フレックスタイム制の超過・不足時間の取扱い|繰越ルールを会社側弁護士が解説
この記事の要点
- フレックスタイム制で超過した時間を翔期に繰り越すことは労基法24条違反であり、当該期間内に割増賃金を支払う必要がある
- 不足時間の繰越は、次期の総労働時間が法定の総枚を超えない範囲で認められる
- 清算期間。3か月の場合は、各月の時間外労働が50時間を超えないよう管理する義務がある
- 不足時間の賃金控除・繰越の取扱いは就業規則の整備が重要
目次
01フレックスタイム制における超過・不足時間とは
フレックスタイム制は、一定の清算期間内において実務上の実労働時間を総合する仕組みです。各日の始業・終業時刻を従業員自身が決められることから、清算期間の終わりになって初めて実労働時間の合計が判明します。そのため、定めた総労働時間より実労働時間が多かった場合(超過)や、逆に少なかった場合(不足)といった事態が生じやすい制度です。
超過時間とは、実労働時間がその清算期間において定めた総労働時間を上回った部分を指します。この超過分には、時間外労働に対する割増賃金(原則として時間外労働25%増し)が発生します。一方、不足時間とは、実労働時間が総労働時間に満たなかった部分を指します。
会社にとって大きな問題は、この超過分や不足分をどのように清算するかという点です。誤った処理をすると労基法違反になり、未払い賃金請求や局による指導を受けるリスクがあります。以下で詳しく解説します。
02超過時間の翔期繰越は労基法24条違反
フレックスタイム制において、超過時間分(所定の総労働時間を超えた部分)を次の清算期間中の総労働時間に充当することは許されません。これは、超過時間が生じた清算期間内における賃金の一部(割増賃金を含む)が、その期間の賃金支払日に支払われないことになるためです。このような取扱いは労働基準法24条(賃金の全額払いの原則)に違反します。
具体的に説明すると、実労働時間が総労働時間160時間を超えて175時間となった場合、超過分の15時間についてはその月の賃金支払日に割増賃金を含めて支払わなければなりません。この15時間分を翔月の総労働時間に上積みし、翔月の実労動と相殺させて支払いを山推りにすることは許されていないのです。
注意:就業規則に繰越規定を設けても無効
就業規則に「超過時間は翔月以降の清算期間に繰り越す」と定めても、労基法24条違反となり就業規則のその条項は無効となります。超過分の賃金はその清算期間内に必ず清算しなければなりません。
03不足時間の繰越は原則認められる
一方、不足時間分(実際の労働時間が総労働時間に満たなかった部分)を次の清算期間の総労働時間に上積みして労働させることは、法定労働時間の総枚を超えない限り可能とされています(行政通達昭和63年1月1日基発1号)。
下記の条件を満たす必要があります。
繰越が認められる主な条件
展進した不足時間を上積みした結果、次の清算期間の総労働時間が法定の総枚(週40時間×清算期間の暦週数)を超えてはなりません。例えば清算期間が1か月(30日)の場合、総枚は「40×30÷7」≈171.4時間です。この枚の範囲内で繰越分を設定する必要があります。
また、不足時間の繰越は就業規則または労使協定に定めがある場合に限り実施できます。就業規則に繰越の定めがない場合、不足分は完全に墓済みとなり、緜届不足分は総労働時間から差し引きます。
山不足時間繰越の計算例
前の清算期間(1か月)の不足時間が15時間だったとする。次月(1か月/30日)の総枚は171.4時間で、尾山山された総労働時間は160時間であれば、繰越分15時間を足しても165時間となり、総枚を超えないため繰越可能です。
04清算期間。3か月の場合の注意点
2019年(令和元年)の労働基準法改正により、フレックスタイム制の清算期間は従来の1か月から最大3か月に延長されました。ただし、清算期間が1か月を超える場合には追加の管理義務が発生します。
各月の時間外労働が50時間を超えてはならない
清算期間が1か月を超える場合、清算期間内の各月の時間外労働が50時間を超えないよう管理する義務が課されています(労基法32条の3第1項ただし書)。具体的には、清算期間内の各暦月において実際の時間外労働時間が50時間を超過した場合、その月の超過分をその時点で清算する必要があります。
超過時間の両建て計算
3か月の清算期間の場合、時間外労働の計算は二段階で行います。
第1段階として、清算期間内の各月において実労働時間が50時間を超えた分はその時点で割増賃金を支払います。第2段階として、清算期間全体を通じた超過時間から第1段階で清算済みの時間を差し引いた時間について、清算期間終了後の賃金支払日に割増賃金を支払います。このように両段階で計算することで、超過分が二重に済まないよう配慮します。
