労働問題83 労基署に相談してから解雇すれば、裁判にも勝てますよね?

この記事の要点

労基署相談だけでは裁判に勝てる保証はありません。解雇の有効性を最終判断する権限は裁判所にあり、労基署にはありません。解雇前には弁護士への相談が必要です。

労基署は労基法違反の取り締まりを行う行政機関であり、解雇が民事上有効かどうかの最終判断権限はありません。裁判での見通しまで考えた指導は受けられません。解雇の有効性については弁護士に相談することが必要です。

労基署の役割:労基法違反の取り締まりと指導

労基署は解雇予告等の労基法上の手続について指導することができますが、解雇の民事上の有効性(客観的合理性・社会通念上の相当性)を最終判断する権限はありません。


解雇の有効性の最終判断権限は裁判所にある

解雇が有効かどうかは最終的に裁判所が判断します。労基署への相談は、裁判での有利不利には直接影響しません。


解雇前には弁護士への相談が必要

裁判所の判断基準に照らした解雇の有効性評価・証拠の確認・解雇手続の指導・裁判の見通し等については、会社側弁護士への相談が不可欠です。

1. 労基署の役割と限界

労基署は労基法違反の取り締まり機関

 労基署は労基法違反を取り締まっていますので、労基法20条の解雇予告等をしてから解雇するよう指導する等、労基法違反にならないようにするためのアドバイスはしてくれるかもしれません。労基官によっては、解雇には客観的に合理的な理由が必要であり、社会通念上相当なものである必要もあること(労働契約法16条)についても教えてくれるかもしれません。

 しかし、解雇の有効性を判断する最終的な権限があるのは裁判所(司法機関)であり、労基署(行政機関)には解雇が民事上有効かどうかを最終的に判断する権限がありませんし、裁判の見通しまで考えて指導してもらえるわけではありません。

労基署相談と裁判での勝訴は別問題

 したがって、労基署に相談してから解雇を行ったとしても、直ちに裁判にも勝てることにはなりません。労基署の指導の下で解雇手続を行ったとしても、その解雇が裁判所に「客観的合理的理由があり社会通念上相当」と評価されなければ、解雇は無効となります。

✕ よくある経営者の誤解

「労基署でOKと言ってもらってから解雇すれば問題ない」→ 誤りです。
労基署は解雇の民事上の有効性を判断する機関ではありません。労基署に相談してOKをもらっても、裁判で解雇が無効とされることは十分あり得ます。

「行政機関に相談したのだから、裁判所も同じ判断をするはず」→ 誤りです。
行政機関(労基署)と司法機関(裁判所)は役割が異なります。解雇の民事上の有効性は裁判所が独自の基準で判断します。行政機関の見解が裁判所の判断を拘束することはありません。

2. 労基署と弁護士の役割の違い

労基署が対応できること・できないこと

 労基署が対応できること:①解雇予告の要件(労基法20条)の確認、②解雇禁止規定(業務上疾病中の解雇禁止等)の確認、③労基法上の手続的要件の指導、④労働条件の明示等の労基法関連のアドバイス。

 労基署が対応できないこと:①解雇に客観的合理的理由があるかどうかの最終判断、②社会通念上の相当性の判断、③裁判での見通し・勝訴可能性の評価、④証拠の法的な評価・裁判での証明力の判断。

弁護士への相談が必要な理由

 解雇の民事上の有効性(客観的合理的理由・社会通念上の相当性)の評価、裁判での見通し、証拠の評価、解雇手続の具体的な指導等については、会社側弁護士への相談が不可欠です。弁護士は、裁判所の判断基準に照らして解雇の有効性を評価し、裁判での見通しを含めた具体的なアドバイスを行うことができます。

 解雇前の弁護士相談が最重要です。解雇後に弁護士に相談しても過去の事実は変えられませんが、解雇前であれば、①解雇の有効性の事前評価、②証拠整備の指導、③解雇手続の適正化、④代替手段の検討(退職勧奨等)といった対応が可能です。

 解雇の有効性評価・裁判の見通し・解雇前の証拠整備について、解雇を検討した段階ですぐに弁護士へご相談ください。→ 経営労働相談はこちら

⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)

・「労基署に相談してOKをもらったと思い解雇した。裁判では、解雇の客観的合理性・相当性の証拠が不十分として解雇無効の判決が出た。『労基署がOKと言ったのに』と言っても、裁判所の判断は別であった」

・「解雇前に会社側弁護士に相談した。現時点での証拠では解雇の有効性を証明することが困難と評価され、退職勧奨に方針転換した。最終的に合意退職が成立し、紛争を回避できた」

 「労基署相談=裁判勝訴」ではありません。解雇前の弁護士相談が最も重要です。

4. まとめ

 労基署は労基法違反の取り締まりを行う行政機関であり、解雇が民事上有効かどうかを最終的に判断する権限はありません。裁判の見通しまで考えた指導を受けられるわけでもありません。したがって、労基署に相談してから解雇を行ったとしても、直ちに裁判にも勝てることにはなりません。解雇の有効性を判断する最終的な権限は裁判所にあります。解雇の有効性の評価・証拠の整備・解雇手続の指導・裁判の見通しについては、会社側弁護士への相談が不可欠です。解雇を検討した段階ですぐに弁護士に相談することが最善策です。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

 

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最終更新日 2026/04/05

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