労働審判手続の分離・合併とは?会社経営者が押さえるべき判断基準と実務上の影響
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併合を命ずるときは、あらかじめ当事者の意見を聴かなければならない 複数の事件をまとめて審理するのが併合、別々に審理するのが分離です。労働審判委員会は、手続の併合を命ずるときは、あらかじめ当事者の意見を聴かなければなりません(労働審判規則23条)。会社側の考えを述べる機会は、この段階にあります。 |
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手続指揮上の判断であり、決定に不服を申し立てることはできない 分離・併合は、労働審判委員会による手続指揮上の判断であるため、当事者は、その判断に対して不服を申し立てることはできないと考えられます。決まった後に争うのではなく、意見を聴かれる段階での対応が重要です。 |
目次
労働審判における併合とは、複数の労働審判事件を一つの手続にまとめて審理することをいい、分離とは、まとめて審理していた事件を別々の手続に分けて審理することをいいます。労働審判委員会は、手続の併合を命ずるときは、あらかじめ当事者の意見を聴かなければならないとされています(労働審判規則23条)。
会社側専門の弁護士の立場から、分離・併合がどのような場面で問題となり、会社側がどう向き合うべきかを解説します。
01労働審判における分離・併合の基本
労働審判事件についても、複数の事件をどのような単位で審理するかという問題が生じます。労働審判事件に関しては、労働審判法29条1項により非訟事件手続法の規定が準用されており、手続の併合・分離は、この枠組みのもとで労働審判委員会が判断します。
労働審判は、原則3回以内の期日で審理を終結する迅速な手続です(労働審判法15条2項)。分離・併合の判断も、この迅速性の要請を踏まえて行われることになります。
02併合が行われる場面と、当事者の意見聴取(規則23条)
併合が検討される典型は、複数の労働者が同一の会社に対して、同じ争点について別々に労働審判を申し立てた場合です。たとえば、同じ就業規則の変更や、同じ賃金体系の運用を争点とする複数の申立てがある場合、共通の法律問題について別々に審理するよりも、まとめて審理するほうが効率的で、判断の統一も図られます。
ここで重要なのが、労働審判規則23条です。労働審判委員会は、手続の併合を命ずるときは、あらかじめ当事者の意見を聴かなければならないとされています。つまり、併合が検討される場合、会社側には、その当否について意見を述べる機会が制度上保障されています。この機会をどう活かすかが、会社側の実務対応の中心になります。
03分離が検討される場面
分離が検討されるのは、まとめて審理することがかえって審理を複雑にし、迅速な解決を妨げる場合です。たとえば、複数の労働者による申立てが併合されていても、各人の勤務実態、評価の経緯、退職に至る事情が大きく異なり、個別の事実認定が必要になる場合には、分離して審理するほうが適切なことがあります。
労働審判は3回以内で審理を終結する手続ですから、一つの手続に多数の争点を抱え込むと、期日内に審理を尽くせなくなります。その場合、事案の性質に照らして労働審判手続に適当でないとして、労働審判事件が終了させられる(24条終了)可能性も出てきます。分離は、これを避けて労働審判での解決を維持するための調整として機能する面もあります。
04誰が決めるのか、不服申立てはできるのか
分離・併合を決めるのは、労働審判委員会です。当事者が合意しても、それだけで手続の枠組みが決まるわけではありません。
そして、分離・併合は、審理をどのような単位で進めるかという、労働審判委員会による手続指揮上の判断です。そのため、当事者は、この判断に対して不服を申し立てることはできないと考えられます。申立ての趣旨・理由の変更の許否について不服申立てができないのと、同じ考え方です。
経営者が見落としやすいポイント
決まってしまってから争うことはできません。だからこそ、併合について意見を聴かれる場面(労働審判規則23条)が、会社側にとって実質的に唯一の働きかけの機会になります。「意見を聴かれたら、その場で適当に答えておく」のではなく、自社にとってどちらの枠組みが適切かをあらかじめ検討し、理由とともに述べられるよう準備しておくことが重要です。
05会社側が意識すべき視点
分離・併合は、単なる事務的な整理ではなく、会社側の主張の組み立て方に影響します。判断の軸となるのは、争点が共通か、個別かという点です。
争点が制度そのもの(就業規則の変更の合理性、賃金体系の適法性など)にある場合には、会社側の主張は共通の法律論が中心となり、まとめて審理されても対応しやすいといえます。むしろ、別々に審理されて判断が分かれるより、統一的な判断が示されるほうが、その後の労務管理の安定につながる場合もあります。
他方、争点が個々の労働者の勤務実態や指導の経緯にある場合には、個別事情の丁寧な立証が必要です。まとめて審理されると、個別の事情が十分に酌み取られないおそれもあります。どちらが自社にとって適切かは、事案の内容によって変わります。
06分離・併合を見据えた実務対応
複数の申立てを受けた場合、会社側としては、まず争点が共通する部分と、個別の事情に依存する部分とを切り分けて整理しておくことが出発点になります。この整理ができていれば、併合について意見を聴かれた際に、具体的な理由を示して自社の考えを述べることができます。
また、いずれの枠組みになっても対応できるよう、共通の法律論と、各人の個別事情の双方について、主張と証拠を準備しておくことが実務的です。労働審判は3回以内で終結する手続であり、枠組みが決まってから準備を始めたのでは間に合いません。複数の申立てが見込まれる段階で、会社側専門の弁護士に相談し、全体の方針を立てておくことをお勧めします。
07よくある質問(FAQ)
Q. 複数の労働者から申立てがあった場合、まとめて審理されますか。
労働審判委員会が判断します。同じ就業規則の変更など共通の争点がある場合には、併合してまとめて審理されることがあります。委員会は、手続の併合を命ずるときは、あらかじめ当事者の意見を聴かなければなりません(労働審判規則23条)。
Q. 分離・併合の判断に、会社側は不服を申し立てられますか。
できないと考えられます。分離・併合は、審理をどのような単位で進めるかという労働審判委員会の手続指揮上の判断だからです。だからこそ、併合について意見を聴かれる段階での対応が重要になります。
Q. 会社側としては、併合と分離のどちらが有利ですか。
事案によります。争点が就業規則の変更など制度そのものにある場合は、統一的な判断が示される併合が適することもあります。他方、各人の勤務実態や指導の経緯が争点なら、個別事情を丁寧に立証できる分離が適する場合があります。共通部分と個別部分を切り分けて検討することが出発点です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。複数の労働審判を申し立てられてお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日