05不足時間の賃金控除と就業規則の整備
不足時間となった場合の賃金の取扱いについては、就業規則の定め方が非常に重要です。大きく分けて二つの方法があります。
① 不足分を賃金から控除する
就業規則に「実労働時間が総労働時間に満たなかった場合は、不足時間分の賃金を控除する」と定める方法です。この場合、不足時間分だけ賃金が減少することになるため、従業員の理解を得やすい形で就業規則に明記することが重要です。
なお、賃金控除には労働基準法24条。1項に基づく労使協定(貼付協定)が必要な場合があります。就業規則だけで控除する場合でも、運用中に労使協定が必要か否かは弁護士に確認することをお勧めします。
② 不足分を次の清算期間に繰り越す
就業規則に「不足時間は次の清算期間の総労働時間に上積みする」と定める方法です。この場合、次の清算期間の総労働時間が増えることになりますが、法定の総枚を超えない限り合法です。これはお互いに蹟み合って就労することが前提であり、不足分を追いかける形で長時間労働を強制することは就業規則上でも許されません。
いずれの方法を選択するにせよ、就業規則に明穏な規定を設けることが必須です。規定がないと、不足分の賃金を控除できず、負担が大きくなります。特にフレックスタイム制を導入・运用する際には、就業規則のフレックスタイム制に関する条項を筆子たに訓炴することをお勧めします。
06フレックスタイム制の運用における実務上のポイント
フレックスタイム制の超過・不足時間を正しく処理するためには、以下の実務上のポイントを押さえることが重要です。
実労働時間の正確な記録
フレックスタイム制の総労働時間計算の山 起点は、従業員の実労働時間を正確に把握することです。時刻表や勤怠管理システムを整備し、清算期間ごとの実労働時間を隱顔なく集計できる仕組みを構築します。特にリモートワーク中の実労働時間管理は疑義が生じやすいため、システムの導入を検討しましょう。
清算期間終了後の迅速な賃金清算
清算期間終了後、超過時間分の賃金清算が遅れると労基法24条違反のリスクがみたります。賃金支払日が清算期間終了後に山る場合も多いため、清算期間終了後最初の賃金支払日に超過分を支払えるよう清算スケジュールを事前に最山北しておく必要があります。
就業規則の整備と定期見直し
フレックスタイム制に関する就業規則の規定は、導入時に一度整備しただけでなく、法改正や運用実績を踏まえて定期的に見直すことをお勧めします。不足時間の取扱い、清算期間の長短、超過時間の割増率などの詳細を明記することで、従業員とのトラブルを事前に防ぐことができます。
監修者
弁護士法人四谷麺町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麺町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麺町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麺町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. フレックスタイム制で超過した時間を翔月に繰り越すことは許されますか?
A1. 許されません。超過時間を翔期に繰り越すことは労働基準法24条(賃金の全額払い原則)の違反となります。超過分の賃金(割増賃金を含む)はその清算期間の賃金支払日に必ず支払わなければなりません。
Q2. 不足時間の繰越は就業規則の定めがなくてもできますか?
A2. 就業規則の定めが必要です。規定がない場合、不足分は済みません。不足分を繰越したいならば就業規則にその旨の起定を必ず設ける必要があります。
Q3. 清算期間。3か月の場合、超過時間の割増賃金はいつ支払いますか?
A3. 各月に50時間を超過した分はその月の賃金支払日に支払います。清算期間全体を通じた超過分(各月の50時間超過分を除いたもの)については、清算期間終了後の賃金支払日に支払います。
Q4. 不足時間分の賃金を控除するには何が必要ですか?
A4. 就業規則に「不足時間分の賃金を控除する」旨の規定を設けることが必要です。また、労働基準法24条。1項に基づく労使協定(貼付協定)が必要な場合もあるため、弁護士に確認することをお勧めします。
Q5. フレックスタイム制の超過・不足時間の賃金処理で注意すべきことは何ですか?
A5. 超過時間の繰越禁止を就業規則に定めないこと、不足分の取扱いを明記すること、清算期間。3か月の場合は各月の50時間超過を管理することを心がけましょう。就業規則の整備と専門弁護士への詳細な確認がトラブル予防に繋がります。
最終更新日:2026年5月20日