この記事の結論
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残業代の基本式は「時間単価×割増率×対象時間数」。月給制は時間単価の算出が最大のポイント

時間単価=月給÷1か月の所定労働時間数で算出し、実労働日数で割ってはいけません。

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算定基礎から除外できる賃金は法律上限定列挙されており、拡張解釈はできない

役職手当・職務手当・営業手当等は原則として除外できません。

 残業代(割増賃金)の計算構造とは、「基礎となる時間単価×所定の割増率×時間外・休日・深夜労働時間数」という三要素で構成される計算式をいい、この構造は時給制でも月給制でも共通しています。会社側が誤りやすいのは、時間単価を正確に算出せず、感覚的に計算してしまう点です。

 本ページでは、残業代(割増賃金)の計算式と、時給制・月給制それぞれの算定方法について、会社側専門の弁護士が解説します。

01残業代(割増賃金)の基本的な計算構造

 結論:残業代(割増賃金)の基本式は「残業代=時間単価×所定の割増率×時間外・休日・深夜労働時間数」です。この構造は時給制でも月給制でも同じですが、違いは「時間単価」の算出方法にあります。時給制であれば時給そのものが時間単価になりますが、月給制の場合には、まず月給から1時間あたりの単価を算出する必要があります。

 残業代計算の出発点は、「どの賃金を基礎に、どの時間に、どの割増率をかけるのか」を明確に整理することです。この三要素を分解して考えることが、未払い残業代リスクを防ぐ第一歩となります。

02時給制アルバイトの残業代計算式

 結論:時給制の場合、「時給単価」そのものが基礎となる時間単価になるため、月給制のように時間単価を別途算出する必要はありません。たとえば、時給1,200円のアルバイトが法定時間外労働を10時間行った場合、割増率25%で計算すると、1,200円×1.25×10時間=15,000円が時間外割増賃金となります。

 深夜労働(22時~5時)の場合は25%以上、法定休日労働の場合は35%以上の割増率が適用されます。会社側が注意すべきなのは、「シフト表どおり」で計算してしまうことです。実際の労働時間がシフトより長ければ、その超過分も当然に割増計算の対象になります。打刻漏れやサービス残業があれば、後に未払い残業代として請求される可能性があります。

03月給制正社員の残業代計算の考え方

 結論:月給制の場合は「時間単価」をまず算出しなければならない点が時給制との大きな違いです。月給額をそのまま割増計算に用いることはできません。時間単価は、原則として「月給÷1か月の所定労働時間」で算定します。たとえば、月給30万円、1か月の所定労働時間が160時間の場合、300,000円÷160時間=1,875円が1時間あたりの基礎単価になります。

 会社側が誤りやすいのは、①時間単価の算定基礎を誤ること、②定額残業代が含まれているにもかかわらず正しく控除できていないこと、③所定労働時間の算定が曖昧であることです。月給制であっても、計算の出発点は「時間単価」であり、この単価が誤っていれば、その後の計算がすべて誤ります。

04月給制における「時間単価」の算出方法

 結論:時間単価=残業代算定の基礎となる月給額÷1か月の所定労働時間数、という算式が原則です。ここで注意すべきは、「月給の全額」が必ずしも計算基礎になるわけではないという点です。家族手当、通勤手当、別居手当など、法律上除外が認められている賃金は基礎に含めないことができますが、役職手当や職務手当などは原則として含める必要があります。

 「1か月の所定労働時間数」は、年間所定労働日数×1日の所定労働時間をもとに年間総労働時間を算出し、それを12か月で割る方法が一般的です。会社側が誤りやすいのは、実際の出勤日数や実労働時間で割ってしまうケースです。その場合、時間単価が不当に低くなり、結果として未払い残業代が発生する可能性があります。固定残業代が含まれている場合は、その固定残業代部分を除いた賃金額で時間単価を算出する必要があります。

05割増率の整理(時間外・休日・深夜)

 結論:基本となる割増率は、①時間外労働(法定労働時間超):25%以上、②法定休日労働:35%以上、③深夜労働(22時~5時):25%以上、の3種類です。さらに、時間外労働が月60時間を超えた場合は、60時間を超える部分について50%以上の割増率が必要になります(企業規模を問わず適用)。

 これらの割増は重複します。時間外労働が深夜に及んだ場合は「25%+25%=50%以上」、法定休日の深夜労働であれば「35%+25%=60%以上」となります。会社側が誤りやすいのは、「休日出勤はすべて35%」「深夜は時間外の中に含まれている」といった誤解です。各制度は独立しているため、要件を満たせば加算されます。

06割増賃金計算で除外できる賃金とは

 結論:割増賃金の算定基礎から除外できる賃金は労働基準法上限定列挙されており、代表的なものは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当(一定の要件を満たすもの)・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)です。これらは個人的事情や不定期性に基づく賃金であるため、原則として時間単価の基礎から除外できます。

