外回り営業の社員が午前中は社内で内勤をこなし、午後から顧客先を回るというケースは、多くの企業で日常的に見られます。このように1日の中で事業場内労働と事業場外労働が混在する場合、労働時間の算定はどのように行うべきでしょうか。ルールを正確に理解しておかないと、残業代の計算誤りや労働基準監督署の是正指導につながるリスクがあります。

このページでは、事業場外・事業場内労働が混在する場合の労働時間算定について、労働問題を専門とする会社側弁護士が詳しく解説します。

混在日における算定の基本ルール

労働基準法第38条の2に定める事業場外みなし労働時間制は、事業場外で業務に従事し、かつ労働時間の算定が困難な場合に適用されます。重要なのは、この制度が適用されるのは「事業場外で業務に従事した部分のみ」であるという点です。

1日の中で事業場内労働と事業場外労働が混在している場合、労働時間の算定は次のように行います。

  • 事業場外で業務に従事した部分については、みなし労働時間制により算定した時間を使用する
  • 事業場内で業務に従事した部分については、タイムカードや入退館記録などにより実労働時間を把握する
  • その日の総労働時間は、両者を合計した時間となる

この合計時間が法定労働時間(1日8時間)を超えた場合、超過した時間分について時間外割増賃金(25%以上)の支払い義務が生じます。

具体的な計算例で理解する

所定労働時間が1日8時間(9:00〜18:00、休憩1時間)の会社を例に、具体的なパターンで考えてみましょう。

ケース1:時間外労働が発生しない例

ある社員が午前中(9:00〜12:00)は社内で3時間勤務し、午後から外出して事業場外みなし労働時間制の対象業務を行い、そのみなし時間が5時間に設定されているとします。

この日の総労働時間は、事業場内の実労働時間3時間+事業場外のみなし時間5時間=8時間となります。法定労働時間の8時間以内に収まるため、時間外割増賃金は発生しません。

ケース2:時間外労働が発生する例

事業場内での実労働時間が4時間で、事業場外のみなし時間が7時間の場合を考えます。合計は11時間となり、法定労働時間の8時間を3時間超えます。この3時間分について時間外割増賃金の支払いが必要です。

ケース3:みなし時間自体が所定時間を超える例

労使協定または通常必要とされる時間として設定されたみなし時間が所定労働時間(8時間)を超えている場合(例:みなし時間9時間)は、事業場外の部分だけで1時間の時間外労働が発生します。さらにこの9時間に事業場内の実労働時間(例:3時間)が加わると合計12時間となり、4時間分の時間外割増賃金が必要になります。

事業場内労働時間の把握方法

事業場外みなし労働時間制を適用していても、事業場内で労働した時間については実態どおりに把握・管理することが求められます。使用者には労働時間を適切に管理する義務(労働時間の把握義務)があり、厚生労働省のガイドラインでも事業場内での実労働時間の記録が必要とされています。

具体的な把握方法としては、タイムカードや打刻システム、入退館記録、PCのログオン・ログオフ記録などが一般的です。外出・帰社の時刻を日報や業務報告書に記録させる運用も有効ですが、自己申告制のみでは正確性が担保されにくいため、客観的な記録との組み合わせが望ましいといえます。

外出後に帰社して残業した場合の取り扱い

外出から戻って事業場内でさらに残業した場合、その時間は事業場内の実労働時間として別途計測します。事業場外みなし時間と合算した総労働時間が法定労働時間を超えれば、超過分について時間外割増賃金が必要です。

たとえば、外出前に事業場内で2時間勤務し、事業場外みなし時間が5時間で、帰社後に2時間残業した場合、総労働時間は2+5+2=9時間となり、1時間分の時間外割増賃金が発生します。このように混在するパターンが複雑になっても、算定の基本原則(事業場外はみなし時間、事業場内は実労働時間、両者の合計で時間外を判断)は変わりません。

みなし時間の設定を適切に行うことの重要性

事業場外みなし労働時間制を運用するうえで、みなし時間の設定が適切かどうかは非常に重要です。実態として事業場外で長時間労働が行われているにもかかわらず、みなし時間を所定労働時間(8時間)のままにしておくと、実際の労働時間との乖離が生じ、後日の紛争(残業代請求訴訟など)において会社が不利な立場に置かれるリスクがあります。

みなし時間が「通常必要とされる時間」を下回ると判断された場合、裁判所は実態に即した労働時間をもとに未払い残業代を算定することがあります。実務上は、業務の種類・内容・移動距離・平均的な業務終了時刻などを踏まえて適切なみなし時間を設定し、必要に応じて労使協定を締結することが求められます。

よくある質問

Q.テレワーク(在宅勤務)の日に一部外出した場合、事業場外みなし時間制は適用されますか?

テレワーク中は自宅が「事業場」として機能するため、自宅での勤務時間は通常どおり実労働時間として把握します。外出した時間帯が事業場外みなし時間制の要件(使用者の具体的な指揮監督が及ばない状態での業務)を満たすかどうかは個別に判断が必要です。テレワーク勤務中はPCログや業務報告で時間管理が可能な場合が多く、みなし時間制の適用が認められないケースもあります。

Q.事業場外みなし時間制の適用対象者が、一部の日だけ終日外勤になった場合はどうなりますか?

その日について事業場内労働がなければ、事業場外のみなし時間制のみで労働時間を算定します。混在計算(事業場内の実労働時間+事業場外のみなし時間)が必要なのは、1日の中で両方の状態が生じた日に限られます。

Q.みなし時間が法定労働時間(8時間)ちょうどに設定されている場合、残業代は一切発生しませんか?

事業場外のみなし時間が8時間でも、その日に事業場内で労働した時間がある場合は、みなし8時間+事業場内の実労働時間が総労働時間となり、8時間を超えた部分について残業代が発生します。「みなし8時間だから残業代ゼロ」という認識は誤りです。

SUPERVISOR

弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

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