労働問題860 突然行方不明になった労働者との労働契約を終了させるためには、どのような方法が考えられますか。

この記事の結論
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当然退職規定と長期無断欠勤による懲戒解雇の2つの方法がある

労働者が突然行方不明になった場合、労働契約を終了する方法は、①就業規則の当然退職規定による退職、②長期無断欠勤による懲戒解雇の2つが考えられます。

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当然退職規定は意思表示の到達が不要な点で実務上有利

当然退職規定は解雇の意思表示を到達させる必要がなく、労働者を探したり公示送達をしたりする手間がかからない点がメリットです。

 突然、連絡が取れなくなった従業員への対応は、多くの会社が直面する悩ましい問題です。解雇の意思表示は相手に到達させる必要があるという原則があるため、連絡が取れない相手への対応には、特有の工夫が必要になります。

 会社側専門の弁護士の立場から、行方不明の労働者との労働契約を終了させる方法を解説します。

01行方不明の労働者との契約終了の2つの方法

 労働者が突然行方不明になった場合、労働契約を終了する方法は、次の2つが考えられます。

  • 就業規則の当然退職規定による退職
  • 長期無断欠勤による懲戒解雇

02就業規則の当然退職規定による退職

 1つ目は、就業規則において、長期間連絡が取れず行方不明となった者を退職とする規定を設けておく方法です。このメリットは、労働者が当然退職の扱いになるため、使用者が解雇しなくても労働契約が終了するという点です。解雇しなくてもよいということは、意思表示を労働者に到達させるために労働者を探したり、裁判所の掲示場に掲示するという公示送達の方法をとるといった手間がかからないということです。

 解雇は使用者からの一方的な意思表示であり、原則として相手方に到達しなければ効力が生じません。これに対し、当然退職は、就業規則で定めた一定の事実(長期の音信不通・行方不明)が生じたことにより、自動的に契約が終了する仕組みであるため、意思表示の到達という問題を回避できます。

03長期無断欠勤による懲戒解雇

 2つ目は、当然退職規定に行方不明の規定がない場合に、懲戒事由の長期無断欠勤によって懲戒解雇するというものです。792の記事で解説した職務懈怠の懲戒処分の一類型として、無断欠勤も懲戒事由になり得ますが、行方不明の労働者を懲戒解雇する場合、上記のとおり、懲戒解雇の意思表示を労働者に到達させなければならないという難点があります。

 行方不明の労働者を懲戒解雇する場合は、出勤督促状や安否確認書といった書面、メール等の客観的な記録を記録しておき、裁判になった場合に証拠として提出できるようにしておきましょう。意思表示の到達をどのように確保するか(住所への配達証明郵便の送付、公示送達の申立て等)についても、事前に検討しておく必要があります。

04会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、行方不明者への対応をあらかじめ想定し、就業規則に当然退職規定(例:「正当な理由なく○日以上連絡が取れず、所在が不明な場合は、○日をもって退職とする」等)を整備しておくことを強くお勧めします。この規定があれば、いざ行方不明者が発生した際に、解雇という重い手続をとることなく、円滑に契約を終了させることができます。

 当然退職規定がない場合には、懲戒解雇の方法をとらざるを得ませんが、この場合は、意思表示の到達という手続的なハードルをクリアする必要があるため、早期に弁護士に相談し、公示送達等の適切な手続を検討することをお勧めします。いずれの方法をとる場合でも、労働者への連絡・督促の努力を客観的な記録として残しておくことが、後の紛争予防に重要です。

05よくある質問(FAQ)

Q. 就業規則に当然退職規定があると、どのようなメリットがありますか。

解雇の意思表示を労働者に到達させる必要がなくなるため、労働者を探したり公示送達の手続をとったりする手間がかからず、円滑に契約を終了させることができます。

Q. 当然退職規定がない場合、どうすればよいですか。

長期無断欠勤を理由とする懲戒解雇を検討することになります。ただし、意思表示を労働者に到達させる必要があるため、出勤督促状等の客観的記録を残し、必要に応じて公示送達等の手続を検討する必要があります。

Q. 行方不明の労働者への対応で、事前にどんな準備をしておくべきですか。

就業規則に当然退職規定を整備しておくことをお勧めします。あわせて、連絡・督促の記録化の仕組みを整えておくと、いざという時の対応がスムーズになります。

経営上のポイント 労働者が突然行方不明になった場合、①就業規則の当然退職規定による退職、②長期無断欠勤による懲戒解雇の2つの方法で労働契約を終了させることができます。当然退職規定は、解雇の意思表示を到達させる必要がなく、労働者を探したり公示送達の手続をとったりする手間がかからない点で実務上有利です。当然退職規定がない場合の懲戒解雇では、意思表示の到達という手続的なハードルがあるため、出勤督促状・安否確認書等の客観的記録の保存と、公示送達等の手続の検討が必要です。会社側としては、あらかじめ就業規則に当然退職規定を整備しておくことを強くお勧めします。行方不明の労働者への対応は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。行方不明の労働者への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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