この記事の結論
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就業規則・労働協約・誓約書に転勤規定があれば認められやすい

労働契約締結時に転勤命令に従う旨の誓約書に労働者が署名押印していたり、就業規則または労働協約で転勤命令に関する規定を設けている場合には、使用者に転勤命令権があると判断されます。

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転勤の実態と、勤務場所限定合意の不存在も判断要素になる

全国に多くの支店・出張所があり、実際に多くの労働者が慣行的に転勤している場合や、労働契約締結時に勤務場所を限定する合意がなされていない場合にも、労働者の個別同意なく転勤を命じ得ることがあります。

 転勤命令の有効性は、755の記事で解説したとおり、①使用者に転勤命令権があるか、②その行使が権利濫用にあたらないかという2段階で判断されます。本稿では、このうち①、すなわちどのような場合に転勤命令権そのものが認められるのかを掘り下げて解説します。

 会社側専門の弁護士の立場から、転勤命令権が認められるための根拠づけを解説します。

01転勤命令権が問題となる場面

 会社が労働者に転勤を命じるためには、その前提として、会社が当該労働者に対して転勤を命じる権限(転勤命令権)を有している必要があります。この権限がなければ、いくら業務上の必要性があっても、労働者の個別同意なしに転勤を命じることはできません。裁判で転勤命令権の有無が争われるのは、主に、労働契約締結時に勤務場所についての取り決めが明確でなかった場合です。

02就業規則・労働協約・誓約書による根拠づけ

 裁判において使用者に転勤命令権があると判断されやすいのは、次のような場合です。第一に、労働契約締結時に、転勤命令に従う旨の誓約書に労働者が署名押印していた場合です。労働者本人が明示的に転勤への協力を約束しているため、転勤命令権の根拠として強い意味を持ちます。第二に、就業規則または労働協約において、「業務上の都合により従業員に異動を命ずることがある」といった転勤命令に関する規定を設けている場合です。この場合、労働契約の内容として、会社に一定の裁量による転勤命令権が認められると解されます。

03転勤の実態と慣行による根拠づけ

 また、全国各地に多くの支店や出張所があり、実際に多くの労働者が慣行的に転勤しているような場合にも、労働者の個別同意がなくても転勤を命じることができると判断されることがあります。就業規則等に明文の規定がなくても、会社の事業展開や人事運用の実態から、転勤が予定されていたと評価できる場合があるためです。採用時の説明や、これまでの転勤の実施状況が、この評価を裏付ける重要な事情になります。

04勤務場所限定合意の不存在

 さらに、労働契約締結時に勤務場所を特定する合意(勤務場所限定合意)がなされていない場合にも、労働者の個別同意なく転勤を命じることができる場合があります。これは、750の記事で解説した勤務場所限定合意の裏返しの関係にあります。すなわち、勤務場所限定合意が認められない限り、会社は原則として就業規則等の定めに基づき、労働者の勤務場所を決定する裁量を有すると考えられているのです。

05会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、転勤を命じる可能性がある職種・雇用形態については、採用段階から転勤命令権の根拠を明確にしておくことが重要です。就業規則に転勤条項を明記しておくことはもちろん、必要に応じて、入社時に転勤への協力に関する誓約書を取得しておくことも有効な手段です。

 また、実際に転勤を行う実績を積み重ねておくことも、後に転勤命令権の有無が争われた際に、慣行としての根拠づけに役立ちます。逆に、事務職や現地採用として採用しつつ、勤務場所を限定するような趣旨の説明をしていた場合には、後になって転勤命令権が否定されるリスクが高まるため、採用時の説明内容には注意が必要です。

06よくある質問(FAQ)

Q. 就業規則に転勤条項があれば、必ず転勤命令権が認められますか。

重要な根拠にはなりますが、それだけで確定するわけではありません。当該労働者との間に勤務場所限定合意がないかどうかも、あわせて検討する必要があります。

Q. 就業規則に転勤規定がなくても、転勤命令権は認められますか。

認められる場合があります。全国に多くの支店があり、実際に多くの労働者が慣行的に転勤しているような実態があれば、就業規則の明文がなくても転勤命令権が認められることがあります。

Q. 転勤命令権を確保するために、採用段階で何をしておくべきですか。

就業規則に転勤条項を明記しておくこと、必要に応じて転勤への協力に関する誓約書を取得しておくこと、そして実際に転勤を行う実績を積み重ねておくことが有効です。

経営上のポイント 裁判において使用者に転勤命令権があると判断されるのは、労働契約締結時に転勤命令に従う旨の誓約書に労働者が署名押印していたり、就業規則または労働協約で転勤命令に関する規定を設けている場合です。また、全国に多くの支店・出張所があり実際に慣行的に転勤が行われている場合や、労働契約締結時に勤務場所限定の合意がなされていない場合にも、個別同意なく転勤を命じ得ることがあります。会社側としては、就業規則の転勤条項の整備、必要に応じた誓約書の取得、実際の転勤実績の積み重ねにより、転勤命令権の根拠を明確にしておくことが重要です。逆に、勤務場所を限定するような採用時の説明は、後に転勤命令権が否定されるリスクにつながるため注意が必要です。転勤命令の実施は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。転勤命令の実施でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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