労働審判期日に欠席したらどうなる?会社経営者が知るべき手続の進行と重大リスク
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欠席しても手続は進み、相手方の主張と資料のみで審理が進むおそれがある 労働審判は、一方の当事者が欠席しても、そのために手続が止まるわけではありません。会社側が欠席すれば、申立人の主張と提出資料を中心に審理が進み、反論の機会を実質的に失うことになります。 |
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正当な理由のない不出頭には過料の制裁がある(労働審判法31条) 労働審判官の呼出しを受けた事件の関係人が正当な理由なく出頭しないときは、5万円以下の過料に処せられます。出頭が困難な場合は、放置せず、速やかに裁判所へ連絡することが必要です。 |
目次
労働審判手続では、労働審判官が労働審判手続の期日を定めて、事件の関係人を呼び出さなければならないとされています(労働審判法14条)。そして、呼出しを受けた事件の関係人が正当な理由なく出頭しないときは、5万円以下の過料に処せられます(同31条)。労働審判の期日は、単なる打合せの場ではなく、法律上の出頭が予定された手続です。
会社側専門の弁護士の立場から、期日を欠席した場合に手続がどう進むのか、そして会社側が負うリスクと対応策を解説します。
01労働審判期日への呼出しと出頭の意味
労働審判官は、労働審判手続の期日を定めて、事件の関係人を呼び出さなければなりません(労働審判法14条)。労働審判は、原則として3回以内の期日で審理を終結する手続であり(同15条2項)、期日において当事者が労働審判委員会に対し口頭で主張することが原則とされています(労働審判規則17条1項)。
この手続構造からすると、期日への出頭は、会社側が自らの主張を労働審判委員会に直接説明できる機会そのものです。書面だけでは伝わりにくい事実関係の経緯や、処分に至った判断の合理性を、委員会からの質問に答えながら説明できる場は、期日のほかにありません。とりわけ第1回期日は、争点および証拠の整理と、実施可能な証拠調べが行われる重要な期日です(労働審判規則21条1項)。
02一方当事者が欠席した場合、手続はどう進むか
労働審判手続は、一方の当事者が欠席したからといって、そのために当然に止まるわけではありません。労働審判委員会は、職権で事実の調査をし、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをすることができます(労働審判法17条1項)。したがって、欠席した当事者がいても、出頭した当事者の陳述や、それまでに提出された書面・証拠に基づいて、審理を進めることが可能です。
もっとも、労働審判委員会が、事案の性質や進行状況を踏まえ、期日を改めて指定することもあります。ただし、期日の変更は顕著な事由がある場合に限られるのが原則であり、労働審判員2名の日程調整も必要となるため、当事者の都合による安易な変更は認められません。欠席すれば次回に持ち越してもらえる、と期待するのは危険です。
03正当な理由のない不出頭と過料(労働審判法31条)
労働審判官の呼出しを受けた事件の関係人が、正当な理由がなく出頭しないときは、裁判所は、5万円以下の過料に処するとされています(労働審判法31条)。呼出しは「事件の関係人」に対して行われるため、当事者に限らず、呼出しを受けた者が対象となり得ます。
実務上、この過料が直ちに科されるとは限りませんが、法律上、不出頭が制裁の対象とされていること自体が、期日への出頭が手続上の義務として位置づけられていることを示しています。「都合が合わないので行かない」という対応が想定されていないということです。
04会社側が欠席した場合の具体的リスク
会社側が期日を欠席した場合、次のようなリスクが現実化します。
特に③は見落とされがちです。当事者は、やむを得ない事由がある場合を除き、第2回期日が終了するまでに主張および証拠書類の提出を終えなければなりません(労働審判規則27条)。第1回期日を欠席すると、限られた残りの期日で主張立証を組み立て直すことになり、負担は大きくなります。
経営者が見落としやすいポイント
「答弁書さえ出しておけば、期日に行かなくても主張は伝わる」という理解は誤りです。労働審判では期日での口頭のやり取りが重視され、委員会は、書面に書かれていない事情を質問によって確認します。その質問に答える者が誰もいなければ、会社側の言い分は書面の範囲でしか考慮されません。
05やむを得ない事情がある場合の対応
病気や事故など、真にやむを得ない事情で出頭が困難な場合には、放置せず、判明した時点で速やかに裁判所へ連絡することが重要です。期日の変更は顕著な事由がある場合に限られますが、事情を説明し、必要に応じて疎明資料を提出することで、期日変更が認められる余地があります。
また、代理人弁護士が選任されていれば、会社の担当者本人が出頭できない場合でも、代理人が期日に出頭して対応することができます。労働審判手続の代理人は、原則として弁護士でなければなりません(労働審判法4条1項)。代理人を選任しておくことは、日程上のリスクに対する備えとしても機能します。
06会社側が取るべき実務対応と予防策
労働審判の申立書が届いたら、まず第1回期日の日程を確認することが出発点です。第1回期日は、特別の事由がある場合を除き、申立てがされた日から40日以内の日に指定されます(労働審判規則13条)。準備期間は限られており、答弁書の作成、証拠の収集、出席者の日程確保を並行して進める必要があります。
出席者としては、事案の経緯を把握している担当者を確保しておくことが望まれます。労働審判委員会は、必要に応じて会社の代表者や従業員から直接事情を聴取することがあるためです。なお、期日に同席させたい担当者がいる場合、傍聴の許否は労働審判委員会の裁量による点にも留意が必要です。
いずれにせよ、期日を欠席するという選択肢は、会社側にとって取るべきものではありません。日程の確保が難しい場合こそ、早期に会社側専門の弁護士に相談し、代理人による対応を含めた体制を整えることが、結果的に会社の利益を守ることにつながります。
07よくある質問(FAQ)
Q. 会社が労働審判期日を欠席すると、手続は止まりますか。
止まりません。労働審判委員会は職権で事実の調査をすることができ(労働審判法17条1項)、出頭した当事者の陳述や提出済みの書面・証拠に基づいて審理を進めることが可能です。会社側が欠席すれば、申立人の主張を中心に審理が進むおそれがあります。
Q. 欠席すると、罰則はありますか。
労働審判官の呼出しを受けた事件の関係人が正当な理由なく出頭しないときは、裁判所は5万円以下の過料に処するとされています(労働審判法31条)。法律上、不出頭が制裁の対象とされている点に留意が必要です。
Q. どうしても出頭できない場合は、どうすればよいですか。
放置せず、判明した時点で速やかに裁判所へ連絡してください。期日の変更は顕著な事由がある場合に限られますが、事情を説明し、必要に応じて疎明資料を提出することになります。また、代理人弁護士を選任していれば、担当者本人が出頭できない場合でも代理人が対応できます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判の期日対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日