労働問題643 1週間単位の変形労働時間制とはどういうものですか?
1週間単位の変形労働時間制(労基法32条の5)は、小売業等接客を伴う30人未満の限定された事業場についてのみ認められている変形労働時間制です。具体的には、「日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる厚生労働省令で定める事業であって、常時使用する労働者の数が厚生労働省令で定める数未満のもの」とされています。
1.対象事業
小売業、旅館・料理店・飲食店の事業で、常時30人未満の労働者を使用する事業場であること。
2.労使協定
1週間単位の変形労働時間制を導入する場合には、労使協定を締結する必要があります。
労使協定は、様式第5号に従って作成し、所轄労働基準監督署長に届け出ます(労規則12条の5第4項)。
また、労使協定では、1週間の所定労働時間を40時間以内と定める必要があります。特例で週法定労働時間が44時間とされている事業であっても、1週間単位の変形労働時間制を導入する場合には、週40時間の枠内で定めなければなりません。
なお、労使協定について、有効期限を定める必要はありません(平成6年3月31日基発181号)。
3.所定労働時間の特定
当該1週間が開始される前までに、1週間の各日の所定労働時間を書面で通知しなければなりません。
ただし、緊急でやむを得ない事由がある場合については、予め通知した所定労働時間を書面による通知にて変更することができます。その際の書面による変更通知は、変更しようとする日の前日までにしなければなりません(労規則12条の5第3項)。ここでいう緊急でやむを得ない事由がある場合とは、使用者の主観的なものではなく、台風、豪雨等の急変等客観的事実により当初想定した業務の繁閑に大幅な変更が生じた場合を意味します(昭和63年1月1日基発1号)。
4.1日の所定労働時間の上限
1日の所定労働時間の上限は10時間とされています(労基法32条の5第1項)。
5.就業規則・労使協定
1週間単位の変形労働時間制は、労使協定を締結するのみではなく、就業規則にも、1週間単位の変形労働時間制を採用することを規定する必要があります(従業員数が10人未満の場合は就業規則に準ずるもの)。
6.留意点
1週間の各日の労働時間を定めるにあたっては、使用者は、労働者の意思を尊重するよう努めなければならないとされています(労規則12条の5第5項)。
通達では、「使用者は、1週間単位の非定型的変形労働時間制の下で労働者を労働させる場合に、1週間の各日各人の労働時間を定めるにあたっては、事前に労働者の都合を聴く等労働者の意思を尊重するように努めなければならないものであり、その旨十分指導すること」としています(昭和63年1月1日基発1号)。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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