フレックスタイム制の就業規則規定例・労使協定例【会社側弁護士が解説】
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就業規則では「始業・終業時刻の両方」を労働者に委ねる旨を明記することが必要 どちらか一方だけを委ねる規定や「何時でもよいが8時間は働くこと」という定め方は認められない。始業・終業の両方の決定を従業員に委ねる旨の条文が必要 |
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労使協定には対象範囲・清算期間・総労働時間・標準労働時間・コアとフレキシブルの時間帯を記載 フレックスタイム制の労使協定の必要記載事項は労働基準法で定められている。時間外・不足分の取扱い、休日労働の扱い、有効期間なども明記しておくことが実務上重要 |
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清算期間が1か月を超える場合は労使協定の届出が必要 清算期間を1か月超(最長3か月)に設定する場合は、労使協定を所轄の労働基準監督署に届出する義務がある(労基法32条の3第4項)。届出漏れに注意が必要 |
01就業規則の規定例
フレックスタイム制を導入する場合、就業規則に、始業・終業時刻の両方を労働者の決定に委ねる旨を規定することが必要です。
始業・終業時刻のどちらか一方だけを委ねるという規定では足りません。また、「出勤時間は何時でも良いが1日8時間は働くよう命じること」については、終業時刻の選択を労働者に委ねていないことになるため認められません。ただし、1日ごとに時間管理をし、割増賃金も法律どおり支払っている場合は、フレックスタイム制自体は認められませんが、労基法上は適法な扱いとして認められます。
【就業規則例】
第○条 労使協定によりフレックスタイム制の対象となる従業員については、第○条(始業・終業時刻)の定めにかかわらず、始業・終業時刻を労使協定で定める始業、終業の時間帯の範囲内において従業員が自由に決定できるものとする。
この条文では、通常の始業・終業時刻の定めの例外として、フレックスタイム制の対象者については労使協定で定める時間帯の範囲内で自由に始業・終業時刻を決定できる旨を明示しています。就業規則の既存の始業・終業時刻に関する条項との整合性に注意してください。
02労使協定の規定例
労使協定には、対象労働者の範囲・清算期間・総労働時間・標準労働時間・コアタイムとフレキシブルタイムの時間帯のほか、時間外・不足分の取扱い、休日労働の扱い、有効期間などを定めます。以下に具体的な規定例を示します。
【労使協定例】
株式会社○○と株式会社○○従業員代表○○○○は、フレックスタイム制について次のとおり協定する。
(フレックスタイム制の適用従業員)
第1条 フレックスタイム制は、○○課を除く全従業員に適用する。
(清算期間)
第2条 清算期間は1か月、起算日は毎月1日とする。
(清算期間中における総労働時間)
第3条 清算期間における総労働時間は、1日7時間に、当該清算期間における所定労働日数を乗じて得られた時間数とする。
(1日の標準労働時間)
第4条 1日の標準労働時間は、7時間とする。
(コアタイム)
第5条 コアタイムは、午前10時から午後3時まで(正午は午後1時から休憩時間)とする。
(フレキシブルタイム)
第6条 始業時刻につき労働者の自主的決定に委ねる時間帯は、午前8時から午前10時まで、終業時刻につき労働者の自主的決定に委ねる時間帯は、午後4時から午後8時までとする。
(超過時間の取扱い)
第7条 清算期間中の実労働時間が所定労働時間を超過した場合、使用者は、超過した時間に対して給与規程第○条の割増賃金を支給する。
(不足時間の取扱い)
第8条 清算期間中の実労働時間が所定労働時間より不足した場合は、不足した時間を次の清算期間の法定労働時間の範囲内で清算する。
(休日労働)
第9条 所属長の許可を得た上で休日に労働した場合は、当該労働時間を第3条の総労働時間から除外し、給与規程第○条の割増賃金を支給する。
(有効期間)
第10条 本協定の有効期限は、○○○○年○月○日から1年間とする。ただし、有効期間満了の1か月前までに使用者、労働者代表のいずれからも申し出が無い場合は、さらに1年間の有効期間を延長するものとする。
