労働問題910 作業の準備や後片付けの時間の労働時間該当性はどのように判断されますか。

 三菱重工業長崎造船所事件最高裁判決は、「就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行なうことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができ」ると判示しています。「余儀なくされたとき」とは、就業規則や具体的な業務指示がなくても、事実上、当該行為を行わざるを得ない状態を意味します。
 裁判において労働時間と認められた事例には次のものがあります。
① 警備員の更衣及び朝礼に関するもの(ビル代行事件東京高裁平成17年7月20日判決)
② 駅務員の点呼及び出勤点呼後点呼場所から勤務開始場所までの移動時間に関するもの(東京急行電鉄事件東京地裁平成14年2月28日判決)
③ 会社の車両に置いてある駐車場兼資材置き場において会社車両への資材の積み込み、作業についての親方の指示待ちをしていた準備作業の時間、現場から駐車場兼資材置き場に戻っての後片付けの作業時間に関するもの(総設事件東京地裁平成20年2月22日判決)
④ 実作業に当たり作業服及び防護具等の装着が義務付けられ、それを事業所内の所定の更衣室等で行うこととされており、就業規則所定の始業時刻前後に装着作業を行った場合の当該時間に関するもの(三菱重工長崎造船所事件最高裁第一小法廷平成12年3月9日判決)
 他方で、労働時間とは認めなかった事例として、次のものがあります。
① 実作業の終了後に事業所内の施設において洗身などを行った時間について、実作業終了後に事業所内の施設において洗身などを行うことは義務付けられておらず、洗身などを行わなければ通勤が困難などの事情もないことから、使用者の指揮命令下に置かれていたとは評価できず、労働時間には該当しないと判断したもの(三菱重工長崎造船所事件最高裁第一小法廷平成12年3月9日判決)
② 着替えの時間や更衣室から作業場への移動時間のような労務提供の準備行為の時間が労働時間に当たるかどうかは、就業規則の定めがあればその定めに従い、なければ職場慣行によって決すべきであるところ、始業時刻の時点で入門後に設置されたタイムカードに打刻し、職場への歩行中であったとしても、始業時刻に職場の作業が開始されることが労使慣行になっていたなどの状況下では、職場への歩行時間は労働時間ではないとして、労働時間制を否定したもの(日野自動車工業事件最高裁第一小法廷昭和59年10月18日判決、原審東京高裁昭和56年7月16日判決)

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