労働問題780 就業規則に配転に関する規定を設ければ、自由に配転できますか?

 配転について、就業規則等に「業務の都合により出張、配置転換、転勤を命ずることができる。」というような包括的な根拠規定が置かれていることが多いですが、このような規定が無い場合でも、労働契約の締結の経緯や内容、人事異動の実情などから配転命令権が認められることがあります。
 ただし、就業規則に包括的な配転命令権の定めがある場合でも、個別に職種や勤務場所等を限定する旨合意している場合には、原則として、当該従業員の同意が無い限り、合意の範囲を超える配転を命ずることはできないと考えます。
 また、当該職種を廃止せざるを得ないようなやむを得ない事情が発生した場合には、採用の経緯、職種の内容、職種変更の必要性及びその程度、変更後の業務の相当性等を考慮し、配転が認められることがあります(東京海上日動火災保険事件東京地裁平成19年3月26日判決)。
 配転は、従業員の職務上・私生活上の利益に影響を及ぼすものですから、濫用的な配転は許されません。裁判所も、「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使するこができるものではなく、これを濫用することの許されないということはいうまでもない」と述べています。

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