○○○○年○月○日
株式会社○○ 代表取締役社長 ○○○○ 印
株式会社○○従業員代表 ○○○○ 印
労使協定は、従業員の過半数を代表する労働組合(組合がない場合は労働者の過半数代表者)との間で締結する必要があります。清算期間を1か月以内に設定する場合は労基署への届出は不要ですが、1か月を超える場合は届出が必要です(労基法32条の3第4項)。
03規定作成上の注意点
フレキシブルタイムの幅は十分に確保する
フレキシブルタイムが極端に短い場合、「労働者が始業・終業時刻を委ねられている」とは評価されないことがあります(昭和63年1月1日基発1号等)。例えば、フレキシブルタイムを「午前9時から午前9時30分」のような短い幅に設定すると、実質的に時刻が固定されているのと変わらないと判断される可能性があります。実態として始業・終業時刻の選択が可能な十分な幅を設けてください。
不足時間の処理方法を明確に定める
清算期間中に実労働時間が総労働時間に不足した場合の処理方法を、労使協定に明記しておくことが重要です。次の清算期間に繰り越す方法や、欠勤として賃金を控除する方法などがありますが、いずれの方法によるかを事前に明確にしておかないとトラブルの原因になることがあります。上記の規定例(第8条)では次清算期間への繰越し方式を採用しています。
既存の就業規則との整合性を確認する
フレックスタイム制の規定を追加する際は、既存の就業規則の始業・終業時刻に関する条項、遅刻・早退・欠勤に関する規定、割増賃金に関する規定などとの整合性を確認することが重要です。矛盾や曖昧さが残ると、後日のトラブルにつながる可能性があります。就業規則の全体を見渡した上で整合性を取ることをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。フレックスタイム制の導入・就業規則・労使協定の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 就業規則でコアタイムの時間帯を定めなければなりませんか。
A. コアタイムを設けること自体は任意です。完全フレックスタイム制(コアタイムなし)も法律上は許容されています。ただし、コアタイムを設ける場合は、労使協定にその開始・終了時刻を定めなければなりません(労基法32条の3第1項5号)。就業規則への記載は通常、労使協定の内容を参照する形で対応します。
Q2. 労使協定の有効期間が切れた場合はどうなりますか。
A. 労使協定の有効期間が満了した後もフレックスタイム制を継続する場合は、協定を更新または再締結する必要があります。有効期間が切れた状態でフレックスタイム制を運用した場合、適法性に疑義が生じ、時間外労働の未払い問題につながるリスクがありますので、有効期間の管理を徹底することが重要です。自動更新条項(上記第10条参照)を設けておくことも一つの対策です。
Q3. フレックスタイム制を廃止する場合、どのような手続きが必要ですか。
A. フレックスタイム制を廃止する場合は、就業規則の改訂と労使協定の終了手続きが必要です。就業規則の不利益変更(始業・終業時刻が固定される等)にあたる場合は、労働者への合理的な説明と同意取得など慎重な対応が求められます。廃止の手続きや時期については、事前に弁護士や社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
Q4. フレックスタイム制の就業規則・労使協定は自社で作成できますか。
A. 参考例を基に自社で作成することは可能ですが、自社の業務内容・人員構成・既存の就業規則との整合性などを踏まえた個別の検討が必要です。特に時間外労働の計算方法や不足時間の処理など、誤った規定を設けると未払い残業代のリスクが生じる可能性があります。導入にあたっては、会社側の労働問題を専門とする弁護士や社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
最終更新日:2026年5月26日
フレックスタイム制の就業規則規定例・労使協定例を会社側弁護士が解説。就業規則の記載要件、労使協定の必要記載事項(対象範囲・清算期間・総労働時間・コア・フレキシブル時間帯等)、および作成上の注意点を実務に即した内容で記載。東京・全国対応。