労働問題887 就業規則に規定がなくても出張を命じることはできますか。
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出張は労働条件を変更しないため就業規則の根拠は不要 出張は、早期に通常の就労場所に戻ることが前提となり、転勤や出向とは異なり労働条件が変更されるわけではないため、就業規則に規定がなくても、一般的な業務命令として労働者に出張を命じることができます。 |
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労務指揮権の範囲内として裁判例も肯定している 「出張命令は、一般的に労務指揮権の範囲内に属することであるから、就業規則に根拠を求めるまでもなく有効に発することができる」と判示されています(石川島播磨重工業事件、東京地裁昭和47年7月15日判決)。 |
756の記事で解説した転勤命令権とは異なり、出張命令については、就業規則に特別な根拠がなくても命じることができるとされています。この違いは、それぞれの制度が労働条件に与える影響の違いに基づくものです。
会社側専門の弁護士の立場から、就業規則に規定がなくても出張を命じることができるかを解説します。
01出張の定義と転勤・出向との違い
出張とは、通常の就労場所を一時的に離れ、使用者が指定した場所で業務に従事することをいいます。出張は、早期に通常の就労場所に戻ることが前提となりますので、転勤や出向とは異なり、労働条件が変更されるわけではありません。労働条件に変更がない以上、出張命令は単なる労務提供方法の指示に過ぎませんので、就業規則に規定がなくても、一般的な業務命令として労働者に出張を命じることができます。
02石川島播磨重工業事件が示す考え方
裁判例でも「出張命令は、一般的に労務指揮権の範囲内に属することであるから、就業規則に根拠を求めるまでもなく有効に発することができる」と述べています(石川島播磨重工業事件、東京地裁昭和47年7月15日判決)。転勤や配置転換のように就業場所そのものが恒久的に変わるわけではなく、あくまで一時的な労務提供場所の指定にとどまるという出張の性質が、この判断の背景にあります。
03会社側が押さえておくべき視点
会社側としては、就業規則に出張命令に関する明文の規定がなくても、通常業務の一環として出張を命じることは可能です。もっとも、この労務指揮権に基づく出張命令も無制限に認められるわけではなく、業務上の必要性がないにもかかわらず嫌がらせ目的で出張を命じたり、労働者の生命・身体に対する著しい危険を伴う地域への出張を強制したりする場合には、業務命令権の濫用として無効になる可能性があります。
特に、長期間にわたる出張や、頻度の高い出張が事実上の転勤・配転と同視できるような場合には、通常の出張とは異なる考慮が必要になることもあるため、出張の期間・頻度が過度に及ぶ場合には、756の記事で解説した転勤命令権の判断枠組みも念頭に置いて検討することをお勧めします。
04よくある質問(FAQ)
Q. 就業規則に出張命令の規定がなくても、従業員に出張を命じられますか。
命じることができます。出張は労働条件を変更するものではなく、一般的な業務命令(労務指揮権)の範囲内として、就業規則の根拠なく命じることができるとされています。
Q. 出張命令であれば、どんな内容でも従わせられますか。
従わせられません。業務上の必要性がない嫌がらせ目的の出張命令や、著しい危険を伴う出張の強制は、業務命令権の濫用として無効になる可能性があります。
Q. 長期間の出張であっても、就業規則の根拠は不要ですか。
出張が事実上の転勤・配転と同視できるほど長期化・頻発する場合には、通常の出張とは異なる考慮が必要になることがあります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。出張・配転命令の実施でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日