労働問題670 専門業務型裁量労働制の適用労働者が遅刻・早退・欠勤した場合、使用者はどのような取り扱いができますか?
裁量労働のみなし時間制とは、労働遂行や労働時間の配分に関して裁量性が高く、労働の量よりも労働の質、つまり内容や成果に着目して報酬を支払われる労働者に関して、労使協定等で定めれば、実際の労働時間にかかわらず、それだけの時間労働したとみなす制度のことです。しかし、裁量労働制の適用労働者は、フレックスタイム制のフレキシブルタイムのように出退勤が自由というわけではなく、あくまで使用者の労働時間の管理・算定を免除したにすぎません。
裁量労働なので、使用者は具体的な仕事のやり方や働く時間について、大幅に労働者の判断に委ね、具体的な指示命令を行わないことにはなりますが、裁量労働従事者にも始業・終業時刻、所定労働時間は存在します。
裁量労働は、出勤・欠勤も自由で、時間中の私用外出や職場離脱も自由と考えられやすいですが、これは明らかな誤解であり、使用者は、服務規律が乱れることのないよう注意しなければなりません。
たとえば、裁量労働制の適用労働者が遅刻をした場合には、職場の秩序を乱したことを理由に注意し、それでも繰り返される場合には懲戒処分を検討していくことになります。ただし、労使協定で定めた時間は労働したものとみなされる以上、裁量労働の範囲であれば、賃金カットはできないのが通常です。
また、早退については、たとえば上司に早退する旨を告げる等一定の手続をせずに勝手に早退した場合には、手続違反に対して注意し、改善されない場合には懲戒処分を行うことができます。ただし、遅刻同様、賃金カットはできないのが通常です。
欠勤については、裁量労働制の適用労働者に自由欠勤をする権利はなく、当日は裁量労働に従事していないことから、みなし規定の適用の余地はなく、賃金カットをすることができます(完全月給制の場合はできません)。また、裁量労働制の適用労働者が所定の手続を踏まずに欠勤し、注意しても改善されない場合は、遅刻・早退のケースと同様、懲戒処分を検討していくことになります。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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