懲戒解雇・諭旨解雇等、退職を伴う懲戒処分を検討する際の注意点とは
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退職の効果を伴う懲戒処分は紛争になりやすい。退職金不支給・減額を伴う場合はさらにリスクが高まる 懲戒解雇・諭旨解雇・諭旨退職は懲戒権濫用の有無が厳格に審査されます。退職金不支給・減額が加わると金銭的損失が大きく弁護士費用をかけてでも争う動機が生まれやすいため、訴訟リスクがさらに高まります。 |
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「争われるのが怖い」から処分を回避してはいけない。リスクを理解し見通しを立ててから踏み切ることが大事 重大な問題行動には適切な懲戒処分が必要です。リスクを具体的に理解し見通しを立ててから行う懲戒処分は、紛争が発生しても予定どおりに対応できます。弁護士との事前協議が不可欠です。 |
目次
01退職の効果を伴う懲戒処分の種類と特徴
退職の効果を伴う懲戒処分には、懲戒解雇・諭旨解雇・諭旨退職などがあります。懲戒解雇は使用者が一方的に行う最も重い懲戒処分です。諭旨解雇・諭旨退職は、使用者が労働者に懲戒解雇に相当する事由があることを告げた上で退職届の提出を勧告し、労働者がそれに応じて退職届を提出した場合は退職(合意退職)とし、提出しない場合は懲戒解雇とする処分です。いずれも退職の効果を伴う重い懲戒処分であり、就業規則の定め方は会社によって異なります。
懲戒解雇・諭旨解雇・諭旨退職等の退職の効果を伴う懲戒処分については、懲戒権濫用の有無が厳格に審査され、紛争となりやすい傾向にあります。退職を強いられる労働者にとって雇用を失うという重大な不利益が生じるため、当然のことながら争いやすくなるからです。特に退職金が不支給・減額とされる場合には、訴訟で争われるリスクがさらに高くなります。
02注意点①:リスクを理解し見通しを立ててから踏み切る
退職の効果を伴う懲戒処分は、特に慎重に行う必要があり、特に退職金が不支給・減額される事案であれば訴訟で争われることを覚悟した上で懲戒処分に踏み切るくらいの心構えが必要です。しかしこれは、重い懲戒処分をしないよう言っているわけではありません。
事案に応じた適切な懲戒処分は必要であり、重大な問題行動を行った社員については懲戒解雇等の懲戒処分に処し退職金を不支給または減額する必要があります。「争われるのが怖いから、懲戒解雇ではなく軽い処分にしておこう」は問題です。重大な問題行動に対して適切な処分を行わないことは職場の秩序維持の観点からも問題があり、軽い処分を行うと一事不再理の問題(労働問題45参照)が生じ後から重い処分に変更できなくなります。
大事なのは、これから行おうとする処分のリスクを理解し、見通しを立ててから踏み切ることです。リスクを具体的に理解し見通しを立ててから懲戒解雇等に踏み切ることにより紛争が発生したとしても、予定どおりの経過をたどり予定どおりの結末で終わるのであれば、もはや「リスク」と評価することすらできないようにも思えます。逆に「何となく懲戒解雇すれば大丈夫だろう」と、リスクを具体的に理解せずに見通しが立たないまま懲戒解雇等を行うことも問題であり、予想外の展開になった場合に対応できなくなります。
03注意点②:退職金不支給・減額のリスクを正確に把握する
退職金の不支給・減額は、労働者にとって金銭的な損失が大きく、弁護士費用をかけてでも争う動機が生まれやすい事項です。特に長年勤続した社員の退職金は高額になりやすく、不支給・減額の不利益も大きくなります。
退職金の不支給・減額を有効に行うためには、①就業規則・退職金規程に不支給・減額規定があること、②懲戒解雇自体が有効であること(懲戒権濫用でないこと)、③不支給・減額の範囲が規程の定める範囲内であること、という条件を満たす必要があります。懲戒解雇が無効とされれば、退職金の不支給・減額も問題となります(詳細は労働問題49参照)。
退職金不支給・減額を伴う懲戒解雇については、訴訟で争われることを前提として次の事前準備をしておくことが重要です。
② 懲戒権濫用でないことを示す各考慮要素の充足(規律違反の態様・程度・回数・改善の余地の有無等)
③ 就業規則・退職金規程の不支給・減額規定の確認
④ 弁明聴取等の手続の適正性の確保
⑤ 弁護士との事前協議
04実務上の進め方:弁護士との事前協議の重要性
退職の効果を伴う懲戒処分を行う前に、弁護士との事前協議において次の事項を確認することが重要です。
② 懲戒権濫用に当たらないか(各考慮要素の充足度の確認)
③ 解雇予告義務・解雇制限事由への対応
④ 退職金不支給・減額規定の有無と適用の可否
⑤ 紛争となった場合の見通し(勝訴可能性・解決金の水準等)
⑥ 証拠の整備状況と不足している証拠の確認
弁護士対応事例でよく見られるのは次のようなパターンです。
・「証拠不十分なまま懲戒解雇・退職金不支給を強行した。訴訟で非違行為の事実を証明できず、懲戒解雇無効・退職金全額支払いという結果になった」
リスクを理解し見通しを立てた上での処分と、見通しなしの処分では、同じ紛争でも結果が全く異なります。弁護士とともに証拠の整備状況と見通しを確認した上で踏み切ることで、「リスク」は「想定内の経過」へと変わります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年6月28日