労働問題951 定額残業代(みなし残業代)とは?会社側弁護士が有効要件を解説【労働問題951】

 定額残業代(みなし残業代)は、残業代管理の負担を軽減できる有効な仕組みです。しかし、設計や運用を誤ると、後になって多額の残業代請求を受けるリスクがあります。制度の基本を正確に理解しておくことが、トラブルを防ぐ第一歩です。

 本記事では、定額残業代の仕組み・支給形態・有効要件を、使用者側専門の弁護士が実務的な視点から解説します。

01定額残業代(みなし残業代)とは

 定額残業代(みなし残業代)とは、毎月決まった金額を見込みの残業代として、実際の残業の有無にかかわらず一定額を支給する制度のことをいいます。

 労基法が残業代について使用者に求めているのは、時間外・休日・深夜労働に対して法定基準を満たす割増賃金を支払うことです。したがって、その要件を満たしていれば、法定の計算方式をそのまま用いなくても問題ありません。

02定額残業代の2つの支給形態

 定額残業代の支給方法には、主に次の2種類があります。

(1)基本給とは区別して支払う方法
「残業手当〇万円」などと明示して別途支給する形態です。通常賃金と残業代の判別が明確になるため、有効性の観点からは最もシンプルな方法といえます。

(2)基本給に組み込んで支払う方法
基本給の中に残業代を含める形態です。この場合、通常の労働時間に対する賃金部分と、定額残業代部分がきちんと判別できるよう明示する必要があります。判別できない場合、定額残業代として有効に機能しなくなるリスクがあります。

 いずれの方法も、要件を満たす限り労基法違反にはあたらないとされています。

03実際の残業が定額を超えた場合の追加支払義務

 定額残業代を支給していたとしても、実際の残業時間が定額残業代に含まれる時間数を超えた場合には、超えた部分について残業代を追加で支払う必要があります。

 「定額を払っているから残業代はもう不要」という理解は誤りです。実際の残業時間との差額を毎月確認し、超過がある場合は必ず精算する運用を徹底してください。

04定額残業代が有効と認められるための実務ポイント

 定額残業代制度が残業代トラブルの原因となるケースは少なくありません。よくある問題点として、①定額に含まれる残業時間数が明示されていない、②超過分を支払わずに放置している、③基本給に組み込んでいるが内訳を説明できない、といった事例が挙げられます。

 制度導入にあたっては、就業規則・雇用契約書・給与明細に定額残業代の金額・対象時間数を明記し、超過分の精算ルールも合わせて整備しておくことが不可欠です。定額残業代の有効性に不安がある場合は、労働問題に精通した弁護士への相談をお勧めします。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

05よくある質問

Q1. 定額残業代を設定する際、何時間分を含めるかは自由に決められますか?
A. 何時間分を定額とするかは原則として自由に設定できますが、現実の業務実態とかけ離れた時間数を設定することは避けるべきです。実態に見合った設計をすることで、超過支払義務が生じにくくなります。また、極端に多くの残業時間を想定した設定は、長時間労働を助長するとして問題視される場合もあります。

Q2. 基本給に定額残業代を組み込む場合、給与明細にはどう記載すればよいですか?
A. 「基本給(うち定額残業代〇〇時間分〇〇円を含む)」のように、通常賃金部分と定額残業代部分を金額・時間数とともに明記することが重要です。内訳が不明瞭な場合、定額残業代が有効と認められないリスクがあります。

Q3. 実際の残業が定額に満たなかった月でも、定額分を全額支払う必要がありますか?
A. はい、定額残業代は残業が少なかった月でも減額することはできません。詳しくは労働問題952「定額残業代を減額できるか」をご参照ください。

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最終更新日:2026年5月17日

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