この記事の結論
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法内残業は労基法37条の規制外。就業規則・個別合意で明確に定めれば不支給扱いも可能

1日8時間までの法内残業には労基法37条の割増義務がありません。支給義務の有無は労働契約の解釈の問題であり、就業規則・個別合意で明確に定めれば支給しない扱いにもできます。

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別段の定めがなければ通常の賃金を支払う義務あり。不支給にするなら明確な合意が必要

定めがない場合は、通常の労働時間の賃金を支払う黙示の合意があると解されます(昭23.11.4基発1592号)。不支給や低額とするなら、その旨を明確に合意しておくべきです。

 所定労働時間が7時間の事業場において、1日8時間までの時間帯(1時間分)の労働は「法内残業(法定内残業)」と呼ばれ、労基法37条に基づく割増賃金の支払義務はありません。この法内残業について残業代を支払わない扱いにできるかどうかは、就業規則や個別合意による労働契約の解釈の問題であり、明確に定めれば不支給とすることも可能です。

 もっとも、何の定めもない場合には通常の労働時間の賃金を支払う義務があると解されるため、扱いには注意が必要です。会社側専門の弁護士の立場から、法内残業の賃金の取り扱いを解説します。

01法内残業は労基法37条の規制外

 所定労働時間が7時間の事業場において、1日8時間までの時間帯(1時間分)の法内残業については、強行的直律的効力(労基法13条)を有する労基法37条の規制外です。したがって、使用者には労基法37条に基づく残業代(割増賃金)の支払義務はありません。

 法定労働時間(1日8時間)を超えない範囲の労働であるため、25%以上の割増賃金を上乗せする必要はなく、36協定の締結・届出も不要です。あくまで「割増賃金の支払義務がない」という点にとどまり、賃金そのものを一切支払わなくてよいという意味ではない点に注意が必要です。

02支給義務の有無は労働契約の解釈の問題

 法内残業分の残業代を支給する義務が使用者にあるかどうかは、労働契約の解釈の問題であり、就業規則や個別合意に基づく残業代請求が認められるかどうかが検討されることになります。したがって、法内残業については、就業規則や個別合意で明確に定めることにより、残業代を支給しない扱いにすることもできることになります。

 言い換えれば、法内残業の賃金をどう扱うかは各社の労働契約の内容に委ねられており、割増をしない通常賃金を支払う、通常より低い額を支払う、支払わないといった選択肢は、いずれも合意の内容次第で採り得ます。ただし、その扱いを有効に主張するには、後述のとおり明確な定めが必要です。

03別段の定めがない場合は通常の賃金を支払う

 もっとも、労働契約は労働者の労務提供と使用者の賃金支払に基礎を置く有償双務契約であり、労働と賃金の対価関係は労働契約の本質的部分を構成しています。判例も、労働契約の合理的解釈として、労基法上の労働時間に該当すれば通常は労働契約上の賃金支払の対象となる時間としているものと解するのが相当である、としています(大星ビル管理事件・最高裁平成14年2月28日第一小法廷判決)。

 したがって、法内残業時間の賃金額について何の定めもないからといって、直ちに賃金を支払わなくてよいことにはなりません。明示の合意がない場合は、割増をしない通常の労働時間の賃金額を支払う旨の黙示の合意があるものと解釈して賃金額を計算すべきことになるのが通常です。行政解釈でも、法定労働時間内である限り所定労働時間外の1時間については、別段の定めがない場合には原則として通常の労働時間の賃金を支払わなければならず、労働協約・就業規則等によってその1時間に対し別に定められた賃金額がある場合にはその金額で差し支えない、とされています(昭和23年11月4日基発第1592号)。

よくある誤解

誤解 「法内残業には割増義務がないから、就業規則に何も書いていなくても賃金を払わなくてよい」
正しい理解 割増義務がないことと、賃金を一切払わなくてよいことは別です。別段の定めがなければ、通常の労働時間の賃金(割増なし)を支払う黙示の合意があると解されます。不支給や低額にしたい場合は、その旨を明確に合意しておく必要があります。

04不支給・低額とする場合の実務対応

 法内残業時間の残業代を不支給にしたり、通常の労働時間の賃金よりも低い金額にしたりする場合には、明確にその旨を合意するなどして、労働契約の内容としておくべきです。就業規則・賃金規程・雇用契約書のいずれかに、法内残業の賃金の取り扱いを具体的に定めておくことが、後の紛争を防ぐうえで重要です。

 定めが曖昧なまま運用していると、退職者から「法内残業分の賃金が未払いである」と主張され、通常賃金相当額を請求されるリスクがあります。自社の就業規則・賃金規程に法内残業の取り扱いが明記されているかを確認し、必要に応じて会社側・使用者側専門の弁護士または社会保険労務士に整備を相談することをお勧めします。

05よくある質問(FAQ)

Q. 法内残業には割増賃金(25%)を支払う必要がありますか。

必要ありません。法内残業は1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えないため、労基法37条の割増賃金の対象外です。36協定の締結・届出も不要です。ただし賃金そのものの支払いが不要になるわけではありません。

Q. 就業規則に何も定めがない場合、法内残業分の賃金はどうなりますか。

別段の定めがなければ、割増をしない通常の労働時間の賃金を支払う旨の黙示の合意があると解釈され、通常賃金相当額の支払義務が生じるのが通常です(昭和23年11月4日基発第1592号)。支払わなくてよいわけではありません。

Q. 法内残業分を不支給にすることは本当にできますか。

労働契約の解釈の問題であり、就業規則や個別合意で明確に不支給と定めれば可能とされています。ただし定めが曖昧だと通常賃金の支払義務があると判断されやすいため、明確に合意し労働契約の内容としておくことが必要です。

Q. 退職者から法内残業分の賃金を請求されました。どう対応すればよいですか。

まず就業規則・賃金規程・雇用契約書に法内残業の取り扱いの定めがあるかを確認します。定めの内容と実際の運用を踏まえ、通常賃金相当額の支払義務があるかを検討する必要がありますので、会社側専門の弁護士に相談することをお勧めします。

経営上のポイント 所定7時間の事業場における8時間までの法内残業は、労基法37条の規制外であり、25%の割増賃金を支払う義務はありません。法内残業分の賃金を支給するかどうかは労働契約の解釈の問題で、就業規則や個別合意で明確に定めれば不支給とすることも可能です。ただし、割増義務がないことと賃金を一切払わなくてよいことは別問題です。別段の定めがなければ、通常の労働時間の賃金を支払う黙示の合意があると解されるため(大星ビル管理事件・昭和23年11月4日基発第1592号)、定めが曖昧なまま運用すると退職者から通常賃金相当額を請求されるおそれがあります。不支給や低額とするなら、その旨を就業規則・賃金規程・雇用契約書に明確に定めておくことが不可欠です。時間外労働時間の判定方法とあわせて、賃金規程の整備について会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。法内残業の賃金の取り扱いや賃金規程の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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