この記事の結論
1

申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨・理由を変更できる

労働審判では、申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨又は理由を変更することができます。ただし、変更により3回以内で審理を終結するのが困難なときは、変更が許可されないことがあります。

2

変更の許否に不服申立てはできず、訴訟移行時は変更の調書が訴状とみなされる

変更を許可するかどうかは労働審判委員会の手続指揮上の判断であり、不服申立てはできません。事件が訴訟に移行した場合には、変更が記載された調書が訴状とみなされます。

 労働審判手続では、申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨又は理由を変更することができます。手続の進行に伴い、新たな事実や証拠が明らかになった場合などに、請求の内容や理由を変更する場面があり得ます。もっとも、労働審判は原則3回以内で審理を終結する迅速な手続であるため、変更が無制限に認められるわけではありません。

 会社側専門の弁護士の立場から、申立ての趣旨・理由の変更が認められる範囲と、変更があった場合の会社側の対応を解説します。

01申立ての趣旨・理由の変更の可否

 労働審判手続では、申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨又は理由を変更することができます。「申立ての基礎に変更がない限り」という枠がはめられているのは、当初の申立てとまったく別の紛争へと事実上すり替わることを防ぐためです。申立ての基礎となる紛争の同一性が保たれている範囲であれば、請求の内容(趣旨)やその理由を変更することが認められます。

023回以内で終結できないときの不許可

 労働審判委員会は、申立ての趣旨又は理由を変更することにより、3回以内の労働審判期日で審理を終結するのが困難になるときは、その変更を許可しないことができます。これは、労働審判の迅速性を確保するための仕組みです。変更によって新たな争点が加わり、限られた期日では審理し切れないと判断される場合には、変更が認められないことがあります。会社側としては、申立人による変更が、審理の長期化につながるものかどうかという視点も踏まえて対応することになります。

03変更の許否と適法性の判断

 申立ての趣旨又は理由の変更を許可するかどうかは、新旧いずれの申立てを審理の対象とするかについての、労働審判委員会による手続指揮上の判断です。そのため、当事者は、この許否の判断に対して不服を申し立てることはできないと考えられます。また、申立ての趣旨又は理由の変更の申立てがされたときは、裁判所は、その申立てについて適法性の判断をし、不適法な場合には申立てを却下することになります。

経営者が見落としやすいポイント

申立人が請求内容や金額を変更してきた場合、会社が直面する金銭リスクや争点が変わる可能性があります。変更が許可されれば、当初想定していた解決の見通しや防御方針を見直す必要が生じます。変更があった場合には、その内容と影響を早期に把握し、方針を再検討することが重要です。

04訴訟に移行した場合の取扱い

 労働審判事件が訴訟に移行した場合には、申立ての趣旨又は理由の変更が記載された調書が、訴状とみなされることになります。すなわち、労働審判の段階で行われた変更後の内容が、そのまま訴訟の出発点となります。会社側としては、労働審判の段階で変更がなされた場合には、その内容が訴訟へも引き継がれることを念頭に、労働審判の段階から一貫した対応を組み立てておくことが重要です。

05会社側が押さえておくべき視点

 申立ての趣旨・理由の変更は、申立人の側の手続ですが、会社側にとっては、争点や金銭リスクの変化を意味します。変更が許可されれば、それに応じて答弁や証拠を追加・修正する必要が生じ得ます。他方で、変更が3回以内での終結を困難にするものであれば、許可されない場合もあります。会社側としては、変更の内容が申立ての基礎の範囲内か、審理の長期化につながらないかといった点を踏まえつつ、変更後の内容に的確に対応することが求められます。変更があった際の対応方針については、会社側専門の弁護士と相談しながら進めることが安心です。

06よくある質問(FAQ)

Q. 申立人は、途中で請求内容を変更できるのですか。

できます。申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨又は理由を変更することができます。ただし、変更により3回以内で審理を終結するのが困難なときは、労働審判委員会が変更を許可しないことがあります。

Q. 変更を許可するかどうかの判断に、会社側は不服を申し立てられますか。

申し立てられません。変更の許否は、新旧いずれの申立てを審理の対象とするかについての、労働審判委員会の手続指揮上の判断であり、当事者はこれに対して不服を申し立てることはできないと考えられます。

Q. 訴訟に移行すると、変更後の内容はどうなりますか。

労働審判事件が訴訟に移行した場合には、申立ての趣旨又は理由の変更が記載された調書が、訴状とみなされます。労働審判の段階で行われた変更後の内容が、そのまま訴訟の出発点となります。

経営上のポイント 労働審判では、申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨又は理由を変更することができます。ただし、変更により3回以内での審理終結が困難になるときは、労働審判委員会が変更を許可しないことができます。変更の許否は委員会の手続指揮上の判断であり、当事者は不服を申し立てることができないと考えられます。変更の申立てがされたときは、裁判所が適法性を判断し、不適法な場合は却下します。事件が訴訟に移行した場合には、変更が記載された調書が訴状とみなされます。会社側としては、変更により争点や金銭リスクが変わり得ることを踏まえ、変更後の内容に的確に対応することが重要です。対応方針は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


Return to Top ▲Return to Top ▲