フレックスタイム制の時間外労働の計算方法と注意点【会社側弁護士が解説】
- フレックスタイム制の時間外労働は、清算期間の実労働時間が法定労働時間の総枠(40時間×暦日数÷7日)を超えた部分として計算する
- 清算期間末日が月の途中にある場合には例外的な計算方法が認められており、要件を満たす場合に適用できる
- 残業代の計算誤りが未払い賃金請求につながるリスクがあるため、制度ごとの計算ルールを正確に把握することが重要
1フレックスタイム制における時間外労働の定義
フレックスタイム制では、通常の労働時間制度とは異なり、1日・1週単位での時間外労働の概念が適用されません。フレックスタイム制における時間外労働は、清算期間の実労働時間のうち、法定労働時間の総枠を超えた部分として判断します。
法定労働時間の総枠とは、清算期間中に労働者が法律上働ける上限時間であり、次の式で求めます。
法定労働時間の総枠 = 40時間 × 清算期間の暦日数 ÷ 7日
たとえば清算期間が1か月(暦日数31日)の場合、法定労働時間の総枠は約177.1時間(40×31÷7)となります。この総枠を超えた実労働時間の部分が時間外労働となり、割増賃金(25%以上)の支払いが必要です。
2基本的な時間外労働時間数の計算方法
基本的な計算式は次のとおりです。
時間外労働時間数 = 清算期間の実労働時間 -(40時間 × 清算期間の暦日数 ÷ 7日)
計算上の問題が生じるケース
上記の計算式をそのまま適用した場合、清算期間の暦日数が7で割り切れない場合(例:31日や30日の月)に問題が生じることがあります。
例えば、1日(月曜日)始まりの31日の月の場合、第1週〜第4週(1日〜28日)は暦日数28日で7で割り切れるため、法定労働時間の総枠は40×28÷7=160時間(4週×40時間)となり問題ありません。しかし残りの第5週(29日〜31日の3日間)は、40×3÷7≒17.14時間となり、1日あたりの法定労働時間は約5.71時間という計算になります。これは労基法32条が定める1日8時間の規制と整合しません。
このような不整合を避けるために、一定の要件を満たす場合には例外的な計算方法が認められています。
3例外的な計算方法(清算期間1か月・週休2日以上の場合)
適用要件
以下の4つの要件をすべて満たす場合に、例外的な計算方法を使用できます。
- 清算期間を1か月とするフレックスタイム制の労使協定が締結されていること
- 清算期間を通じて毎週必ず2日以上の休日が付与されていること
- 特定期間(当該清算期間の29日目を起算日とする1週間)における実際の労働日ごとの労働時間の和が週の法定労働時間(40時間)を超えないこと
- 清算期間における労働日ごとの労働時間がおおむね一定であること
例外的な計算方法
上記4要件を満たす場合、清算期間を平均した1週間あたりの労働時間を次の式で計算できます。
清算期間を平均した1週間あたりの労働時間
=(最初の4週間の労働時間 + 特定期間の労働時間)÷ 5
この計算によって求めた1週間あたりの平均労働時間が法定労働時間(40時間)以内であれば、清算期間の実労働時間が法定労働時間の総枠をわずかに超えていても、時間外労働とは扱われません。
4清算期間が1か月を超える場合の取扱い
令和元年4月の労基法改正により、フレックスタイム制の清算期間を最長3か月に延長することが可能になりました。清算期間が1か月を超える場合は、時間外労働の計算に追加の規制が適用されます。
月次での割増賃金支払い義務
清算期間が2か月または3か月の場合、各月において週平均50時間を超えた労働時間については、清算期間の末日を待たず、当該月の賃金支払日に割増賃金を支払う義務があります(労基法32条の3第2項)。
つまり、清算期間全体での精算のほか、月次でのチェックも必要となります。毎月の労働時間を把握し、週平均50時間超の部分については即時に割増賃金を計算・支払う体制を整えておく必要があります。
5実務上の注意点
(1)労働時間の正確な記録
フレックスタイム制であっても、使用者は各労働者の労働時間を正確に記録・管理する義務があります。タイムカードや勤怠管理システムを活用し、清算期間の実労働時間を正確に把握してください。
(2)36協定の締結・届出
フレックスタイム制における時間外労働にも36協定(時間外・休日労働に関する協定)の締結・届出が必要です。協定の上限時間の範囲内で時間外労働を管理してください。
(3)割増賃金の計算誤りへの対応
フレックスタイム制における時間外労働の計算は複雑であり、給与計算ソフトの設定ミスや計算式の理解不足から残業代の未払いが生じるケースがあります。定期的な確認・見直しを行い、問題があれば速やかに是正することが重要です。未払い残業代が累積すると、労働者からの請求リスク(時効は3年)が高まります。
(4)弁護士への相談
フレックスタイム制の時間外労働計算や残業代に関するトラブルが生じた場合、または制度の適法性に不安がある場合は、使用者側専門の弁護士に相談することをお勧めします。早期に対応することで、リスクの最小化が図れます。
|
監修者 弁護士 藤田 進太郎 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 使用者側専門の労働問題弁護士として、企業の労務管理に関するあらゆる問題を取り扱っています。経営者・人事担当者の方々が安心して経営に専念できるよう、問題社員対応、残業代請求対応、解雇・退職勧奨、ハラスメント対応など、企業側の立場から迅速・的確にサポートいたします。初回相談は原則として無料で対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。 |
Q&Aよくある質問
Q. フレックスタイム制の時間外労働はどのように計算しますか?
A. 清算期間の実労働時間から法定労働時間の総枠(40時間×清算期間の暦日数÷7日)を差し引いた時間が時間外労働となります。この時間に対して割増賃金(25%以上)の支払いが必要です。
Q. 例外的な計算方法はどのような場合に使えますか?
A. 清算期間が1か月で、毎週2日以上の休日が付与され、特定期間(29日目起算の1週間)の実労働時間が40時間を超えず、かつ各日の労働時間がおおむね一定である場合に適用できます。4要件をすべて満たす必要があります。
Q. 清算期間が3か月の場合、割増賃金の支払いはいつですか?
A. 清算期間が1か月を超える場合、各月において週平均50時間を超えた部分については当該月の賃金支払日に割増賃金を支払う必要があります(労基法32条の3第2項)。清算期間末での精算のほか、月次での管理も必要です。
Q. フレックスタイム制でも36協定は必要ですか?
A. 必要です。フレックスタイム制であっても、法定労働時間の総枠を超える時間外労働を行わせる場合には、36協定の締結・届出が必要です。協定の上限時間の範囲内で適切に管理してください。
関連ページ
最終更新日:2026年5月26日