労働問題650 専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制にはどのような違いがありますか?
目次
専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)と企画業務型裁量労働制(労基法38条の4)には、以下のような違いがあります。
1.対象業務
【専門業務型裁量労働制】
専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、その遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要性があり、業務遂行の手段および時間配分につき具体的指示をすることが困難な業務に適用されます。具体的な対象業務は次のとおりです。
① 新商品または新技術の研究開発等の業務
② 情報処理システムの分析または設計の業務
③ 記事の取材または編集の業務
④ デザイナーの業務
⑤ プロデューサーまたはディレクターの業務
⑥ コピーライターの業務
⑦ システムコンサルタントの業務
⑧ インテリアコーディネーターの業務
⑨ ゲーム用ソフトウエアの創作の業務
⑩ 証券アナリストの業務
⑪ 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発業務
⑫ 大学教授・研究の業務
⑬ 公認会計士の業務
⑭ 弁護士の業務
⑮ 建築士の業務
⑯ 不動産鑑定士の業務
⑰ 弁理士の業務
⑱ 税理士の業務
⑲ 中小企業診断士の業務
【企画業務型裁量労働制】
事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務
2.実施要件
【専門業務型裁量労働制】
① 就業規則の定め
② 労使協定の締結及び届出
労使協定で定める事項
(1) 制度の対象とする業務
(2) 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
(3) 労働時間としてみなす時間
(4) 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
(5) 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
(6) 協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましい。)
(7) 上記(4)及び(5)に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること
【企画業務型裁量労働制】
① 就業規則の定め
② 労使委員会委員の5分の4以上の多数による決議及び所轄労働基準監督署長への届出
③ 労働者本人の同意
④ 委員会の議事録の作成及び保存(3年間)
⑤ 議事録の周知
3.みなし時間
【専門業務型裁量労働制】
労使協定で定めたみなし時間
【企画業務型裁量労働制】
労使委員会の決議で定めたみなし時間
4.報告義務
【専門業務型裁量労働制】
なし
【企画業務型裁量労働制】
所轄労働基準監督署長への届出
当分の間は、対象労働者の労働時間の状況及び健康、福祉を確保する措置の実施状況について、決議の日から6カ月以内に1回、所轄労働基準監督署長へ報告する。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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