労働問題795 企業内政治活動・組合活動を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。

この記事の結論
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就業時間中の政治活動は原則懲戒処分の対象、時間外は特別の事情が問題になる

就業時間中の政治活動は職務専念義務に違反するため原則として懲戒処分が肯定されます。終業時間外の活動は、企業秩序を乱すおそれのない特別の事情がある場合には就業規則違反になりません(目黒電報電話局事件、最高裁昭和52年12月13日判決)。

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企業施設でのビラ配布は、施設管理権の濫用がない限り正当性を持たない

労働組合の企業施設利用は、その利用を許さないことが使用者の施設管理権の濫用となるような特段の事情がない限り、正当性を有しないと判断されています(国鉄札幌運転区事件、最高裁昭和54年10月30日判決)。

 企業内での政治活動や組合活動は、労働者の権利保障との関係で、懲戒処分の可否が慎重に判断される分野です。企業秩序の維持と、労働者の政治的・組合活動上の権利との調整が求められます。

 会社側専門の弁護士の立場から、企業内政治活動・組合活動を理由とする懲戒処分のポイントを解説します。

01企業内政治活動・組合活動が慎重に判断される理由

 企業内の政治活動、組合活動の懲戒事由該当性は、慎重に判断されるのが通常です。これらの活動は、憲法上保障された政治的自由や、労働組合法上保障された組合活動の自由と関わるため、単純な企業秩序違反として扱うことができません。

02就業時間中の政治活動

 まず、政治活動等の禁止・許可規定に違反してなされた政治活動が懲戒事由になるか否かが問題になります。就業時間中の活動は、職務専念義務に違反するため、原則として懲戒処分が肯定されます。労働契約上、就業時間中は労務に専念する義務があるためです。

03就業時間外の政治活動(目黒電報電話局事件)

 問題は、終業時間前、終業時間後、休憩時間等、就業時間外に行ったケースです。判例(目黒電報電話局事件、最高裁第三小法廷昭和52年12月13日判決)は、企業内政治活動は、施設管理を妨げ、従業員間の対立をもたらすなど、企業秩序を乱すおそれがあるとして、就業規則による一般規制を有効とする抽象的危険説に立ちつつ、企業秩序を乱すおそれのない特別の事情がある場合には、就業規則違反にはならないとしています。

 この「特別な事情」とは、他の労働者への影響などの態様、使用者の対応等の経緯、目的、誹謗中傷や内容の真正さ等の内容等に即して実質的に判断されます。就業時間外の活動であっても、企業秩序への影響の実質を踏まえた個別判断が必要になるということです。

04組合活動への同様の判断枠組み

 企業内における、ビラ配布、集会、組織活動等の組合活動が懲戒事由に該当するか否かについては、かつては、正当な組合活動であると判断された場合には、懲戒処分は無効とされてきました。しかし、判例は、必ずしもそのような立場を取らず、企業内政治活動で述べたようなルールで判断を行っているものもあります(倉田学園事件、最高裁第三小法廷平成6年12月20日判決)。組合活動だからといって、当然に懲戒処分から免れるわけではないという点に、注意が必要です。

05ビラ配布と施設管理権(国鉄札幌運転区事件)

 ビラ配布については、労働組合の企業施設利用は、その利用を許さないことが使用者の施設管理権の濫用となるような特段の事情がない限り、正当性を有しないと判断されています(国鉄札幌運転区事件、最高裁第三小法廷昭和54年10月30日判決)。企業の施設は、あくまで会社の所有物であり、労働組合が自由に使用できる権利を当然に有するわけではないという考え方が示されています。

06会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、企業内での政治活動・組合活動を一律に禁止・処分するのではなく、就業時間中か時間外か、活動の態様や他の労働者への影響、企業施設の利用の有無などを個別に検討したうえで、対応を判断する必要があります。就業時間外の活動については、単に「政治的な活動である」という理由だけで処分することは避け、企業秩序への実質的な影響があるかどうかを慎重に見極める必要があります。

 企業施設内でのビラ配布等については、施設管理権に基づき利用を制限すること自体は原則として認められますが、その制限が施設管理権の濫用とならないよう、合理的な運用を心がける必要があります。

07よくある質問(FAQ)

Q. 休憩時間中の政治活動を理由に懲戒処分できますか。

企業秩序を乱すおそれのない特別の事情がある場合には、就業規則違反にはならないとされています。他の労働者への影響や活動の内容等を踏まえた個別判断が必要です(目黒電報電話局事件)。

Q. 正当な組合活動であれば、懲戒処分は無効になりますか。

当然に無効になるとは限りません。判例は、企業内政治活動と同様のルールで判断するものもあり、正当な組合活動であることのみで懲戒処分が免れるわけではありません。

Q. 会社の施設内でのビラ配布を禁止できますか。

原則として禁止できます。労働組合の企業施設利用は、これを許さないことが施設管理権の濫用となる特段の事情がない限り、正当性を有しないとされています(国鉄札幌運転区事件)。

経営上のポイント 企業内の政治活動・組合活動の懲戒事由該当性は慎重に判断されます。就業時間中の活動は職務専念義務に違反するため原則懲戒処分が肯定されますが、就業時間外の活動は、企業秩序を乱すおそれのない特別の事情があれば就業規則違反になりません(目黒電報電話局事件、最高裁昭和52年12月13日)。組合活動についても、正当な組合活動であることだけで懲戒処分が免れるわけではなく、同様の判断枠組みが用いられることがあります(倉田学園事件)。企業施設でのビラ配布は、施設管理権の濫用となる特段の事情がない限り正当性を有しません(国鉄札幌運転区事件)。会社側としては、活動の時間帯・態様・他の労働者への影響を個別に検討し、施設管理権の運用も合理的な範囲にとどめることが重要です。懲戒処分の実施は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。企業内の政治活動・組合活動への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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