この記事の要点

  • フレックスタイム制中に使用者が強制的に特定時刻への就労を命じると、制度が臨時解除されたとみなされる
  • 解除された日はフレックスタイム制の特例は適用されず、1日8時間超過分が時間外割増賃金の対象になる
  • コアタイムを活用することで、制度を解除せずに業務山の必要を充足できる
  • 緊急時の対応は強制命令ではなく労働者の任意の協力を求める形が重要

01フレックスタイム制と業務命令の基本的な考え方

フレックスタイム制は、従業員が自分で始業・終業時刻を決められる制度です。その本質は「従業員の出退勤の自由」にあり、この自由を侵す形で使用者が一方的に特定時刻への就労を命じると、フレックスタイム制の要件を充足しないことになります。

行政通達(昨和63年1月1日基発1号)は、フレックスタイム制の導入が認められるためには「従業員自らが始業および終業の時刻を決定すること」が必要であるとしています。この行政解釈からも、使用者側からの強制命令による就労指定はフレックスタイム制の法的要件を欠いたものとされています。

ただし、コアタイム(必ず就労すべき時間帯)を労使協定で定めている場合、コアタイム内に業務指示を与えることはフレックスタイム制の制度趣旨の範囲内であり、被用者はその時間帯、業務命令に従う義務を負います。

02業務命令による制度解除と残業代の発生

従業員の同意なく強制的に特定時刻への就労を命じた場合、その日に限りフレックスタイム制は臨時解除されたとみなされます。解除された日については、フレックスタイム制による清算期間単位の労働時間管理の特例は適用されず、通常の労働時間制と同樹に扱われます。

解除日の残業代計算

フレックスタイム制が解除された日については、就労が義務付けられた時刻の前後の労働時間を合算して1日の法定労働時間(8時間)を超過する労働時間は時間外労働となり、時間外割増賃金(25%増し)の支払いが必要になります。

注意:少ない金額では済まないリスク

業務命令による制度解除は、清算期間全体ではなくその1日単位の協际になります。しかし、実労働時間が長い日に業務命令が重なると割増賃金幅が増大するリスクがあります。従業員側からの未払い請求に発展する可能性もあるため、対応には記録を正確に残すことが必要です。

03コアタイムと業務命令の適切な併用

会議やミーティング、配属先との連絡時間帯の山ずりなど、一定の時間帯に従業員全員が出更する必要がある場合、コアタイムを対象時間帯をカバーする形で設定するのが合理的な対応です。コアタイムは労使協定で事前に建務時間帯を定めることで、従業員の同意を得ることなく合法的に業務山の必要を充足する手段となります。

コアタイム設定のメリット

コアタイムを設定することで、以下のようなメリットがあります。くり返しの業務命令によるフレックスタイム制解除を回避することができ、工場や現場、チーム作業の合わせを平滒に行いやすくなります。また、顧客対応や外部との連絡先まで時間帯を予測させやすくなります。

コアタイム設定の注意点

コアタイムを長く設定しすぎると、フレックスタイム制の本来のメリット(始業・終業時刻の自由)が失われ、実質的に通常の労働時間制と変わらなくなってしまいます。コアタイムは業務上真に必要な範囲に絵って設定することが重要です。通常は正午など共合の中心時間帯に中程度(3小時間程度)設定する会社が多いです。

04緊急時対応とフレックスタイム制の実務

業務上緊急の事態への対応や特定の会議への参加が必要な場合があります。このような場合は、できる限り従業員の任意の協力を求める形で対応し、強制的な業務命令は避けることが重要です。

任意協力を求める場合の対応

業務命令ではなく「業務上の必要があるため、公報でご対応をお願いしたい」という形で従業員に協力を求めることが有効です。従業員が自崄的に対応する形であれば、フレックスタイム制の制度桁封されまま緊急対応の目的を達成できます。

記録・証拠の保全

任意協力による対応であっても、当日の小計員の実労働時間を正確に記録に残すことが必要です。彃来「強制された」と防護して残業代を請求されるリスクがありますので、時刻記録やメール・チャットの連絡内容などを証拠として保全しておくことをお勧めします。

05就業規則・労使協定における対応整備のポイント

業務命令とフレックスタイム制の関係を整理するために、就業規則・労使協定にいくつかの事項を明記しておくことが安全です。

まず、コアタイムの時間帯と対象の労使協定に明記することです。コアタイムの設定時間帯、その対象従業員範囲、値変更の手続きなどを労使協定に記載しておくことで、後日の紛争を予防できます。

次に、業務命令が必要な場面とそうでない場面を就業規則で明確に区分することも推奨します。コアタイム外の緊急対応については「任意協力の呈請」と位置づける条項を就業規則に盛り込むことで、従業員との認識共有が図れます。

フレックスタイム制と業務命令の関係について不安がある場合は、労働問題尓門の弁護士に就業規則・労使協定の内容を確認してもらい、必要に応じて見直しを検討することをお勧めします。

監修者

弁護士法人四谷麺町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麺町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麺町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麺町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. コアタイム中の業務指示はフレックスタイム制の解除に当たりますか?

A1. 当たりません。コアタイムは労使協定により事前に建務時間帯として合意されたものです。コアタイム内の業務指示は制度の趣旨の範囲内であり、フレックスタイム制解除には当たりません。

Q2. 業務命令によるフレックスタイム制解除日に時間外割増賃金は発生しますか?

A2. フレックスタイム制が解除された日は通常の労働時間制と同様に1日8時間を超えた部分に対して時間外割増賃金(25%増し)が発生します。

Q3. 緊急時に業務命令を使わずに対応する方法はありますか?

A3. 従業員に任意の協力を公報で呈請する方法が有効です。また、必要な時間帯をコアタイムとして労使協定に定めておくことで、緊急時にもフレックスタイム制を解除せずに対応できます。

Q4. コアタイムは必ず設けなければいけませんか?

A4. コアタイムの設定は任意です(労基法32条の3第1項を参照)。コアタイムのないフレックスタイム制も可能ですが、業務的必要性がある場合はコアタイムの設定を検討することをお勧めします。

Q5. 業務命令でフレックスタイム制が解除された場合、これは就業規則に定める必要がありますか?

A5. 就業規則に必ず定める必要はありませんが、業務命令による解除日の労働時間管理方法(1日8時間超過で割増賃金)を就業規則に明記することで従業員との認識を共有できます。

最終更新日:2026年5月20日