労働問題680 監視または断続的労働に従事する者とは何か・労働時間規制の適用除外要件【会社側弁護士が解説】

この記事の結論
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適用除外には必ず労働基準監督署長の許可が必要。許可なしは法違反

労基法41条3号の適用除外は、管理監督者(41条2号)と異なり、行政官庁(労基署長)の許可が必須です。許可なく適用除外を前提に運用することは労基法違反となり得ます。

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許可を受けても深夜割増賃金の支払義務は免除されない

労基法41条3号の適用除外は労働時間・休憩・休日規制のみです。深夜割増賃金(労基法37条4項)は除外対象に含まれないため、深夜時間帯(22時〜翌5時)に労働させた場合は25%以上の割増賃金を別途支払う必要があります。

01労基法41条による適用除外制度の概要

 労基法は法定労働時間(1日8時間・週40時間)・休憩・休日に関する最低基準を定めており、これを超えて働かせる場合には割増賃金(残業代)を支払う義務が生じます。ただし、労基法41条は、一定の業種・職種に従事する労働者については、これらの規制の適用除外を認めています。

① 農林水産業従事者:農業・畜産業・養蚕業・水産業に従事する者(林業を除く)
② 管理監督者等:管理監督者の地位にある者または機密の事務を取り扱う者
③ 監視・断続的労働従事者:監視または断続的労働に従事する者で、行政官庁(労基署長)の許可を受けた者

 本記事では③の「監視または断続的労働に従事する者」(労基法41条3号)について解説します。①・②と異なり、③は行政官庁の許可を受けることが適用の要件とされており、許可なく適用除外を前提に運用することは法違反となり得ます。

02監視労働の要件と許可基準

 「監視に従事する者」として許可を受けるためには、原則として、一定部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体または精神的緊張の少ない業務でなければなりません(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)。典型例としては施設の守衛・ビルの受付・宿直員等が挙げられます。

 通達では、許可しない類型として以下が明示されています。

監視労働の許可対象外の業務
① 交通関係の監視、車両誘導を行う駐車場等の監視など、精神的緊張感の高い業務
② プラント等における計器類を常態として監視する業務
③ 危険または有害な場所における業務

 守衛・宿直等の業務であっても、業務内容が複合化・高度化している場合には許可を受けられないこともあります。許可申請の前に実際の業務内容を精査することが重要です。

03断続的労働の要件と許可基準

 「断続的労働に従事する者」とは、休憩時間は少ないが手待ち時間が多い者を指します(昭和22年9月13日基発17号、昭和23年4月5日基発535号、昭和63年3月14日基発150号)。

断続的労働の許可基準
① 修繕係等、通常は業務が閑散であるが事故発生に備えて待機するもの → 許可対象
② 寄宿舎の賄人等については、作業時間と手待ち時間が折半程度のものまで許可。ただし、実労働時間の合計が8時間を超えるときは許可しない
③ 鉄道踏切番等については、1日交通量10往復程度まで許可
④ その他、特に危険な業務に従事する者については許可しない

 業務の実態が手待ち時間よりも実作業時間の方が長い場合には許可を受けることができません。許可申請にあたっては、実際の作業時間・手待ち時間の比率を正確に把握することが必要です。

04深夜割増賃金への注意点

 労基法41条3号の適用除外は、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外にとどまります。深夜割増賃金(22時〜翌5時の労働に対する25%以上の割増)については、労基法37条4項が根拠規定であり、同条は労基法41条の適用除外規定に含まれていません。

 したがって、監視・断続的労働に従事する者が深夜時間帯に労働した場合には、深夜割増賃金を支払う義務が別途生じます。この点を見落とし深夜手当を一切支払わないという運用をしている会社は少なくありませんが、賃金未払いの問題が生じ得ますので、早急に見直しを検討されることをお勧めします。

労基法41条3号の適用除外でも、深夜割増賃金の支払義務は残る

05新宿労基署長事件から学ぶ適正運用の重要性

 大手印刷会社において、ロッカー室管理人を隔日24時間・休日なしで勤務させ、当該管理人が脳内出血を発症した事案があります(新宿労基署長事件・東京高裁平成3年5月27日判決)。裁判所は業務上災害であると認めましたが、この事件において問題となったのは、使用者が労基署長の許可を得ていなかった点です。

 仮に許可を取得するための申請がなされていたとしても、隔日24時間・休日なしという過酷な勤務体制に対して許可がなされることはあり得なかったと考えられています。

 この事件は「適用除外だから何でも許される」という誤解がいかに危険であるかを示す重要な教訓です。許可を受けている場合でも、過重な業務を長時間継続させることで健康障害が発生した場合、使用者は安全配慮義務違反を問われ得ます。

06会社経営者が取るべき実務対応

✔ 当該業務が許可基準に該当するかを事前に確認する(業務内容・精神的緊張度・実労働時間の比率)
✔ 労働基準監督署長への許可申請を適切に行い、許可証を保管する
✔ 深夜時間帯の労働については、別途深夜割増賃金を支払う賃金体系を構築する
✔ 許可取得後も、業務内容や労働実態が変化していないかを定期的に見直す
✔ 過重労働が生じないよう労働時間の実態を把握し、安全配慮義務を果たす
✔ 就業規則に適用除外の根拠・深夜割増賃金の取扱いを明記する
経営上のポイント 監視・断続的労働の適用除外(労基法41条3号)には必ず労基署長の許可が必要です。許可なしの運用は法違反になります。交通誘導・計器監視等は許可対象外、実労働時間8時間超の断続的労働も不可です。許可を受けても深夜割増賃金の支払義務は残ります(新宿労基署長事件)。適切な運用について弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。就業規則・変形労働時間制の導入・整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 監視・断続的労働の適用除外には必ず許可が必要ですか。

A. はい、必ず労働基準監督署長の許可が必要です。管理監督者(41条2号)や農林水産業従事者(41条1号)と異なり、行政官庁の許可が要件とされています。許可なく適用除外を前提に運用することは、労基法違反となり得ます。

Q2. 駐車場の誘導スタッフや交通整理員に適用除外は認められますか。

A. 認められません。交通関係の監視や車両誘導を行う業務は、精神的緊張感が高い業務として通達上明示的に許可対象外とされています。安全管理上の高度な注意力が求められる業務では、労働時間規制の趣旨に照らして適用除外は認められません。

Q3. 断続的労働の許可を取得すれば、何時間でも働かせることができますか。

A. そのような理解は誤りです。実労働時間の合計が8時間を超える場合には許可自体が認められないほか、許可を取得している場合でも過重な労働によって健康障害が発生すれば、使用者は安全配慮義務違反を問われる可能性があります。新宿労基署長事件(東京高裁平成3年5月27日)の教訓を踏まえ、適切な労務管理を行うことが重要です。

Q4. 深夜に勤務する守衛に深夜割増賃金は必要ですか。

A. 必要です。労基法41条3号の適用除外は労働時間・休憩・休日規制の適用を外すものですが、深夜割増賃金(労基法37条4項)は適用除外の対象に含まれていません。したがって、深夜時間帯(22時〜翌5時)に労働させた場合には、25%以上の割増賃金を別途支払う義務があります。

最終更新日:2026年3月1日

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