労働問題876 業務時間中に社内で労働者同士が私的な理由で喧嘩し、一方の労働者が負傷した場合,当該負傷は「業務災害」になりますか。
労災保険給付の対象となる「業務災害」(労働者災害補償保険法7条1項1号)といえるためには、労働者の傷病等が、業務遂行中に(①業務遂行性)、その業務が原因となって生じた(②業務起因性)ことが必要です。
①業務遂行性は、傷病等の発生時に具体的な業務を行っていたかどうかではなく、使用者の支配・管理下で起きたものかどうかで判断されます。
②業務起因性は、労働契約に基づいて労働者が使用者の支配・管理下にあることに伴う危険性が現実化したと経験則上認められる場合に肯定されます。労働者が使用者の支配・管理下で働くことによって通常生じ得ると考えられる傷病等の発生の危険性が実現したかどうかがポイントとなります。
業務時間中の社内で起きた労働者同士の喧嘩は、使用者の支配・管理下で起きたものですから、①業務遂行性は認められます。しかし、労働者同士の私的な理由による喧嘩は、使用者の支配・管理下で働くことによって通常生じうると考えられる傷病等発生の危険性が実現したものとはいえませんので、②業務起因性は認められません。
したがって、労働者同士の私的な怨恨による喧嘩の負傷は「業務災害」にあたらないと考えます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
勤務弁護士作成