労働問題681 チェーン店の小売業、飲食業における管理監督者の範囲を教えてください。
東京地裁の平成20年1月28日の日本マクドナルド事件の判決後、労基法41条1号に該当する管理監督者について、企業は対応に苦慮することになりました。これまで、日本企業の多くが管理職を管理監督者として取り扱う傾向がありましたが、大きな労働問題になったことはありませんでした。しかし、管理監督者の問題は、サービス残業問題も絡んでいることから、行政が厳しく対応するようになり、社会的にも重大な問題になりました。
管理監督者については、日本マクドナルド事件も含め、これまでは2つの通達(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)に基づいて判断してきましたが、平成20年4月1日、都道府県労働局長に徹底した行政指導を行うようにという趣旨の「管理監督者の適正化について」(平成20年4月1日基監発0401001号)が出され、企業に対し、管理監督者について適正な理解を求めるように指導していくべきことが通達されました。
この通達を整理すると次のようになります。
〈管理監督者性を否定する重要な要素〉
1 職務内容
① アルバイト、パート等の採用に関する責任と権限が実質的にない場合。
② アルバイト、パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合。
③ 人事考課の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合。
④ 勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合。
2 勤務態様
遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取り扱いがされる場合。
3 賃金等
実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、アルバイト、パート等の賃金額に満たない場合。特に、当該時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となる。
〈管理監督者性を否定する補強要素〉
1 勤務態様
① 長時間労働を余儀なくされるなど、実際には労働時間に関する裁量が殆どない。
② 労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合。
2 賃金等
① 基本給、役職手当等の待遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金(残業代)の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められる場合。
② 1年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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