この記事の結論
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調停・労働審判の実現を妨げる行為の排除などを命じる暫定的な措置

労働審判委員会は、調停又は労働審判のために特に必要と認めるときは、当事者の申立てにより、現状の変更や物の処分の禁止など、その内容の実現を妨げる行為の排除を命じることができます(労働審判法29条2項・民事調停法12条)。

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執行力はないが、従わない当事者には10万円以下の過料の制裁がある

この措置に執行力はありません。もっとも、正当な理由なく措置に従わない当事者には、10万円以下の過料の制裁が科されることがあります(労働審判法32条)。措置に対する不服申立てはできません。

 調停又は労働審判前の措置とは、労働審判委員会が、調停又は労働審判のために特に必要と認める場合に、当事者の申立てにより、相手方その他の事件関係人に対して、現状の変更や物の処分の禁止その他、調停又は労働審判の内容である事項の実現を不能にし、又は著しく困難にさせる行為の排除を命じることができる措置をいいます(労働審判法29条2項が準用する民事調停法12条)。手続の進行中に、解決の実効性が失われることを防ぐための暫定的な措置です。

 会社側専門の弁護士の立場から、この措置の内容、要件、制裁、そして不服申立ての可否について解説します。

01調停又は労働審判前の措置の内容

 労働審判委員会は、調停又は労働審判のために特に必要であると認める場合には、当事者の申立てにより、調停又は労働審判前の措置として、相手方その他の事件関係人に対し、現状の変更又は物の処分の禁止その他、調停又は労働審判の内容である事項の実現を不能にし又は著しく困難にさせる行為の排除を命じることができます。これは、手続が続いている間に、財産の処分などによって解決の実現が妨げられることを防ぐための措置です。

02措置の4つの要件

 この措置をとるためには、次の4つの要件を満たすことが必要と考えられています。

措置の要件
労働審判事件が係属中であること
調停又は労働審判のために特に必要であること
当事者から措置の申立てがあること
相手方その他の労働審判事件の関係人に対するものであること

 措置は職権では行われず、当事者の申立てが必要である点が特徴です。また、その対象は、相手方に限らず、その他の事件関係人に対しても命じることができます。

03執行力と過料の制裁

 調停又は労働審判前の措置には、執行力はありません。すなわち、この措置に基づいて直ちに強制執行をすることはできません。もっとも、正当な理由なくこの措置に従わない当事者に対しては、裁判所が10万円以下の過料の制裁を科すことができるとされています(労働審判法32条)。

 なお、この措置は、当事者および参加人以外の事件の関係人に対しても命じることができますが、手続に参加していない事件の関係人に対しては、過料の制裁を科すことはできないものと考えられます。過料の制裁は、あくまで手続の当事者を対象とするものだからです。

04不服申立ての可否

 調停又は労働審判前の措置に対しては、相手方その他の事件の関係人が不服を申し立てることはできないと考えられています。また、措置の申立てが却下された場合についても、これに対して不服を申し立てることはできないと考えられます。措置は、手続を円滑に進めるための暫定的・付随的な性質のものであるため、独立した不服申立ての対象とはされていません。

経営者が見落としやすいポイント

「執行力がないから従わなくてよい」と考えるのは危険です。措置に従わなければ10万円以下の過料が科され得るほか、手続における会社側の姿勢として不利に評価されるおそれもあります。措置を命じられた場合には、その趣旨を確認し、対応を検討することが重要です。

05会社側が押さえておくべき視点

 調停又は労働審判前の措置は、実務上、頻繁に用いられるものではありませんが、事案によっては、会社側が措置を命じられる立場にも、逆に措置を申し立てる立場にもなり得ます。措置を命じられた場合には、執行力がないとしても、過料のリスクや手続上の評価を踏まえて対応を検討する必要があります。他方、会社側の権利の実現が妨げられるおそれがある場合には、措置の申立てを検討する余地もあります。いずれの場面でも、措置の要件や効果を正しく理解したうえで、会社側専門の弁護士と相談しながら対応することが望ましいといえます。

06よくある質問(FAQ)

Q. 調停又は労働審判前の措置は、裁判所が職権で行うのですか。

職権では行われません。措置をとるには当事者からの申立てが必要です(要件の一つ)。労働審判委員会が、調停又は労働審判のために特に必要と認める場合に、申立てに基づいて命じることになります。

Q. 措置に従わないと、どうなりますか。

この措置に執行力はありませんが、正当な理由なく従わない当事者には、10万円以下の過料の制裁が科されることがあります(労働審判法32条)。手続に参加していない事件の関係人に対しては、過料を科すことはできないと考えられています。

Q. 措置に不服がある場合、争えますか。

措置に対して不服を申し立てることはできないと考えられています。また、措置の申立てが却下された場合についても、不服を申し立てることはできないと考えられます。

経営上のポイント 調停又は労働審判前の措置は、労働審判委員会が、調停又は労働審判のために特に必要と認めるときに、当事者の申立てにより、現状の変更や物の処分の禁止など、その内容の実現を妨げる行為の排除を命じる暫定的な措置です(労働審判法29条2項・民事調停法12条)。要件は、①事件の係属中、②特に必要、③当事者の申立て、④相手方その他の関係人に対するもの、の4つです。措置に執行力はありませんが、正当な理由なく従わない当事者には10万円以下の過料が科され得ます(同32条)。手続に参加していない関係人には過料を科せません。措置に対しても、申立ての却下に対しても、不服申立てはできないと考えられています。措置を命じられた場合・申し立てる場合のいずれも、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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