労働問題740 労働審判手続において弁護士以外を代理人にしたい場合、どのような要件を満たせばいいですか?

 労働審判法4条は、労働審判手続における代理人について、弁護士を原則と定めた上で、ただし書きにおいて、一定の要件(裁判所が、当事者の権利利益の保護及び労働審判手続の円滑な進行のために必要かつ相当と認めるとき。)を満たす場合に、例外的に弁護士でない者を代理人とすることを認めています。そして、裁判所が本条の判断を適切に行うために、労働審判法5条は、代理人の許可の申立てについて、①代理人となるべき者の氏名、②住所、③職業、④本人との関係、⑤当該申立ての理由を記載しなければならないと規定しています。
 ④「本人との関係」とは、代理人となるべき者と当事者本人との間の親族関係、雇用関係等をいい、代理人許可の申立てには、この点について具体的に記載しなければなりません。また、労働審判規則5条2項は、本人との関係を証する文書を添付しなければならないと定めています。たとえば、戸籍抄本、住民票、雇用関係については本人が従業員であることを示す従業員証などが考えられます。
 ⑤「申立ての理由」については、労働審判法4条ただし書きの要件を満たす事情を具体的に記載しなければなりません。たとえば、病気、法律知識の欠如等により本人が自ら手続をすることができない事情や、裁判所へのアクセスが困難な事情等が考えられます。また、その者が当事者本人と親族関係にあり、紛争についてよく理解していたり、その者が労働審判法や労働法規に通暁しており代理人としての責務を果たす能力がある場合なども考えられます。また、弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)違反が疑われるような場合は、同条違反にならない事情についても記載する必要があると考えます。
 労働審判規則5条2項は、当事者が提出すべき文書として、「本人との関係」を証する文書しか規定していませんが、裁判所は、一定の要件を満たすことが認められない限り代理人の許可をすることはできませんので、一定の要件を満たすことを証明するために、「申立ての理由」に記載されている事情を裏付けるものがあれば、証拠資料として提出することが必要と考えます。この場合の証拠資料としては、個々の事案により様々なものがありますが、例えば、診断書、障碍者手帳、資格を証明する文書などが挙げられます。
 なお、裁判所は、一旦代理人を許可した場合であっても、労働審判法4条1項に定める一定の要件に満たさないことや、弁護士法72条に違反することが判明した場合には、いつでも代理人の許可を取り消すことができます。

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