Q930 労働者が賃金債権を放棄した場合,会社は支払わなくてもいいですよね?

  • PDF

 労働者が賃金債権を放棄した場合,その意思表示が労働者の自由な意思に基づくものであると認められるものであれば,会社は,放棄された賃金を支払わなかったとしても賃金全額払原則に反しません。

 意思表示が労働者の自由な意思に基づくものであるかどうかの判断について,参考になる裁判例として,シンガー・ソーイング・メシーン・カムパニー事件は,在職中の経費の仕様について会社が疑惑を抱き,これによる損害の一部の填補として退職金を放棄する旨の意思表示をした退職者について,放棄の意思表示は有効であると判断しました(最高裁第二小法廷昭和48年1月19日判決)。
 また,債権放棄を無効とした裁判例として,北海道国際航空事件は,会社の経営危機に際し経営状態を説明して課長以上の役職者について賃金の減額を通告し,労働者は遡っての賃金減額は違法である等と抗議したが,減額された賃金を余儀なく受け取っていたという事案について,労働者が余儀なく減額された賃金を受け取っていたこと等からすれば,減額された賃金を受け取った時点でその時点以降の賃金減額には同意していたと認めましたが,賃金減額同意まで既に発生していた賃金については,自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはいえず,賃金債権放棄の要件を満たさないとして,放棄を無効としました(最高裁第一小法廷平成15年12月18日判決)。


弁護士法人四谷麹町法律事務所

〒102-0083 東京都千代田区麹町5丁目2番地 
K-WINGビル7階 TEL:03-3221-7137

Copyright ©弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京)|解雇,残業代請求,労働審判,団体交渉,問題社員などの労働問題の対応,相談 All Rights Reserved.
  • 会社経営者のための残業代請求対応
  • 会社経営者のための労働審判対応
Return to Top ▲Return to Top ▲