専門業務型・企画業務型裁量労働制の違いを徹底比較【会社側弁護士が解説】
- 専門業務型は省令所定の特定業務(研究開発・ITシステム分析・デザインなど19業種)に限定され、労使協定+届出で導入できる
- 企画業務型は本社等の中枢部門での企画・立案・調査・分析業務が対象で、労使委員会の決議・届出+労働者の個人同意が必要
- どちらの制度も、みなし時間・健康確保措置・苦情処理の定めが必要であり、適法な運用が求められる
12つの裁量労働制の概要
裁量労働のみなし時間制には、専門業務型裁量労働制(労基法第38条の3)と企画業務型裁量労働制(労基法第38条の4)の2種類があります。どちらも、労使協定等で定めた時間を「みなし労働時間」として扱うことで、実際の労働時間を問わず一定時間労働したものとして賃金を計算する制度です。
両制度は、対象業務・導入要件・報告義務などで大きく異なります。自社に適合する制度を選択し、適法な手続きのもとで導入・運用することが重要です。
2対象業務の違い
【専門業務型】省令で限定列挙された19業務
専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要があり、業務遂行の手段および時間配分について具体的指示が困難な業務に適用されます。対象業務は省令(労基則第24条の2の2第2項)で以下のとおり限定されています。
- 新商品または新技術の研究開発等の業務
- 情報処理システムの分析または設計の業務
- 記事の取材または編集の業務
- デザイナーの業務
- プロデューサーまたはディレクターの業務
- コピーライターの業務
- システムコンサルタントの業務
- インテリアコーディネーターの業務
- ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
- 証券アナリストの業務
- 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発業務
- 大学教授・研究の業務
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築士の業務
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
【企画業務型】事業運営に関する企画・立案・調査・分析業務
企画業務型裁量労働制は、本社・本部等の事業運営の中枢部門において、企画・立案・調査・分析を行う業務が対象です。具体的には、経営戦略の立案、組織改革の調査・分析、マーケティングリサーチなどが該当し得ますが、単純な情報収集業務や実施・遂行のみを担う業務は対象となりません。
3実施要件の違い
【専門業務型】労使協定の締結・届出
専門業務型を導入するには、以下の事項を定めた労使協定の締結および所轄労働基準監督署への届出が必要です。
- 制度の対象とする業務
- 対象業務の遂行手段・時間配分等に関して、労働者に具体的な指示をしない旨
- 労働時間としてみなす時間(みなし時間)
- 対象労働者の労働時間の状況に応じた健康・福祉確保措置の具体的内容
- 対象労働者からの苦情処理のための措置の具体的内容
- 協定の有効期間(3年以内が望ましい)
- 上記④⑤に関し労働者ごとに講じた措置の記録を有効期間中および満了後3年間保存すること
【企画業務型】労使委員会の決議・届出+労働者の個人同意
企画業務型を導入するには、労使協定ではなく以下の手続きが必要です。
- 就業規則の整備
- 労使委員会委員の5分の4以上の多数決による決議および所轄労働基準監督署長への届出
- 労働者本人の個人同意(同意の撤回も可。不同意による不利益取扱い禁止)
- 委員会の議事録の作成・保存(3年間)
- 議事録の労働者への周知
4みなし時間・報告義務の違い
みなし時間の設定方法
専門業務型では労使協定で定めたみなし時間が適用されます。企画業務型では労使委員会の決議で定めたみなし時間が適用されます。いずれも、みなし時間が法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える場合は、36協定の締結・届出が必要であり、超過部分については割増賃金の支払いが必要です。
報告義務
専門業務型には、労働基準監督署への定期報告義務はありません。一方、企画業務型では、決議の日から6か月以内に1回、以降1年以内ごとに1回、対象労働者の労働時間の状況および健康・福祉確保措置の実施状況を所轄労働基準監督署長に報告する義務があります。
5比較表まとめ
| 項目 | 専門業務型(労基法38条の3) | 企画業務型(労基法38条の4) |
|---|---|---|
| 対象業務 | 省令所定の19業務(限定列挙) | 企業の中枢部門での企画・立案・調査・分析業務 |
| 導入手続き | 労使協定の締結+監督署届出 | 労使委員会の決議(5/4以上)+監督署届出+労働者の個人同意 |
| みなし時間 | 労使協定で定める | 労使委員会の決議で定める |
| 労働者の同意 | 不要 | 必要(個人同意) |
| 報告義務 | なし | あり(6か月以内に1回、以降1年ごとに1回) |
| 健康確保措置 | 協定で規定・実施必要 | 決議で規定・実施必要 |
6導入にあたっての注意点
(1)自社の業務が対象業務に該当するか慎重に確認する
特に専門業務型は対象業務が省令で限定されているため、「専門的に見える業務」であっても省令所定業務に該当しなければ適用できません。業務内容の実態と照らし合わせて慎重に判断してください。
(2)手続きの不備がないか確認する
協定・決議・届出・同意取得のいずれかが欠けると制度の効力が認められない可能性があります。特に企画業務型は労使委員会の設置・運営・個人同意の取得など複雑な手続きが必要なため、専門家のサポートを受けながら進めることをお勧めします。
(3)健康管理・苦情処理を実際に行う
協定・決議で健康確保措置・苦情処理を定めても、実際に実施しなければ意味がありません。制度の適法な運用のためには、定期的なモニタリングと実際の措置の実施が必要です。
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監修者 弁護士 藤田 進太郎 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 使用者側専門の労働問題弁護士として、企業の労務管理に関するあらゆる問題を取り扱っています。経営者・人事担当者の方々が安心して経営に専念できるよう、問題社員対応、残業代請求対応、解雇・退職勧奨、ハラスメント対応など、企業側の立場から迅速・的確にサポートいたします。初回相談は原則として無料で対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。 |
Q&Aよくある質問
Q. 専門業務型と企画業務型、どちらを選ぶべきですか?
A. 対象業務によって決まります。省令所定の専門業務(研究開発・ITシステム分析等)であれば専門業務型が適切です。本社等の中枢部門で経営企画・調査分析を行う社員には企画業務型を検討します。どちらに該当するかは業務の実態で判断する必要があります。
Q. 企画業務型は労働者が同意しなくても適用できますか?
A. できません。企画業務型裁量労働制は、労働者の個人同意が要件です。同意しなかった労働者には制度を適用できず、同意しなかったことを理由とした不利益取扱いも禁止されています。
Q. 裁量労働制の適用者に残業代は不要ですか?
A. みなし時間が法定労働時間を超える場合は割増賃金が必要です。また、深夜労働・休日労働に対する割増賃金は別途支払いが必要です。「裁量労働制=残業代なし」は誤りです。
Q. 企画業務型裁量労働制の報告義務の頻度は?
A. 決議の日から6か月以内に1回、以降は1年以内ごとに1回、対象労働者の労働時間の状況および健康・福祉確保措置の実施状況を所轄労働基準監督署長に報告する必要があります。
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最終更新日:2026年5月27日