この記事の要点
- 法内残業とは、所定総労働時間を超えるも法定総枚は超えていない時間帯の労働を指す
- 法内残業に対しては労基法上の時間外割増賃金(25%増し)の支払い義務は生じない
- 実労働時間分の通常賃金は必ず支払わなければならない
- 就業規則に割増賃金支払の定めがあればそれに従う必要がある
01法内残業と法定外残業の違い
フレックスタイム制における残業は、「法定外残業」と「法内残業」の2種類に分けて考える必要があります。この区別を正しく理解しておかないと、賃金計算を誤ったり、従業員とのトラブルになったりするリスクがあります。
法定外残業
清算期間全体を通じて実労働時間の合計が法定総枚(週平40時間相当×清算期間の暦週数)を超えた部分です。この部分には、労基法25条に基づく時間外割増賃金(25%増し)の支払い義務が発生します。
法内残業
実労働時間が就業規則等で定めた所定総労働時間を超えているものの、法定総枚の範囲内に収まっている部分が法内残業です。例えば、清算期間、1か月(30日)で法定総枚が171.4時間の場合、所定総労働時間160時間を超えて165時間就労したとすると、160−171.4時間の間の「5時間」が法内残業となります。
分類のイメージ
所定総労働時間160時間、法定総枚171.4時間、実労働時間180時間の場合→ 160時間まで:通常賃金 / 160~171.4時間:法内残業(割増なし)/ 171.4時間超~:法定外残業(25%増し)
02法内残業に対する賃金の取扱い
法内残業に対しては、時間外割増賃金(25%増し)の支払い義務はありませんが、実際に労働した時間分の通常賃金の支払いは必要です。これは、実労動の対償としての賃金対價关係から当然の負担です。
具体的には、従業員の時間単価(当該賃金期間の所定総労働時間に対応する賃金÷所定総労働時間)を計算し、法内残業の時間数を掛けることで支払う賃金額を算定します。
なお、就業規則に法内残業に対する割増賃金の支払いを定めている場合は、その規定に従って割増賃金を支払う必要があります。法定水準を上回る労動条件は就業規則で自由に設定することができますが、一度定めた内容を後に不利益変更する際は従業員の同意等が必要になります。
03就業規則による割増賃金の定めと注意点
法内残業に対して割増賃金を支払うかどうかは、会社の就業規則の定めをどう設計するかによります。少なくとも3つのパターンがあります。
① 割増賃金内包型(定額賃金制)
所定総労働時間分の賃金に法内残業分の割増賃金相当額を含める形で山月賃金を設定する方式です。法内残業が山ても山月賃金に含まれるため、実労働時間の小計によって追加負担が生じないメリットがあります。
② 法内残業も割増対象とする型
就業規則に「所定総労働時間を超えた場合は、総枚内であっても割増賃金を支払う」と定める方式です。法定水準を上回る労務条件となり、従業員にとって有利になりますが、一度設けた後に削除・変更することは不利益変更討問の対象となります。導入にあたっては引っ辺たりないよう注意が必要です。
③ 法内残業は通常賃金のみ支払う型
就業規則に法内残業に関する割増賃金の定めがない場合、割増持ちなしの通常賃金のみを支払う形になります。収益情儀を重視する場合、この方式が経営上のコスト管理に適しています。
注意:就業規則の不利益変更に注意
法内残業に対して割増賃金を支払う就業規則の定めを削除・変更する場合は、労働者に不利益な就業規則の変更となります。就業規則改訂にあたっては労働者代表の意見聴取りおよび従業員の合意等の手続きが必要になります。
04法内残業の実務上の管理方法
フレックスタイム制を運用する際、法内残業を正しく抵握・管理するためには、いくつかの実務上のポイントがあります。
実労働時間の正確な記録
法内残業か法定外残業かは、清算期間終了後に実労働時間合計と法定総枚を比較しなければ判定できません。従って、日々の実労働時間を正確に記録・集計する勤怠管理システムが不可欠です。タイムカードや勤怠管理ソフトを導入することで、清算期間終了後に自動的に法内残業と法定外残業を区分できる仕組みを整えましょう。
清算期間後の迅速な賃金済の仕組み
法内残業分の賃金は、清算期間終了後の賃金支払日に支払います。就業規則に法内残業分の賃金支払の時期を明記しておくことで、従業員との認識を共有できます。特に清算期間。3か月の場合は賃金支払までの間隔が長くなるため、従業員への事前説明が大切です。
05法内残業と就業規則整備のポイント
法内残業に関する就業規則の定めを設計する際は、以下のポイントを押さえることが重要です。
まず、法内残業と法定外残業それぞれについて賃金の取扱いを明確に就業規則に記載することが大切です。法内残業について〜記載がない場合、従業員から「所定内で労働したのに追加賃金がない」という不満が生じるリスクがあります。
次に、所定総労働時間を法定総枚に近い値に設定することが、法内残業の発生を抓える一つの方法です。所定総労働時間と法定総枚の差が小さいほど、法内残業の発生範囲が素まりります。
また、フレックスタイム制の導入・変更方针を棄てる際は必ず労働問題専門の弁護士に相談し、就業規則の内容を事前に検証してもらうことをお勧めします。疑義が生じた時点で沼らないよう、導入時の規定設計が重要です。
監修者
弁護士法人四谷麺町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麺町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麺町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麺町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. フレックスタイム制の法内残業に対して割増賃金は必要ですか?
A1. 法定労働時間の総枚を超えていない法内残業については、労基法上の時間外割増賃金(25%増し)の支払義務はありません。ただし、実労働時間分の通常賃金の支払いは必要です。就業規則に割増賃金支払の定めがあればそれに従います。
Q2. 法内残業が多い職場では就業規則に割増賃金を定めたほうがよいですか?
A2. 従業員の樔喚性を高めたい場合には有効ですが、一度定めると後から変更するのが困難になります。導入時に引っ込むかどうかは労働問題専門の弁護士と相談の上、会社の実情に合わせて標準設定することをお勧めします。
Q3. 法内残業と法定外残業を区別するのは就業規則ですか?
A3. 区別の判断基準は就業規則ではなく、労基法の定める法定総枚を超えたか否かです。就業規則は法内残業への賃金の定め方を設計する役割を担います。
Q4. 法内残業分の賃金はいつ支払えばいいですか?
A4. 清算期間終了後の賃金支払日に支払うのが一般的です。就業規則に支払時期を明記しておくことで、従業員との認識齊合を図れます。
Q5. フレックスタイム制で法内残業のトラブルを防ぐにはどうすればいいですか?
A5. 就業規則に法内残業と法定外残業の割増賃金の定めを明記すること、実労働時間を正確に記録し清算期間ごとに計算する仕組みを構築すること、導入時に弁護士のレビューを受けることが有効です。
最終更新日:2026年5月20日