 一方で、「役職手当」「職務手当」「営業手当」などは、原則として除外できません。名称にかかわらず、労働の対価として毎月固定的に支払われているものは算定基礎に含める必要があります。会社側が誤りやすいのは、独自に設定した各種手当を広く除外してしまうことです。法律で限定列挙されている以上、拡張解釈はできません。

07固定残業代制度がある場合の計算方法

 結論:固定残業代制度を採用している場合でも、残業代(割増賃金)の計算が不要になるわけではありません。まず前提として、固定残業代制度が有効と認められるためには、①基本給部分と固定残業代部分が明確に区分されていること、②固定残業代が何時間分の時間外労働に対応するのか明示されていることが必要です。

 計算の流れは、①固定残業代を除いた賃金額を基礎に時間単価を算出する、②実際の時間外・休日・深夜労働時間を計算する、③法定の割増率で算出した残業代総額を求める、④その総額と固定残業代額を比較し不足分があれば追加で支払う、というものです。たとえば、固定残業代が月30時間分で設定されている場合でも、実際の時間外労働が45時間であれば、15時間分は追加支払いが必要になります。

08会社側が計算を誤りやすいポイント

 結論:未払い残業代請求の多くは、意図的な不払いというよりも計算ロジックの誤りから生じています。特に多いのは、①時間単価の算出誤り、②法定労働時間と所定労働時間の混同、③割増の重複計算漏れ、④月60時間超の時間外労働の割増率引上げの未反映、⑤固定残業代の過信、の5点です。

 残業代計算は、単なる給与計算業務ではなく、法的責任を伴うリスク管理業務です。会社側としては、計算式だけでなく、算定過程を説明できる状態にしておくことが、将来の未払い残業代請求への最善の防御となります。

09未払い残業代請求を防ぐための計算体制整備

 結論:重要なのは、正確な計算式を継続的かつ正確に実行できる体制を整備することです。まず会社側が行うべきは、自社の給与計算ロジックの総点検です。時間単価の算出方法、除外手当の整理、割増率の設定、月60時間超の処理、固定残業代との差額精算などが、法令どおりに設計されているかを確認する必要があります。

 労働時間データと給与計算が連動しているかを検証することも重要です。実労働時間の把握が曖昧であれば、どれほど正しい計算式を用いても意味がありません。給与計算ロジックの総点検・未払い残業代の事前確認体制の構築については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。会社側専門の弁護士として、会社側の立場から実務的なアドバイスを提供しています。

残業代問題について体系的に理解したい方へ

計算式だけでなく、残業代請求への会社側対応を全体像から整理したい方は、下記の特設ページもあわせてご覧ください。残業代請求の典型的な争点・固定残業代制度の有効性判断・労働時間管理の実務上の注意点・証拠の整理方法・労働審判や訴訟を見据えた対応戦略などを体系的に整理しています。

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計算体制整備の比較|適切な対応/NGな対応

○ 適切な対応 ✕ NGな対応(計算誤りの蓄積リスク)
時間単価は「月給÷1か月の所定労働時間」で算出する 実際の出勤日数・実労働時間で割ってしまう
除外できる賃金は法律の限定列挙に従って判断する 役職手当・営業手当等を独自に除外してしまう
固定残業代と実労働時間の差額を毎月検証する 固定残業代を支払っているから安心と考える
給与計算ロジックを定期的に総点検する 計算式を一度設定した後は見直さない

FAQよくある質問(FAQ)

Q. 「1か月の所定労働時間」は、毎月変わるものを使うのですか。

いいえ。年間所定労働日数×1日の所定労働時間をもとに算出した年間総労働時間を12か月で割った、年間を通じて固定の数値を用いるのが一般的です。月ごとの実労働時間で割ることは誤りであり、時間単価が不当に低くなる原因になります。

Q. 賞与や住宅手当は、残業代の計算基礎に含める必要がありますか。

賞与(1か月を超える期間ごとに支払われる賃金)は原則として除外できます。住宅手当も、一定の要件(住宅の形態やコストに応じて算定されるもの等)を満たせば除外可能ですが、全社員一律に定額支給している場合は除外が認められないことがあります。個別の判定は弁護士に相談することをお勧めします。

Q. 固定残業代の時間数を超えた場合、超過分はどのように計算しますか。

固定残業代を除いた賃金額で算出した時間単価に、超過した時間数と該当する割増率を乗じて計算します。時間外・休日・深夜の各類型ごとに超過の有無を確認し、重複計算が必要な場合は正しく加算することが重要です。

経営上のポイント 残業代の基本式は「時間単価×割増率×対象時間数」であり、月給制は時間単価の正確な算出が最大のポイントです。算定基礎から除外できる賃金は法律上限定列挙されており、役職手当・職務手当・営業手当等は原則として除外できません。残業代(割増賃金)の種類と計算基礎とあわせて、給与計算ロジックの点検について会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代計算体制の整備・給与計算ロジックの点検でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月11日


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