この記事の結論
1

労基法の基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分が無効となり労基法の基準による

根拠は労基法13条です。

2

除外賃金に当たらない手当があるのに「基本給のみ算定基礎」と合意しても、その合意は無効になる

当該手当も残業代(割増賃金)算定の基礎賃金に加える必要があります。

 労働契約書での算定基礎合意の効力とは、労働契約書で残業代(割増賃金)算定の基礎賃金を「基本給のみ」とする旨を労使が合意した場合に、その合意が労基法との関係でどのような効力を有するかという問題をいい、労基法13条により、除外賃金に当たらない手当が存在する限り、そのような合意は無効となります。「労働契約書に『残業代は基本給のみを基礎に計算する』と明記して本人の署名ももらっているので、他の手当は含めなくてよいはずだ」というご相談をいただくことがあります。

 本ページでは、労働契約書での合意の効力について、会社側専門の弁護士が解説します。

01労基法13条の強行的効力

 結論:労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分については無効となり、無効となった部分は労基法で定める基準によることになります(労基法13条)。労働基準法は労働者保護のための最低基準を定めた強行法規であり、労使双方が合意したとしても、この最低基準を下回る合意は無効とされます。

02「基本給のみ算定基礎」という合意が無効になる理由

 結論:除外賃金に当たらない手当が存在するにもかかわらず、労働契約書で基本給のみを残業代(割増賃金)算定の基礎賃金とする旨定めて合意したとしても当該合意は無効となり、基本給以外の除外賃金に当たらない手当についても残業代(割増賃金)算定の基礎賃金に加える必要があることになります。労基法37条5項・労基則21条が定める算定基礎のルールは労働者保護のための強行規定であり、労使間の個別合意によって不利な内容に変更することはできません。

03実務上の注意点

 結論:会社としては、労働契約書に「基本給のみを算定基礎とする」旨の条項を設けたとしても、法的な効力は生じないことを理解した上で、自社が支給している各手当が除外賃金に該当するかどうかを個別に検証する必要があります。本人の署名があることは、この強行法規性を覆す事情にはなりません。

 残業代算定基礎に関する労働契約書の条項の見直し・各種手当の除外賃金該当性の検証については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。会社側専門の弁護士として、会社側の立場から実務的なアドバイスを提供しています。

労働契約書の条項の比較|適切な対応/NGな対応

○ 適切な対応 ✕ NGな対応(未払いのリスク)
各手当の除外賃金該当性を個別に検証する 契約書の条項があれば効力が生じると誤解する
労基法の強行法規性を前提に契約書を設計する 本人の署名があれば合意が有効と考える
契約書の条項に不安があれば専門家に相談する 既存のひな形をそのまま使い続ける

04よくある質問(FAQ)

Q. 本人が納得して署名した労働契約書でも、無効になるのですか。

はい。労働基準法は労働者保護のための強行法規であり、本人の同意があっても、労基法の基準を下回る合意は労基法13条により無効となります。当事者の合意の有無にかかわらず、法定の基準が適用されます。

Q. 労働契約書に「基本給のみ」と書いてしまった場合、直ちに書き換える必要がありますか。

条項が無効であっても直ちに他の法的リスクが生じるわけではありませんが、実際の給与計算が誤った基礎で行われていれば未払い残業代のリスクがあります。契約書の見直しと合わせて、給与計算の実態を確認することをお勧めします。

Q. 他にも労基法の強行法規性が問題になる条項はありますか。

はい。最低賃金を下回る賃金の合意、法定の割増率を下回る割増賃金の合意、法定休日を与えない旨の合意等、労基法の基準を下回るあらゆる合意が同様に無効となります。労働契約書・就業規則の全体的な点検をお勧めします。

経営上のポイント 労基法の基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分が無効となり、労基法の基準によります(労基法13条)。除外賃金に当たらない手当があるのに「基本給のみ算定基礎」と合意しても、その合意は無効であり、当該手当も算定基礎に加える必要があります。賃金規程に定めても除外賃金以外の手当は含まれる理由とあわせて、労働契約書・給与計算の点検について会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働契約書の条項設計・給与計算体制の点検でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月11日


Return to Top ▲Return to Top ▲