この記事の結論
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裁量労働制でも職務専念義務は免除されない。就業時間中の組合活動は原則として職務専念義務違反

裁量労働制は労働時間の把握・算定をみなしに委ねる制度であり、就業時間中の職務専念義務そのものを免除するものではありません。就業規則等に許容する定めがない限り、就業時間中の組合活動は職務専念義務違反として注意・懲戒処分の対象となり得ます。

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賃金カットは時間帯が特定できる場合に可能。不当労働行為に該当しないよう慎重に

組合活動の時間帯が明確に特定できる場合には賃金の控除が考えられますが、就業規則上の根拠が必要です。組合活動への対応は、不当労働行為(労組法7条)に該当しないよう慎重に行う必要があります。

 専門業務型裁量労働制(労働基準法38条の3)は、業務の遂行方法や時間配分を労働者の裁量に委ねることで、労使協定で定めた「みなし時間」を労働時間とみなす制度です。この制度の本質は、労働時間の量的な把握・算定をみなしに委ねる点にあり、勤務時間中の就労義務や職務専念義務そのものを免除するものではありません。したがって、裁量労働制の適用労働者であっても、使用者が設定した勤務時間帯においては、原則として職務に専念すべき義務を負います。

 組合活動は正当な範囲で保護されますが、就業時間中の組合活動は、就業規則・労働協約による許容や労使慣行、使用者の許諾がない限り、原則として正当な組合活動とは認められません。会社側専門の弁護士の立場から、裁量労働制の対象者が就業時間中に組合活動をした場合の懲戒・賃金カットの可否を、不当労働行為との関係も含めて解説します。

01裁量労働制と職務専念義務の関係

 裁量労働制は、業務の遂行方法や時間配分について使用者の具体的な指示を予定しない制度ですが、これは労働時間の量的な管理を免除するものにとどまり、労働者が勤務時間中に職務に専念すべき義務までも免除するものではありません。

 最高裁も、勤務時間中の職務専念義務について、職務上の注意力のすべてを職務の遂行に向け、職務にのみ従事しなければならない義務であると述べています(目黒電報電話局事件・最判昭和52年12月13日)。この考え方は裁量労働制の適用労働者にも及ぶものであり、就業規則等に就業時間中の組合活動を認める定めがない限り、就業時間中に組合活動を行うことは、原則として職務専念義務違反となり得ます。

02就業時間中の組合活動への注意・懲戒処分の可否

 裁量労働制が適用されている場合でも、次のような場合には、使用者は注意・指導を行うことができると考えられます。

注意・指導が可能と考えられる場合①労働契約・就業規則・労働協約において、就業時間中の組合活動を認める定めがない場合/②組合活動として行われている行為が、明らかに業務遂行と関係のない活動である場合/③組合活動を理由に業務への影響が生じている場合

 注意・指導に従わない場合には、就業規則の懲戒規定(職務専念義務違反・業務命令違反等)に基づき、戒告・けん責・減給等の懲戒処分を行うことが許容されると解されます。ただし、懲戒処分には就業規則上の根拠規定が必要であり、処分内容の相当性(比例原則)も求められます。いきなり重い処分を行うのではなく、口頭注意・書面警告といった段階的な指導を経たうえで処分を行うことが、後のトラブル回避に有効です。

経営者が見落としやすいポイント

組合活動への対応は、不当労働行為(労組法7条3号の支配・介入等)に該当しないよう、慎重を要します。就業規則・労働協約の定めや労使慣行、使用者の許諾によって就業時間中の組合活動が許容されている場合に、これを理由として不利益な取扱いや懲戒を行うと、かえって不当労働行為として問題になります。「組合活動そのものへの干渉」と「職務専念義務違反への対応」とを明確に区別して対応することが重要です。

03賃金カットの可否と要件

 組合活動が行われた時間帯が明確に特定できる場合には、その時間に対応する賃金を控除することが考えられます。賃金控除が認められるためには、一般に次の点が求められます。

