繰り返しに悩んでいる会社の多くは、欠勤期間についても賃金を支払い続けていることが少なくありません。欠勤日は「ノーワーク・ノーペイの原則」(民法624条・536条2項)により、原則として賃金の支払義務はないにもかかわらず、「かわいそうだから」「慣例で」支払ってしまっているケースがあります。
欠勤日を無給とすることは法的に正当な対応です。他の社員が同じ期間働いて賃金を得ているのに、欠勤社員にも同じ賃金を支払い続けることは、真面目に働く社員の不公平感の最大の原因となります。就業規則に「欠勤日は無給とする」旨を明確に規定し、運用を徹底することが最優先の対策です。
2. 傷病手当金の活用を社員に案内する
欠勤日を無給とする場合、社員の生活を守るための代替手段として健康保険の傷病手当金(連続3日以上の欠勤の場合に4日目から支給・標準報酬日額の3分の2・最長1年6か月)の活用を案内します。
傷病手当金は雇用保険(失業手当)とは異なり、在職中の休業に対して支給されるものです。「欠勤させるが会社都合の休業ではないため賃金は支払わない」という対応の場合でも、傷病手当金の受給が可能です(会社が証明書を発行する必要あり)。社員への案内と会社の証明書発行義務を忘れずに行います。
3. 休職制度による切り替えのタイミング
出社と欠勤の繰り返しが続く場合は、就業規則の欠勤通算規定(前記149番参照)に基づいて休職事由該当性を判断し、該当する時点で休職命令を発令します。休職中は無給(傷病手当金で対応)とし、休職期間満了までに回復しない場合は就業規則に従って退職・解雇の扱いとします。
この枠組みを機能させることで、「いつまでも中途半端に出社・欠勤を繰り返す状態」を法的に整理することができ、真面目な社員への影響を最小化しながら会社の負担を軽減することができます。
4. 周囲の社員へのコミュニケーション
周囲の社員に対しては、個人情報(精神疾患の詳細)を明かすことなく、「〇〇さんは体調不良で休職・欠勤中。業務の分担については上司に相談してほしい」という形で伝え、業務再配分の公平性と透明性を確保します。過重な業務が特定の社員に集中しないよう人員体制を見直すことも、真面目な社員の離職防止という観点から重要です。
欠勤の無給化・就業規則の整備・傷病手当金の案内方法について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら
さらに詳しく知りたい方はこちら
- 精神疾患を発症して出社と欠勤を繰り返す社員に対応できるようにするためには、就業規則の休職事由をどのように定めるべきでしょうか。
- 私傷病に関する休職制度がある場合であっても、休職させずに直ちに解雇することはできますか。
- 私傷病に関する休職制度は、必ず設ける必要がありますか?
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日 2026/04/10