就業規則の懲戒解雇事由に該当しても懲戒解雇が無効になる?懲戒権濫用法理とは
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就業規則の懲戒解雇事由への該当は必要条件にすぎない。懲戒権濫用法理(労契法15条)という第二の壁がある 懲戒が客観的合理的理由を欠くか社会通念上相当でない場合は、就業規則の事由に形式的に該当していても懲戒権濫用として無効となります。就業規則の懲戒事由該当性と懲戒権濫用の有無という二段階審査が必要です。 |
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懲戒解雇が無効となりやすい5類型を把握し、非違行為の事実確認・弁明聴取・処分の均衡確認を行うこと 非違行為が軽微・処分の均衡を欠く・弁明機会なし・就業規則の拡大解釈・反省謝罪があり再発可能性低い、という5類型が懲戒解雇無効となりやすいパターンです。 |
01懲戒権濫用法理(労働契約法15条)の適用:二段階審査
労働契約法15条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定しています。
したがって、社員の非違行為が就業規則に定める懲戒解雇事由に該当するように見える場合であっても、懲戒解雇が客観的に合理的な理由を欠いたり、社会通念上相当でなかったりした場合は、懲戒権を濫用したものとして無効となります。
懲戒解雇の有効性は二段階で審査されます。第一段階として就業規則の懲戒解雇事由への該当性が問われ、第二段階として懲戒権濫用(労契法15条)の有無が問われます。第一段階を満たしても第二段階で否定されれば懲戒解雇は無効となります。「就業規則に懲戒解雇事由として書いてある以上、懲戒解雇は当然有効だ」は誤りです。就業規則の懲戒解雇事由への該当は必要条件にすぎず、十分条件ではありません。
02懲戒解雇が無効となりやすい典型的なケース(5類型)
懲戒権濫用として懲戒解雇が無効と判断されやすい典型的なケースは次の5類型です。
①非違行為の程度が軽微な場合:就業規則の文言上は懲戒解雇事由に該当するが、非違行為の内容・程度が軽微で、懲戒解雇という最も重い処分を選択することが重すぎると評価される場合。
②処分の均衡を欠く場合:他の社員の類似行為に対しては軽い処分しか行っていないのに、特定の社員だけを懲戒解雇した場合。恣意的・差別的な処分選択は社会通念上相当でないと評価されます。
③弁明の機会を与えなかった場合:本人から十分な弁明を聴取せずに懲戒解雇を行った場合(労働問題40参照)。
④就業規則の懲戒事由の解釈を拡大しすぎた場合:就業規則の文言を拡大解釈して本来該当しない行為を懲戒解雇事由に当たるとした場合。
⑤反省・謝罪があり再発可能性が低い場合:非違行為があっても本人が深く反省・謝罪しており再発可能性が低いにもかかわらず、最も重い懲戒解雇を選択した場合。
弁護士対応事例でよく見られるのは次のようなパターンです。
・「事実確認が不十分なまま懲戒解雇を行ったところ、後の審理で非違行為の事実が十分に立証できず、客観的合理的理由を欠くとして無効とされた」
03懲戒解雇前に確認すべき実務上のポイント
懲戒解雇を実施する前に、次の各点を確認することが不可欠です。
② 非違行為の事実確認と証拠整備:非違行為の事実を客観的証拠に基づいて確定させる
③ 本人からの弁明聴取:本人に弁明の機会を与え、その内容を記録しておく
④ 処分の相当性の判断:非違行為の重大性・悪質性・反省の有無・他の社員との処分の均衡等を総合考慮する(考慮要素の詳細は労働問題47参照)
⑤ 解雇予告義務・解雇制限事由の確認:解雇予告義務(労基法20条)と解雇制限事由(傷病休業中等)の確認を行う(詳細は労働問題40参照)
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年6月28日