賃金控除が認められるための要件
就業規則に賃金控除の根拠規定があること(賃金全額払いの原則(労基法24条)との関係を整理しておくこと)
組合活動を行っていた時間帯が特定できること(時間帯の明確化が必要)
ノーワーク・ノーペイの原則に基づく合理的な算定方法があること

 もっとも、裁量労働制では「みなし時間」単位での賃金支払いが原則であるため、一部の時間を組合活動に費やしたとしても、その時間分をそのままみなし時間から差し引くことには制度上難しい面があります。実務的には、賃金の一方的な控除にこだわるよりも、就業規則の懲戒規定に基づく対応(減給処分による場合は労基法91条の制限に注意)のほうが、法的に明確なことがあります。

04時間帯が不明確な場合の対処法

 組合活動が行われた時間帯が不明確な場合、賃金控除の算定根拠が曖昧になるため、一方的な控除は法的リスクを伴います。適切な対処法としては、労働組合に対して組合活動を行う時間帯を明確にするよう求めることが考えられます。組合活動の日時・内容を事前または事後に届け出る仕組みを設けることで、使用者は正確な時間の把握が可能になります。

 組合活動に関する届出の仕組みを就業規則や労使間の取決めに定めておくと、記録の明確化と賃金管理の両面で有効です。ただし、こうした仕組みの設計にあたっても、組合活動を萎縮させ、または干渉するものと評価されて不当労働行為に該当することのないよう、慎重な検討が必要です。

05会社側が整備すべき実務的対応

会社側が整備すべき実務的対応
就業規則における職務専念義務規定の明確化(裁量労働制対象者も含めて明文化する)
懲戒規定の整備(職務専念義務違反・業務命令違反に対する懲戒処分の種類・手続を定める)
記録の保持(組合活動が行われた日時・状況の客観的な記録を保存する)
段階的指導の実施と記録(口頭注意→書面警告→懲戒処分という段階的対応を記録する)
弁護士への事前確認(不当労働行為に該当しないよう、対応の法的妥当性を確認する)

06よくある質問(FAQ)

Q. 裁量労働制が適用されていれば、就業時間中に何をしても自由ですか。

いいえ。裁量労働制は労働時間の把握・算定をみなしに委ねる制度であり、就業時間中の職務専念義務を免除するものではありません。明らかに業務と無関係な活動(組合活動を含む)を就業時間中に行うことは、職務専念義務違反となり得ます。

Q. 就業時間中の組合活動を止めさせることはできますか。

原則として可能です。就業規則・労働協約に就業時間中の組合活動を認める定めがなく、労使慣行や使用者の許諾もない限り、使用者は組合活動を止めるよう求めることができ、従わない場合には懲戒処分も許容されると解されます。ただし、不当労働行為に該当しないよう慎重な対応が必要です。

Q. 組合活動の時間が特定できない場合、賃金カットはできますか。

時間帯が特定できない場合、賃金控除の算定が困難となり、一方的な控除は法的リスクを伴います。まず組合に活動時間帯の明示を求め、届出の仕組みの導入を検討することが実務上有効です。届出の仕組みの設計にあたっても、不当労働行為に該当しないよう注意が必要です。

Q. 裁量労働制の対象者に対して減給処分を行う際の上限はありますか。

あります。懲戒処分としての減給は、労基法91条により、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはなりません。この上限は裁量労働制の対象者にも適用されます。

経営上のポイント 裁量労働制の適用労働者も就業時間中は職務専念義務を負い(目黒電報電話局事件・最判昭和52年12月13日)、就業規則・労働協約の定めや労使慣行、使用者の許諾がない限り、就業時間中の組合活動は原則として職務専念義務違反として注意・懲戒処分の対象となり得ます。賃金カットは、組合活動の時間帯が特定できる場合に考えられますが、就業規則上の根拠が必要であり、みなし時間単位での支払いを原則とする裁量労働制では算定が難しい面もあります。対応にあたっては、組合活動そのものへの干渉と職務専念義務違反への対応とを明確に区別し、不当労働行為(労組法7条)に該当しないよう十分注意する必要があります。就業時間中の組合活動の正当性もあわせてご確認のうえ、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。裁量労働制の整備や組合対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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