労働問題704 労働審判の第1回期日はなぜ「40日以内」?弁護士が教える短期間での準備と防衛策

この記事の結論

第1回期日は「審理の山場」であり、40日はそのための準備期間です

労働審判の第1回期日は、単なる顔合わせではありません。この日までに主張を出し切り、当日の審理で勝敗の方向性が決まります。40日という期間は、経営側にとって「徹底した反論準備」を行うための勝負の期間です。

  • 労働審判規則13条の定め: 特別の事由を除き、申立てから40日以内に第1回期日が指定されます。
  • 「10日間」の猶予の意味: 民事訴訟(30日)より長いのは、第1回で主張を完結させる必要があるからです。
  • 遅配・複雑事案の例外: 状況により40日を超える指定もあり得ますが、原則は迅速な進行が求められます。

1. 労働審判規則13条による「40日以内」の原則

 労働審判では、第1回期日は申立てから長く待たされるものではありません。労働審判規則13条により、特別の事情がない限り、申立てから40日以内に第1回期日を指定することが義務付けられています。

 このため、会社経営者のもとに届く呼出状に記載された期日は、想定よりも早く設定されていることが通常です。しかし、これは例外ではなく、労働審判が短期間で結論を導くことを前提とした制度設計そのものです。

 重要なのは、この40日という期間が単なる待機期間ではなく、第1回期日に向けた実質的な準備期間であるという点です。労働審判では、第1回期日から本格的な審理が行われるため、この時点までに主張・証拠の大枠を整えておく必要があります。

 また、実務上は期日の変更が容易には認められないため、会社経営者としては、申立書が到達した時点で準備のカウントダウンが始まるという認識を持つことが不可欠です。

 したがって、「40日以内」というルールは単なる日程の目安ではなく、短期集中で勝敗の方向性が決まる労働審判の本質を示す重要な基準であると理解する必要があります。

2. なぜ民事訴訟よりも10日間長く設定されているのか

 労働審判の第1回期日は「40日以内」とされており、通常の民事訴訟の30日と比べて10日長く設定されています。一見すると余裕があるようにも見えますが、これは単なる猶予ではなく、労働審判特有の集中的な審理に対応するために必要な準備期間として設けられているものです。

「第1回期日で審理をほぼ完結させる」ための準備期間

 労働審判において40日という期間が設けられている最大の理由は、第1回期日で審理の核心部分をほぼ完結させる運用が前提とされているためです。

 通常の民事訴訟では、第1回期日は形式的な確認にとどまり、その後に主張や証拠が段階的に提出されていきます。しかし、労働審判ではそのような進め方は採られず、初回から実質的な審理が一気に進行する点に大きな特徴があります。

 具体的には、第1回期日までに当事者双方が主張を出し切り、証拠を提出し、争点を明確にしたうえで、期日当日には審判員が心証を形成し、場合によっては調停の方向性まで提示されます。

 このように、労働審判は「一回集中型」の手続であるため、会社経営者としては、40日という期間を単なる余裕期間と捉えるのではなく、主張立証を完成させるための実質的な準備期間として認識する必要があります。

 したがって、この期間中にどこまで準備を整えられるかが、結果を大きく左右します。第1回期日に向けて、事実関係の整理、証拠の選定、主張の構築を集中的に行うことが不可欠です。

3. 40日を超える指定がなされる例外的なケース

 労働審判の第1回期日は原則として40日以内に指定されますが、実務上は例外的に40日を超える日程が設定される場合も存在します。ただし、これはあくまで例外であり、基本は迅速進行である点に変わりはありません。

 典型的には、申立書の送達に時間を要した場合など、手続上の事情により物理的に準備期間を確保できないケースが挙げられます。また、事案が極めて複雑で、関係資料が膨大であるなど、通常の期間では十分な審理準備が困難と判断される場合にも、期日が後ろ倒しされることがあります。

 さらに、裁判所側の事情として、労働審判員(専門家委員)の確保が難しい時期など、運営上の都合によって日程調整が必要となる場合も考えられます。

 もっとも、これらはいずれも限定的な事情に基づくものであり、会社経営者としては、40日以内に期日が設定されるのが原則であるという前提で対応すべきです。「例外的に延びる可能性」に期待して準備を遅らせることは、実務上極めて危険です。

 したがって、申立書が到達した時点から直ちに準備を開始し、短期間で答弁書や証拠を整える体制を構築することが、適切な防御対応の前提となります。

4. 会社経営者が第1回期日までにすべきこと

 労働審判における第1回期日は、単なる手続の開始ではなく、**審理の方向性が事実上決まる「最大の山場」**です。この期日までにどこまで準備を整えられるかが、その後の展開を大きく左右します。

 まず不可欠なのは、事実関係の正確な把握です。関係部署や当事者へのヒアリングを行い、メールや勤怠記録などの資料を収集・保全することで、紛争の全体像を早期に整理する必要があります。この段階での認識のズレは、そのまま不利な主張につながるリスクがあります。

 次に重要なのは、証拠の選別と整理です。単に資料を集めるだけでなく、どの証拠がどの事実を裏付けるのかを明確にし、相手方の主張を覆すための構成を意識して準備することが求められます。

 さらに、これらを踏まえて答弁書を作成・提出することが必要です。答弁書は単なる反論ではなく、会社側の主張と証拠を体系的に示す中核的な書面であり、期日前に提出することで審判員に事前の理解を促す役割を果たします。

 会社経営者としては、これら一連の対応を40日以内に完遂することが求められます。したがって、第1回期日までの期間を漫然と過ごすのではなく、短期集中で防御戦略を構築するプロジェクト期間として捉えることが、結果を左右する重要なポイントとなります。

第1回期日のスケジュールに関するよくある質問

Q1. 労働審判の呼び出し状が届きましたが、第1回期日は変更できますか?

A1. 原則として変更は困難です。労働審判は迅速性が最優先されるため、特別な事由がない限り40日以内に開催されます。どうしても都合がつかない場合は、弁護士を代理人として出頭させるなどの対応が必要です。

Q2. 答弁書の提出期限が非常に早いのですが、間に合わない場合はどうなりますか?

A2. 第1回期日で審理の大部分が決まるため、答弁書の遅れは致命的です。事案が極めて複雑な場合は裁判所に期日指定の配慮を求めることも可能ですが、基本的には弁護士と連携して集中投資で作成を急ぐべきです。

Q3. 民事訴訟よりも準備期間が長いのはなぜですか?

A3. 労働審判は第1回期日までに双方の主張を出し切り、その場で証拠整理まで行う「一回集中」の審理を行うためです。民事訴訟(30日以内)よりも10日間長く設定することで、実質的な反論準備の時間を確保しています。

 

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最終更新日 2026/03/19

 

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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 弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

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